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$2.正直者がバカをみる③

  千葉の端っこの田舎にいると東京の建物、人口、流れる時間が全て窮屈に感じる。都会嫌いな初人がコトコトと電車で時間かけて来たのにはもちろん理由がある。  『マジかよ……ここ?』  聞いた住所通りに間違いなければ目の前にあるこの家が今日の目的地だけれど、きっと死ぬまでに関わる事もないような家でもはや映画のセットのよう。 さっきまで騒がしかった音もこの辺りに来た途端雑音は消えて大都会の中の静寂を見つけた。  家の横側にある鉄柵から敷地内を覗いても建物まで遠く背の低い初人からは見えない。仕方なく足をかけて柵によじ登り木々の隙間からスマホの写真と家を見比べる。  『やっぱりここだよなー…』  「おい!お前!何してる!?」  背後から聞こえた声はすぐに真後ろまで来て身体を強く掴まれると体勢を崩し柵から転げ落ちそうになる。  「マスコミか?週刊誌か?どこだ!?」  黒服に睨まれながら強い口調で質問をぶつけられらて訳もわからず、とにかく内容から勘違いされてると抵抗した初人。  『離せよっ!マスコミって何だよ!こっちは何もしてないっ、、』  地面に落とされ羽交締めにされるともう一人駆けつけた黒服にスマホを奪われた。画面に写るこの家の写真を目の前に突き付けられる。  「写真撮ってたんだろ?何だこれは!?目的は何か言え!」  『それはこの家で間違いないか確認してたんだってば!面接に来たの!面接!』  「何?面接だと!?」  黒服二人が目を合わせ下衿につけたマイクらしきもので誰かと連絡をとり始める。尚も強く掴む腕に黒服を睨みつけながら誤解がとけるのを待つ。  「田ノ上さん。若い青年が面接と言って来ておられますが……はいー…わかりました」  「どうだって?」  「面接の予定が2時からあるそうだ」  『だから言っただろ、離せよ』  「悪かったな、、けど柵に登るのはよくないからな。これじゃ泥棒なんかと勘違いされても仕方ないぞ」  "泥棒"の言葉に完全に否定はしないがこんな奴らに捕まるよなマヌケではない。 少し不貞腐れた口調で"すいませんでした"と形式的に謝る初人。こんなところでトラブル起こしてる場合じゃないし時間の無駄だと思った。  「それじゃ案内するから着いて来い」  黒服の後を付いて行く。白と桃色の薔薇に左右囲まれた道を通って広い庭をしばらく歩いた。 玄関に前に来ると初人の身長の3倍ほどある扉の半分が開いて、中から出てきた眼鏡にグレースのスーツを来たインテリ風な男。 二人の黒服とは違って力でねじ伏せるタイプとは真逆で穏やかな雰囲気に初人は少しほっとした。  「中へどうぞ」  中に通され入ってすぐの応接間に入ると椅子に座れと指示される。高い天井に顔を上げて見ている初人を見ながら目の前に座った。  「手荒な真似をして申し訳無かったですね。諸事情でこちらも少々ピリピリしてまして。お怪我はないですか?」  『大丈夫です、、こちらこそ勘違いされるような事してすいません』  盗みの基本はまず下調べから。その習性が染み付いてるのもあって堂々と正面から行かなかったのは初人の悪い癖か。  「では早速ですが、住み込みで働くのを希望で面接に来られたと言う事で間違いないですか?えっと、お名前がー…」  『新見です。新見 慧です』

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