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本編

利樹(としき)くん、いろいろありがとう!」  ゆるりと巻いたロングヘアを揺らしながら微笑んだ彼女に、照れ隠しのように少し俯いたまま「気にしなくていいよ」とぶっきら棒に応えた酒井(さかい)利樹(としき)は、ジーンズの後ろポケットに片手を入れたまま長い前髪をかきあげた。 「困った時はお互い様だろ?」 「なんだか頼ってばかりだね……私。まあ、利樹くんだからお願いしちゃうんだけどっ」 「講義のレポートなんて、みんな真面目にとっている奴なんかいない。俺だって今回はたまたま残してあっただけで……」  大学で利樹と同じ学科を専攻している弘島(ひろしま)響子(きょうこ)は入学当時からの友人だ。  特別美人と言うわけではないが愛嬌のある可愛らしい顔立ちで性格も悪くない。男子生徒からは密かに人気があり、何度か合コンで顔を合わせたことがあったが、利樹は彼女に対して友情以上の感情を抱くことはなかった。  彼女もまた、公にはしていないが年上の彼氏がおり、転勤で遠距離恋愛を余儀なくされている。  今日は先日行われた特別講義のノートを借りに利樹の元を訪れていた。 「――じゃあ、コピーしたらすぐにノート返すね!」 「当たり前だ。俺だってその資料使いたいし……」 「あ~。また、そういう意地悪するぅ!」  ぷうっと膨らませた響子の柔らかな頬を、人差し指で押しながら苦笑いを浮かべた利樹。気兼ねすることなくつき合える数少ない友人と目を合わせてからお互いに豪快に吹き出した。 「お前の変顔、最高―っ」 「ひど~い!」  周囲から見れば恋人同士にも見える二人のやり取り。しかし、そこには恋愛感情はない――とはいえ、響子がどんな気持ちで利樹に接しているかは不明瞭なままだ。  もしかしたら、恋人と会えない寂しさを埋めるために利樹に懐いているのかもしれない。それでも利樹は、彼女とつき合う気は毛頭なかった。 「じゃあな……。気をつけて帰れよ」 「うん! ありがとうっ」  柔らかな素材のワンピースを揺らしながら手を振って去っていく彼女をマンションの前で見送り、利樹は自分の部屋へと戻ろうとしてふと足を止めた。  誰かの視線を感じてゆっくりと振り返ってみるが、周囲には人影は見当たらない。 「気のせいか……」  エントランスを抜け、利樹を乗せたエレベーターの扉が閉まった瞬間、先程まで二人が話し込んでいた場所に佇むスーツ姿の壮年の男性。長身で無駄のない筋肉質な体躯、五十代とは思えないほど艶を孕んだ端正な顔立ち。しかし、その瞳は猛禽類のように鋭く、怒りを湛えながら利樹の背中を見つめていた。 「利樹……」  低く掠れた声でその名を呟く。彼はきっちり締めていたネクタイに手をかけ少し乱暴に緩めた。そして、彼のあとを追うようにマンション内に入るとエレベーターに乗り込んだ。  *****  ドアホンの音に弾かれるように、玄関へと向かった利樹はドアを細く開けて息を呑んだ。 「父さん……。どうしてこんな時間に? 出張だって聞いてたけど」  無表情のまま扉を押し開けて入ってきたのは利樹の父、酒井(さかい)総司(そうじ)だった。五十代半ばという年齢ではあるが、長身で引き締まった体躯にスリーピースが良く似合っている。一流企業の重役として多忙な日々を送っている総司だが息子である利樹の顔を見るなり、その端正な顔を意地悪く歪めた。 「――あの女は誰だ?」 「え……。あぁ、大学の友人だよ」  総司の鋭い目が利樹の逃げ場を阻む。スッと目を逸らした彼のシャツの襟元を掴みあげた総司は、端正な顔を近づけて唸るような低い声で言った。 「あの女とセックスしたのか?」  利樹は小刻みに首を横に振ると、きつく結んだままの唇をゆるりと解いた。 「――してない」 「本当だろうな?」 「ただの友人だ。そんなに疑うんなら調べてみればいいだろ? 俺は――父さんの言う事をちゃんと守ってる」 「それにしては随分と仲が良さそうだったじゃないか……。あんな穢れた女と交わればどうなるか……。分かっているだろうな?」  総司は利樹の腰を力強い腕で抱き寄せると、小ぶりな耳朶にそっと歯を立てた。 「ん――っ」  わずかな痛みの後で生暖かい舌が利樹の耳殻に沿って這い回る。その動きと総司の息遣いだけで、体の奥底から湧きあがる熱がじわじわと広がっていく。  総司が愛用している香水の匂いが鼻腔を擽る。それがまるで媚薬のように利樹の脳をゆっくりと蕩けさせていった。 「父……さん」  体に籠った熱を吐き出すように吐息交じりに呟いた利樹は、無意識に自身の下半身を彼の腿に擦りつけていた。ジーンズの硬い生地がもどかしい。少しずつ、でも確実に形を変えていく自身のモノが浅ましく期待を膨らませる。 「まるで雌犬だな……」  低い声で薄らと笑みを含んで囁いた総司は、ジーンズ越しに膨らんだ利樹のペニスをやんわりと揉みしだくと、唇の端を片方だけ上げて笑った。 「本当にあの女とセックスしていないか、俺が確かめてやる……。来いっ」  不意に腕を掴まれ、引き摺られるようにして寝室に向かった利樹は総司の広い背中をぼんやりと見つめ、これから訪れるであろう快楽と苦しみに胸を躍らせ、ぶるりと一度だけ身を震わせた。  ***** 「うぅ……っぐ! がは……っ」  遮光カーテンがひかれた薄暗い寝室のベッドの上に両膝をついた利樹は、ネクタイで視界を奪われていた。両手と両足首を枷で繋がれたままの姿で胸をシーツに押し付け、恥ずかしげもなく尻を高く上げていた。堪えても漏れてしまう熱い息がもどかしい。口にはボールギャグを嵌められ、声を発することは出来ない。ただ獣のような呻き声を上げ、涎を垂れ流したまま細い腰を揺らしている。  寝室に入るなり総司に全裸になるように指示された利樹は、抗うことなく着ていた服を脱いだ。血の繋がった父親である総司とこういう爛れた関係になったのは、利樹が中学生の頃からだった。  最初は激痛を伴った性交も、回を重ねるごとに快楽へと変わっていき、今では総司以外の者と関係を持つことなど考えられない体に作り替えられてしまった。  彼はありとあらゆる手技で利樹を啼かせ、支配する。それがまた心地よく、利樹にとって今や父親ではなく『愛する男』となっていた。総司なしでは生きられない――そう自負していた。  逞しい裸体をてらいもなく晒し、利樹の肉付きの薄い臀部を撫でていた総司が、双丘の間から垂れ下がった紐をクイッと力強く引いた。 「んがぁぁ……はぁはぁ……っ!」  解すことなく無理やり挿入されたアナルビーズが利樹の中を擦りあげる。そのビーズの大きさも、今ではピンポン玉ほどのサイズまで楽々と呑み込めるようになっていた。  赤く熟れた薄い粘膜がビーズを押し出そうとヒクヒクと口を開く。しかし羞恥が勝り、それをひり出すという行為に及べない。直腸の中でいくつものビーズが動くたびに粘膜を刺激し、何も考えられなくなっていく。  腹に付きそうなほどに昂ぶったペニスは、はしたなくも透明の蜜をだらだらと節操なく垂らし、シーツにいくつものシミを広げていく。それをたっぷりとした陰嚢越しに覗き込んだ総司は、嬉しそうに微笑みながら言った。 「いい眺めだよ……。この袋の中身はどうなっている? 父さんが出張から戻ってくるまでの十日間、オイタはしなかったかな?」  利樹は首を横に振りながら低く呻くと、後孔から垂れ下がったビーズの紐をキュッと食い締めた。視界を奪われた今、聴覚も感覚もより鋭くなっている。総司に何をされるのかという恐怖よりも、それに勝る快楽への期待に腿の内側をブルブルと震わせた。  総司の大きな手が利樹の陰嚢を鷲掴む。その痛みに、尻たぶに窪みが出来るほど中のモノを食い締めた利樹は、充血したペニスをぶるんと跳ねさせて白濁を放った。 「あぁぁぁ――っ!」  マットレスに沈む膝が小鹿のように痙攣し、シーツの上にパタパタと音を立てて白濁をまき散らす。その音がやけに大きく聞こえて、総司に許可なくイってしまったという罪悪感と共に、それまで感じたことのない猛烈な羞恥に全身が熱くなるのを感じた。何より十日ぶりの射精で歓喜する脳がジン……と痺れたまま、思考が曖昧になっていく。 「――どこまで堪え性のない子だろうね。お前は袋を手で握られただけでもイってしまう淫乱なのか?」 「ふぁ……っが……ふぅ、ふぅ……っ」 「ビーズを目一杯咥えこんで、尻を高く上げたイヤらしい格好をしたお前の姿を、彼女にも見てもらおうか?」 「あぁ……あが……っ!」 「興奮しているのか? ダラダラと精液を垂れ流して……。締まりのないペニスには栓が必要なようだな」  総司が離れていく気配がした。不安に駆られた利樹がわずかに首を後ろに回した時だった。ギシリとマットレスを軋ませた総司は、利樹の臀部を思い切りスパンキングした。突然の痛みと衝撃、そのあとで臀部にジワリと広がる痛みと熱に、利樹は再び顎を上向けて絶頂した。  はしたなく開閉をくり返す鈴口からは粘度のある白濁が糸を引いている。それを指先に絡め、わざと大きな音を立てて口に含んでいる総司の声がすぐ耳元で響いた。 「この種はあの女には勿体ない。これは誰にも渡さない……。父さんだけが口にすることを許されているんだからな」  低く掠れた声。それが、吐息と共に鼓膜を震わすたびに、体が小刻みに震える。利樹は何度も首を縦に振り、同意するかのように細い腰をくねらせた。 「いい子だ。これからもっと気持ちよくさせてやるからな」  総司の冷たい指先が利樹のペニスをやんわりと掴み上げた。そして、先端に細く硬い棒のようなものを押し当てると、躊躇なくそれを押し込んだ。薄い粘膜を割り広げて中に入ってくるのは冷たい金属の棒。利樹の尿道に差し込まれたのはステンレス製のプジーだった。 「ふぁ――っ。あ、あ……ぐぁぁ……っ」  尿道が拡げられると同時に、再び射精感が襲う。しかし、隘路を駆け上がることが出来ない熱は体内に押し戻され、利樹の中でグルグルと渦を巻き始める。出したいのに出せないストレスと、体の奥で生まれる疼きが利樹を苦しめていた。 「はぁ……はっ、はっ」  息が上がる。シーツに顔を埋めたまま小刻みに呼吸をくり返す利樹を総司は感情の読めない眼差しでじっと見つめていた。総司の指が深く挿入されたプジーを弾いた。 「ふ……ぎゃっ!」  利樹の口から声にならない声が上がる。ボールギャグから幾筋もの糸を引きながら唾液が滴った。腸内に収められたままのビーズがその声と共に蠢動し、利樹のいい場所を何度も擦り上げる。射精を伴わない快感が、だんだんと強くなっていくのが分かった。総司が指で弾いたのはたった一回だけ。それなのに、下半身から湧き上がる絶頂に体の痙攣が止まらない。 「ふっ……ふ、ふ……っ。ひぃ――っ」  雌犬――その名の通り利樹は尻を高く上げたまま、狂ったかのように腰を振り続けた。快感に溺れ、いつ果てるとも分からない絶頂に狂う自身の息子を目の当たりにした総司は、薄らと口元を綻ばせた。 「気持ちいいだろ? お前にこんなことが出来るのは父さんだけなんだよ。どこの馬の骨とも分からないアバズレ女と寝ようなんてことは考えないことだ。何より、お前の綺麗な体が穢れてしまう……」  総司は、利樹の双丘の間から垂れ下がっていた紐に手をかけると、嬉しそうに目を細めながら力任せにそれを引っ張った。 「あぁ――っ!」  赤く熟れた蕾の粘膜がめくれ上がり、ピンポン玉ほどのビーズが濡れた音を発しながら次々と引き抜かれていく。利樹は頭を何度も振りながら絶叫にも似た声を発した。だが、その声に痛みや苦痛は感じられない。それは、女性のような艶のある甲高い声だった。  熱を持った腰を振っていないといられない。最後のビーズがぽかりと開いた後孔から落ちた時、利樹は力の入らなくなった膝を崩しシーツに沈み込んだ。頭の中に流れていた電流がショートし、火花が飛び散ったことだけは薄らと覚えている。だが意識を失ってもなお、利樹の貪欲な蕾は口をパクパクさせ、新たなものを欲しがっていた。  どのくらい眠っていたのか。重い瞼を持ち上げると、ぼんやりと見慣れた風景が飛び込んできた。目元を覆っていたネクタイが取り払われ、ボールギャグも外されている。しかし、利樹の体は枷に繋がれ尻を高く上げたままだ。 「気を失うくらい気持ちよかったか? 今度は私の番だ。お前のことを思うだけで勃起してしまう私が、十日間一度も自慰をしなかったんだ。たっぷりと溜め込んだこれを一滴残らずお前の中に注いでやる。濃い子種だよ……父さんの子を孕んでおくれ」  総司は、腹につくほどに反り返った自身のペニスに手を添えると、ぼんやりとしている利樹の口元に近づけた。強烈なオスの匂いに反応したのか、利樹は迷うことなく舌を伸ばすと、溢れ出している透明な蜜を舌先で救うように舐めとった。口内に広がるのはほろ苦さを含んだ危険な蜜の味。目の前に立ち、自分を支配し、快楽を与え続ける男――それが、自身と血の繋がった男であると分かっていても、彼の精が欲しくて堪らない。総司から発せられるフェロモンにも似た香りは、元来あるはずのモラルや理性を粉々に砕いてしまう。すでに女性の匂いに発情しなくなった体はもう……堕ちるところまで堕ちたといえよう。  愛おしげに目を細め、充血した赤黒い長大なペニスを見つめた利樹は、まるで大好物を目の前にしているかのようにゆっくりと自身の唇を舐めた。そして、先端を咥えると喉奥まで誘導し、喉をキュッと締め付けて総司の脈動を感じた。恍惚の表情を浮かべ、貪欲にペニスを頬張る利樹を見下ろしていた総司だったが、次第にその息遣いが荒くなっていくのが分かった。普段はクールな総司だが、十日間も会えなかった最愛の息子を前にして、その興奮を抑えきれずにいた。しかも、その滑らかな肌に触れ、交わることも出来なかった欲求は、ただ会えなかったという言葉では簡単に片づけられない。出来る事なら、ひと時も離れず繋がっていたい……。 「利樹……。はぁ、はぁ……このままでは出てしまいそうだ」 「出して……。俺の口に、出して」 「その可愛いお口にか? お前がそう望むなら出してやってもいいが、その代わり……零したらお仕置きだぞ」 「どんな……お仕置き?」  目を輝かせて問うた利樹。だが、先ほどから彼が内腿を擦り合わせるようにして腰を揺らしていることに気づいた総司は、アナルビーズを抜いた後孔が寂しがっていることにすぐに気づいた。吸引する利樹の口から唾液と蜜に塗れたペニスを引き抜くと、ナイトテーブルに無造作に置かれていたイボ付きバイブを手に取った。それを、何かを欲してやまない利樹の後孔に捻じ込み、スイッチを入れた。 「あぁ……あっ。奥……当た……るぅ」  利樹が甲高い声を上げて身を捩る。ヴィーンとくぐもったモーター音を発しながら回転するバイブが抜け落ちることはない。利樹の中は、快楽を与えてくれるものならば、何でも喰い締めて離さない。バイブの振動と動きに、一度は冷めかけた熱が再び蘇る。その熱は利樹のペニスから放たれることはない。プジーに隘路を絶たれ、だんだんと温度を上げていく熱が彼の体内に渦巻いていく。  再び利樹の口内に凶悪ともいえるペニスを沈めた総司は、彼の頭を掴み寄せ嘔吐くのも構うことなく何度も喉奥を激しく突いた。利樹の喉奥はもう、総司を迎えるように作り変えられている。ギュッと収縮し先端を包み込む喉の粘膜に、総司は自身の絶頂が近いことを察した。柔らかな舌で愛撫され、口内の粘膜がそれを優しく包み込む。利樹の性格そのものを表すような口淫。それを嬉しく思う反面、日ごとに独占欲が強まっていることに総司自身も恐怖を感じていた。だが、もう堕ちるところまで共に堕ちよう――そう決めていた。  父親と息子。血を分けた親子が犯す禁忌。この交わりを誰にも知られるわけにはいかない。もちろん――妻にも。  総司は薄暗い天井を仰ぐと、細く息を吐き出した。ゆるゆると前後させていた腰の動きが早くなる。ジュボジュボと卑猥な水音と共に利樹の顔が息苦しさに歪んだ時、口内で大きく脈打った剛直が弾けた。利樹の喉奥に叩きつけられた灼熱は、粘膜だけでなく理性も爛れさせていく。鼻に抜ける濃厚な匂いが口いっぱいに広がり、強い粘度を持った体液が舌や喉を粘つかせる。しかし、利樹はペニスから口を離すことなく喉仏を何度も上下させた。溢れた白濁が、唇の端から流れ落ちる。それは飲みきれなかったからではない。総司から与えられるお仕置きを欲する、利樹なりのオネダリだった。 「う――っぐ。利樹……零したらダメだと言ったろ?」 「ごめんなさい……。お尻の……なか、ぐちゃぐちゃにされて……気持ちよくて……溢れちゃった」 「イッてるのか?」 「ふ……うん。精液……出した、い。これ、抜いて……」 「ダメだ。利樹はもう、いっぱい出しただろ? 我慢しなさい」 「くる……しぃよ。父さん……」  利樹がそう口にした瞬間、総司の目に鋭い光が浮かんだ。射精しても硬度を保ったままの総司のペニスを名残惜しそうにしゃぶっていた利樹だったが、小さく息を呑むと「ごめんなさい、ごめんなさい……」と何度も謝った。交わるときは親子ではない。恋人同士として名を呼び合うのが決まりだった。利樹は、総司の機嫌を取ろうと離れていくペニスに舌先を伸ばしたが、それは戻ってくることはなかった。代わりに与えられたのは、後孔に刺さったままのバイブを力任せに捻じ込まれた。その先端は最奥の壁を押し開き、その先にあるS字結腸まで到達していた。 「ぎゃぁぁぁ――っ!」  利樹の下腹部のいたるところで振動している。バイブから生えたイボ状の突起が、利樹の腹の奥を刺激し不意に尿意が襲ってくる。それを堪えようと下腹に力を入れるが、それがムダなことであるということはすぐにわかった。ムズムズとした疼きが腰から腿に這う。利樹は涙目になりながら、総司を見上げて懇願した。 「総司……。おし……こ、出ちゃう」 「出せばいいだろ」 「やだ……。こんなところで……。トイレ……行かせて」 「雌犬のお前がトイレなんて贅沢だ。ここですればいい。俺が見ていてやる」 「おね……がい。あぁ……また、イクッ!」  ビクンと腰を跳ねさせた利樹のペニスが充血している。ありとあらゆるものを遮断しているプジーのせいで、かなりの苦痛を強いられているのは明白だった。それなのに利樹は、恍惚な表情を浮かべて絶頂し続けている。 「利樹……。俺はお前を愛している。それなのに俺の名を呼んでくれないなんて悲しいじゃないか」 「ごめ……な、さい。ごめんなさいっ。ふ……あぁ――っ」  抑揚のない総司の声が部屋に響く。利樹は涙ながらに許しを乞う。自分に出来ること――総司に許してもらうにはどうすればいい? 断続的に襲ってくる快感の狭間で必死に考えるが、後にも先にもたった一つのことだけしか浮かばなかった。 「――俺の。淫乱な……雌犬の尻穴に……総司の……挿れて」 「聞こえないな」 「バイブじゃなくて……。総司の……太くて硬い、おチ……ンポ、ください。俺の……尻穴に……思い切り、突っ込んで、中を……グチャグチャにして……くだ、さい!」 「挿れるだけでいいのか?」  総司の問いに、利樹は大きく頭を振った。そして、溢れる涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら唇を震わせた。 「いっぱい……溜まった子種を……。俺の中に……全部ぶちまけて……ください。今度は絶対に零さないからぁ……。総司の子種で……孕ませてください。ボテ腹になったら、あの子に見せてあげるんだ。お尻の穴からいっぱい注いでもらった精子で……総司の子……孕んじゃったって」  少し恥じらうように、でも嬉しそうに利樹の声が弾んだ。彼の目には総司しか映ってはいない。総司にとってそれが何より嬉しかった。汗で湿った利樹の髪を優しく撫でてやると、少し安堵したように微笑む。その顔が愛おしくて、つい意地悪をしてしまう。いけないと分かっていても、最愛の男の愛欲に溺れて自身を欲する顔は何度も見たくなる。それを思い出すだけで、ペニスははしたなくも頭をもたげ、愛液を溢れさせてしまうのだ。 「そうか……。利樹も俺との子を望んでいるんだね」 「欲しい……。総司の、全部……欲しいっ」 「じゃあ、このバイブが入っていたところまで挿れてあげようね。そうすれば溢れてこないから」 「うん……。奥……きもち、いいから……いっぱい、突いて」  普段は人当たりのいい好青年である利樹だが、総司の前では幼児退行してしまう。素直で甘えん坊、何よりいやらしくて色気のある男――総司はそんな利樹が大好きだった。 「じゃあ、挿れてあげる。自分でバイブを抜いて」  そう言われ、下腹に力を入れて生み落とそうとするがバイブは抜けてくれない。粘膜に密着し振動が利樹の思考をグズグズに溶かしていく。 「はぁ……んっ。だめぇ……。抜けないよぉ……総司ぃ」 「仕方のない子だ。抜いてあげるからおしっこは我慢しなさい」 「ふぁ……い」  シーツを手繰り寄せながら、甘えた返事で応える利樹の臀部を優しく撫でる。スパンキングした際の赤い手跡がくっきりと残るそこに口づけ、総司は振動しながら回転をくり返すバイブのハンドルを握った。そして、それをゆっくり引き抜くと、利樹は腰を大きく振って絶頂をくり返した。回転する本体が粘膜を擦りグチュグチュと水音を立てている。すべてを引き抜くと、利樹の赤く腫れた蕾から愛液が糸を引いた。 「グショグショじゃないか。こんなに濡らして……恥ずかしいな」  総司の声に背中を小刻みに震わせた利樹は、肩越しに振り返ると恨めし気な顔で睨んだ。 「総司のせい、だから……」  その顔に、総司のペニスがグッと硬度を増した。どんな女性よりも愛らしい。まして妻なんかとは比べ物にならない。実の息子である利樹の色香にあてられた総司は、ごくりと唾を呑み込むと忙しなくベッドに膝をついた。利樹に会えない十日間の禁欲生活がどれほど苦しく、過酷だったことか。いっそ、すべてを投げ出して利樹のもとに帰ろうかと真剣に考えた。だが、表向きはそれを知られてはならない。現在の地位を確立しつつも、欲しいものは手放さない。傲慢で卑しい男だと思われるだろうが、それで構わない――総司はそう思っていた。  パクパクと飢えた鯉のように収縮させる利樹の蕾に、先ほど放ったとは思えないほど硬く張りつめた先端を押し当てると、待っていましたと言わんばかりにスルリと薄い粘膜が包み込む。 「あぁ……。入ってくる……っ。総司の……硬いの、入ってくるっ」  ブチュッと音を立てて滑り込んだ総司のペニスが、まるで吸い込まれるように狭い器官の中へと沈んでいく。血管が浮き、いびつに膨らんだ剛直が粘膜を巻き込みながら入っていく様は卑猥で、何よりも煽情的だ。 「あ……あぁっ」  利樹の背中が弓なりに反っていく。内腿がブルブルと震え、まだ半分も入っていないそれに絶頂しているのが分かる。中の粘膜が総司のペニスを喰い締め、さらに蠢動をくり返す。 「利樹……イキっぱなしじゃないか。この淫乱息子め」 「いやぁ……だって、だって……っふ! 気持ち……いいっ」 「何が気持ちいいのか、父さんに教えてくれないか?」  利樹は涙目で振り返り、総司を見つめた。言わずとも分かっているであろう父親に、現状を口にすることほど恥ずかしいことはない。今まで何度も同じようなプレイを強いられてきた。しかし、射精を管理され、放つはずのものが堰き止められた状態は、それまでの比ではない。頭の血管が切れそうなほど脈打っているのが分かる。それを物語るかのように利樹の肌がうっすらと赤みを帯び、腰が小刻みに震えた。 「もっと、奥……」 「奥に何があるんだ?」  先ほどバイブで抉られた場所がキュッと疼いて仕方がない。いっそのこと、思い切り最奥まで突き込んで、気が狂うほど激しく突き上げて欲しいとさえ思っている。でも、それを素直に口にすることが出来たら、利樹はどれだけ楽になれるだろう――そう思った。  言いたい……。それなのに思考が散り散りになって、上手く言葉が出てこない。はやく彼の子種が欲しい。疼きが止まらない子宮を満たしてほしい……。 「そ……しぃ。お腹……の奥、精子……いっぱい、ちょーだい。俺の……イヤらしい穴を……グチャグチャにして……くだ、さ……いっ」  喉が震え、声が掠れる。涙を浮かべながらシーツを掴む利樹の背中を見下ろした総司は、根元まで咥え込んだ彼の蕾を凝視した。淡く色づいていたそこは真っ赤に充血し、総司のモノをすべて呑み込んでいた。それでもなおヒクヒクと収縮を繰り返している。手を振り上げ、思い切り臀部に振り下ろす。その瞬間、悲鳴と共に利樹の体が大きく跳ねた。そして、ペニスに刺さったままのプジーから白濁した糸が垂れた。  内部が激しく痙攣している。ちょっとの刺激で何度も絶頂をくり返す利樹の体はもう、総司好みのそれに作り変えられていた。  愛おしい……。この世界中、どこを探しても見つからない。親子の血が絶えることなく交わり合い、その愛情もより深いものへと変わっていく。どんな関係よりも濃く、誰にも引き裂けない鎖でつながれた恋人。総司は、荒い息をくり返しながら波打つ利樹の背中にキスを落とした。汗ばんだ肌から発せられる熱が、総司の体をさらに煽る。 「あぁ……利樹。可愛いよ……」 「んあぁっ。奥……ふか、深……いっ」 「まだまだ。もっと奥がいいんだろう? その神聖な場所を……私が犯してやる。誰も……そこに触れぬよう………私の子種をいっぱい注いで……あげるからね」 「総司……」  総司の言葉に応えるように、利樹が堪らないというように吐息した。それを合図に、総司の腰が前後に動き始める。抉るように回転させた後で、抜けてしまうのではないかと思うほど入口ギリギリまで引き、そのあとで力任せに最奥まで突き上げる。結合部がパンパンと破裂音を立てる。そのたびに、喘いでいた利樹の息が途切れ途切れになった。ただ力だけで捻じ伏せるパワーセックスをしたいわけじゃない。利樹へ向けられた溢れんばかりの想いが総司を突き動かしていた。  力なく開いたままの唇から透明の糸が滴る。目は虚ろで、もう快楽以外のことは考えられない。擦れる中が気持ちいい。激しく突き込まれるたびに、最奥にある禁断の入口が緩んでいく。総司の大きく張り出した先端がその入口に入り込んだ時、利樹は頭の中がスパークするのを感じた。体中、痙攣が止まらない。喘ぎすぎた喉がヒリヒリと痛んだが、喘がずにはいられない。シーツに胸を押し当てた利樹は、総司を咥えたまま幾度となく意識を失った。しかし、我に返るとまたあの強烈な快感に襲われ、放出できない熱が体の中に渦巻き、爆発寸前の風船のようになっていた。 「総司……出したい。出させてよぉ! これ、抜いて……お願いだから、精子……出させてっ」 「こんなにも気持ちいいのにか? お前だってずいぶん気に入ったようじゃないか」 「気持ち、いいよっ。でもね……も、狂い、そ……。俺、バカに……なっちゃ、う」 「なればいい。なって、私のことだけしか考えられなくなればいい……。そうすれば、ずっと一緒にいられるだろ? 可愛い利樹……っぐ!」  総司のペニスが結腸の入口で爆ぜた。その熱さと、内壁を叩きつける飛沫の強さに、利樹は顎を上向けたまま白目をむいた。もう、叫び声は出ない。でも、体は嬉々として総司のモノを強く喰い締めたまま離さなかった。息つく間もなく硬度を取り戻す総司の精力には毎回驚かされる。しかも、歳を重ねるごとにその回数は増え、大学生である利樹でさえも抱き潰される有り様だ。体中の関節が軋み、悲鳴を上げている。拘束されたままの手足首が擦れ、わずかに血が滲んでいた。それらも総司から与えられる愛だと思えば、その痛みは快感に変わる。  利樹は繋がれた鎖を鳴らし、過呼吸になりながら訴えた。 「抜いて……っ。も……無理。俺……こわれ、ちゃう」  唾液に塗れた利樹の唇から紡がれるか細い声に、総司はわずかに笑みを浮かべて言った。 「これを抜いたら、本当に壊れてしまうかもしれないよ? それでも、いいのか?」  何度も首を上下に振る利樹。それを見た総司は、激しく奥を突き上げながらプジーについているリングに指をかけた。 「あぁっ! 動かさないでっ!」 「それじゃあ、抜けないだろ? 抜いて欲しいんじゃないのか?」 「欲しい……欲しいよお。でもね……チンコが変……っ。ちょっと動かしただけで、熱くて堪らない。火傷、しそう……」 「熱くて、気持ちがいいだろう? 相当気に入ってくれたみたいだな。今度は、利樹のために特注でプジーを作ってあげよう。もう少し太くて、長くて……愛の誓いの証として、ダイヤもつけてもらおうか。利樹のチンコの先で光るダイヤ……。どれほど美しく、卑猥なんだろう」  想像して、総司はうっとりと目を細めた。そして、再び襲ってきた射精感を堪えることなく利樹の中にぶちまけた。その瞬間、総司の指が動いた。プチュッと音がして利樹の隘路を塞いでいたプジーが一気に引き抜かれたのだ。何が起こったのか、分からなかった。利樹は内部で爆ぜた熱が漏れ出してしまったのではないかと不安になった。しかし、利樹のその場所から噴射されたのは精液と尿が交じり合った、大量の体液だった。 「う……うわあぁ――っ!」  それまで籠っていた体内の熱が狭い隘路に殺到し、拡げられていた尿道を駆け上がっていく。プシャーッと激しい音を立てて吹き出す体液は、みるみるシーツを汚し、利樹の体を濡らしていった。腰が止まらない。脚の震えも止まらない。利樹にないはずの子宮が急激に収縮を繰り返し、総司が注いだものを逆流させていく。それをさせまいと蕾にグッと力をいれるのだが、脳ミソを焼き切るほどの快楽がそれを許してくれない。 「あぁ……止まんない。おしっこと……精液……止まんないよぉ。お父さん、怖いよぉ。俺のチンコ、壊れちゃた……はぁはぁ。また……イッちゃう! ごめんな……さい。おもらし止まらない……淫乱な……息子で、ゴメンなさぁ~い」  胸をシーツに押し当てて尻を高く上げたままの利樹の後孔から総司がペニスを引き抜いた。同時に、ぽかりと開いたままの蕾から大量の精液がトプリと音を立てて溢れ出した。粘度のある白濁が糸を引きながら絶え間なくシーツに落ちていく。ビショビショになったシーツがそれを受け止めるが、利樹の体はもう制御できる状態ではなくなっていた。 「綺麗だよ、利樹。ほら、私の子種を零しちゃダメだろう? また注いであげるから、おもらししたまま受け入れなさい。淫乱なお前が父さんの子を孕んでボテ腹になっても、何度も抱いてあげるから安心しなさい。愛しているよ……利樹。なんて可愛い子なんだ」  総司の目が淫靡に輝く。溢れた精液を押し戻すようにペニスを押し当て、再び後孔に突き込んだ。その衝撃で、利樹は体を大きく跳ねさせると口から泡を吹いて気を失った。総司が眠ったままの利樹を朝まで犯し続けたのは言うまでもない……。  快楽の深い闇に堕ちていく。禁断の果実を口にした親子の行く先は……誰も知らない。  ***** 「利樹くん、この前はありがとう。すっごく助かったよ」  友人である弘島響子が満面の笑みを浮かべたまま駆け寄ってくる。利樹はわずかに視線をあげると、感情のない作り笑いを顔に張り付けた。  ゆるりと巻いた彼女の髪が微かに香る。その香りは男性ならば誰もが上気する香りだった。しかし、利樹は彼女に気づかれないように顔を歪ませた。女性が放つ香りが堪らなく嫌だった。甘ったれたネコナデ声も、気安く触る細い手も、自分に向けられた下心に塗れた顔も……全部が嫌になっていた。  総司の手によって装着された貞操帯の中で、ペニスはまったく反応することはなかった。乳首につけられたピアスがシャツに擦れてジンジンする。もちろん、後孔にはアナルキャップが嵌められ、総司以外の男の侵入を拒んでいる。 「利樹くん? どうかしたの? 顔色がよくないみたいだけど」  利樹を覗き込むようにした響子の視線か逃れるように、利樹は掠れた声で応えた。 「――だいじょ、ぶ。気にしないで」 「え~、気になるぅ! 大丈夫? 医務室、一緒に行こうか?」  利樹の手を掴もうとした響子の手を振り払う。「あの女には近づくな」――総司の言いつけを守らなければ、セックスしてもらえない。利樹の目が宙を彷徨う。その瞬間、後孔にピリリとした振動が走った。 「んぁ……っ」  たったそれだけでペニスを膨らませてしまう体。貞操帯に締め付けられる痛みさえも、快楽へと変わっていく。 「利樹くん? 本当に大丈夫?」  不安そうに見つめる響子に再度「大丈夫」と答えた利樹は、それ以上何も言うことなく彼女に背を向けて歩き出した。足早に男子トイレに向かうと個室の鍵をかけた。壁に凭れ、天井を仰ぐ。そして、乾いた唇を舌先で舐めながら呟いた。 「総司……。淫乱な尻穴が疼いて堪らないよぉ……助けて。自分でしちゃう過ちを……許して、くだ……さい」  まるで神にでも祈るかのように目を閉じた利樹は、貞操帯の上から固定されたペニスを撫で上げた。我慢しても漏れてしまう声を抑えようと口を塞いだ瞬間、総司にそうされたことを思い出して絶頂した。 「――はは。狂ってる……? 俺、狂ってるよね。総司がいなきゃ……生きていけない。セックスしないと……俺、死んじゃうからさぁ」  うわごとのように呟いた利樹は恍惚の表情を浮かべ、うっとりと誘うように下唇を舐めた。 「もう……二度と逃げられないように閉じ込めて。死ぬまで犯して……ください。お父さん……」  利樹の大学生活と、人間としてのまともな思考が今、終わりを告げようとしていた。    Fin

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