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第1話

(つっ……かれた……) 帰宅ラッシュもとうに過ぎた頃、くたびれたサラリーマンで込み合う電車に揺られながら欠伸を嚙み殺す。随分と重たくなった首回りを鳴らしながら、ぼんやりと車内の路線図を眺めた。最寄り駅まではあと少しだ。 平凡なサラリーマンである俺は労働と戦う日々を送っている。昼間は外回り、夕方からはデスクワークと、頭から足まで全身を酷使している。おまけに残業がない日の方が珍しいのだから、やっていられない。 精神的な休息も欲しいのだが、まず肉体的な休息はすぐにでも欲しい気分だった。 駅について改札を出る。幸いにも明日はやっと休日出勤もない休みだ。近場の健康ランドにでも行って自分を甘やかそうか――そう考えていた俺の目に、ある看板が目に入る。 なんてことはない、よくあるマッサージ店の看板だ。いつもなら流し見をするのだが、今日ばかりは凝りに凝った身体が意識を向けさせる。 (営業時間は……あ、もう終わりがけなのか) 金曜の夜ということもありなるべく早く帰れるようにしたが、それでも時間帯としては遅めだ。営業終了時間直前にこんなくたびれたサラリーマンが駆け込んでも迷惑なだけだろう。 「こんばんはー。お兄さんもしかして仕事帰りですか?」 そう思いながら踵を返そうとした時、とある男性に声をかけられる。よくある、駅ビルの近くで呼び込みをしている兄ちゃんだ。 「はい……そうですけど。あの、居酒屋とかは今日は大丈夫なんで」 「でもあっち見てたじゃないですか。気になるお店でも?」 「あー……その、マッサージ店があるじゃないですか。でも時間がもう駄目そうだなーって」 俺としてはそれで会話を終えるつもりだったのに、男性はすぐインカムらしきものに何かを呟き始めた。 (……ん、マッサージ店って) よくよく考えたら、駅ビルの中にはマッサージ店といってもいくつかある。中にはいかがわしいお店の看板もあって……ああ面倒なものに捕まってしまったと、断ろうとした時だった。 「お兄さん、ラッキーですね! 今日は金曜なのでその店延長営業してるんですよ。どうです?話は通しておいたので揉まれてきたら」 「え……あの、それはどういう」 「あそこのお店ですよね。3Fにある」 そう指さされたのは俺が気になっていた店だった。いかがわしいものではない、いたって普通の看板だ。 「はあ。でもなんでまた。お兄さん居酒屋の方がありがたいんですよね」 「まあ、あのビルの店とはみんな持ちつ持たれつなので。それで疲れを癒したら、良ければ腹も満たしていってくださーい」 そう言って近場にある居酒屋のクーポン券を渡され、あれよあれよとビルの入り口にまで案内された。わざわざ営業時間を聞いてくれたのだ。こういう系の案内屋にしてはびっくりするくらい優しい。 「ああはい、どうも……」 そして諦めかけていたマッサージ店に入ることができるらしい。俺は少し浮かれてしまって、仕事でしか使わないような営業スマイルを見せてぺこぺこと会釈しつつエレベーターに乗り込んだ。 目的の回に辿り着き、店のドアを開けると受付にいる店員に声をかける。本当に話は通っていたようで、簡単なアンケートを済ませるとそのまますぐに上がるように促される。 実はこういったマッサージ店を利用するのは初めてだ。勝手が分からず戸惑う俺に店員はにこやかに説明をしてくれる。 どうやらロッカールームで店から貸し出されるシャツと短パンに着替えるらしい。俺はスーツ姿だったのもあり、確かにこれではマッサージに向かないだろうと言われるままに着替えを済ませた。少しサイズが小さい気もするが、まあ文句は言ってられないだろう。 個室に案内され、施術台に座っているとすぐに担当のマッサージ師が中に入ってくる。 「こんばんは。今日はよろしくお願い致します」 マスクの上からでも分かるような物腰穏やかそうな男性だった。こちらこそお願いしますと頭を下げると、そのまま台にうつ伏せになるよう指示される。 「当店は初めてのご利用ですね。お仕事帰りですか?」 「ええ……仕事柄肩が凝ることが多くて。せっかくなので来てみようかなと」 「ありがとうございます。実は当店では初めてのお客様へ特別キャンペーンを案内させていただいてまして」 「キャンペーン?」 「はい。通常コースは簡易な全身マッサージのみなのですが、初回に限り有料オプションを無料で体験していただけるんです」 「それは……いいんですか?」 「はい、是非。その代わり少々お時間をいただくことになりますが……」 それはかなり魅力的な申し出なのではないだろうか。俺みたいなサラリーマンがリピーターになれば店としてはありがたいのだろう。時間に関しても気にする理由はなく、俺は頷いた。 「なら……お願いします」 「かしこまりました。では、お体に触れていきますね」 そしてマッサージ師は俺の肩に両手で体重をかけていく。少し押されただけで痛みを感じて呻いてしまうが、すぐに力加減を調整されて丁寧に揉み解されている。 「確かに凝っていますね……デスクワークをされているのですか?」 「ええまあ……っ、固い、ですよね」 「そうですね。こちらとしてはやり応えがあります」 少し笑われながらもぐいぐい、ごりごりと指圧されていく。最初は凝り固まっているせいで痛みが強かったものの、段々と心地よさを覚えていく。 数分する頃には俺はもう全身の力を抜いていて、マッサージ師の手に全てを委ねている状態だった。 いや、多分だがこの人めちゃくちゃ上手い。 力加減は繊細で、少し痛みを感じるかと思えば得も言われぬ解放感にすぐに移り変わる。肩、背中、腕と揉まれているうちにぼんやりと意識が浮遊する程度には俺は蕩けてしまっていた。 「では、ここから先ほどご説明した有料オプションに入らせていただきます」 「はい……お願いします」 何か容器を開けるような音がして、次に脹脛のあたりにぬるりとした感触を感じた。温度もぬるくて、おそらくは何らかのオイルだろうと察した。 随分本格的なマッサージだなと感じたが、元は有料オプションだと言うのだからそれは当然だろう。 「ん……っ」 「気持ち悪さなどはないでしょうか?」 「はい……気持ちいい、です」 歩き詰めているのもあって両足も凝りがあるようだった。ぬるぬるとオイルを塗りこまれながら、足の甲や指先まで揉まれる。少しくすぐったさを感じたが我慢できる程度だ。 「ではこちらも失礼致します」 ぐい、ぐいと膝や太腿のあたりにまで手を伸ばされ、少し短パンの裾に手が潜り込む。そしてそのまま足を揉まれるかと思えば、布地の上からべちゃりとした感覚がした。 「……え?」 「ああ、ご心配なさらず。そのための着替えですから」 どうやら服の上からオイルを垂らされたらしい。それはいいのかと思ったが、貸し出している服なのだからオイル濡れになっても構わないのだろう。 ぬるぬる、ぬりぬりとオイルを吸った衣服の上から背中や肩を再度揉まれる。美容系のことは全く分からないが、カプサイシンとかなんか……そういった成分でも入っているのだろうか、擦られる度にオイルが肌に浸透して熱を持ち始めている気がする。 「ん……、なんか……変な感触、ですね」 「はは、慣れませんよね。でもこのオイルは発汗を促して体を柔らかくしてくれるんです。リラックス効果のあるハーブも配合されているんですよ」 「へえ……」 つい生返事になってしまったが、確かに言われる通り体から力が抜けていく。脇腹や腰を押されても身体は強張らない。それよりも気持ちよさが勝っているのだ。 「んぐ……!」 「ああ、お客様は本当に全身凝っていらっしゃるようで。少し深めにマッサージさせていただいてもよろしいでしょうか?」 「ええ……大丈夫、です」 では、と触れたのは俺の尻だった。え、と一瞬動揺したがオイルに塗れた手に尻を揉まれると言い様のない感覚が上ってくる。 ……多分だが尻も凝るのだろうか? 心地よさというか、なんというか、変な感じだ。人に尻など揉まれるなんて死んでも御免だが、これだけ全身解されているのだしせっかくなら、という気持ちの方が勝ってしまった。 「どうでしょうか?」 「きもち……いいです。多分……」 「そうですか……わかりました」 そのままぐいぐいと足の付け根や腰骨のあたりも体重をかけられる。オイルも、マッサージ師の体温も気持ちがよくて、暖かくて、マッサージってこんなに良いものだったのかとしみじみした。うつ伏せでいるからかほんのりとした睡魔を感じさえしていたが、流石に施術中に寝るのは失礼だろうと必死に意識を繋ぐ。 「ん……♡っあ」 あれ、と一瞬思ったがすぐに心地よさにかき消される。オイルが更に足される感触がした。ぬりぬり、ぬるぬると液体で張り付いた短パンの上から更に根気よく下半身を揉まれる。 「どうかされましたか?」 「いえ……ぁ、っ♡」 「一度体勢を変えましょうか。仰向けになっていただけますか?」 「は、い……」 言われるがままに身体をひっくり返されて、表側にもオイルをかけられる。眠気でぼんやりとした視界にマッサージ師の手が映って、俺は無性に安心してしまった。そうか、まだまだマッサージは続くんだ。 「では失礼致します」 「ん……んぅっ?!♡」 あれ、と思った。視線を落とすと、すらりとした両手が俺の胸筋を揉んでいる……気がした。 「あの……」 「お客様は本当に全身が凝り固まっていらっしゃいますね。まだ緊張しておられますか?」 「いえ……っ♡」 「大丈夫です。ここを出る頃には全て改善させていただきますので。どうかお任せください」 あまりにはっきりとした物言いに、そうか全身マッサージなのだから別に胸を触るのもおかしいことではないのかも、と思い直した。 それに俺は女でもないのだから、セクハラだと騒ぐこともない。向こうも仕事で触りたくもないくたびれた男の身体をあちこち揉んでくれているのだ。むしろありがたいと思うべきだろう。 「ぁ……は、ぁ♡」 とはいえ、背中側に比べてこちらは心地よさが段違いな気がする。 胸を寄せられたり、指を滑らされたり、自分ではしない行為なせいか、どんどん体が熱くなっている気がした。 「はゃ、あっ♡♡」 指がとある一点を掠めた時、明確に高い声を上げてしまう。それまでは零れてもせいぜいが吐息だったせいで、俺は今の声がなんなのか分からずに混乱してしまう。 「ぁ、あの……?♡」 「いいですね。体が芯から解れてきた証拠です。声は我慢しないでください」 「ぇえ……は、はい……?♡」 指先が胸のある部分に突き立てられて、くるくると撫でまわされる。そうされると俺は腰が浮き上がるような感覚を覚えてしまって、少し目を見開いた。 「いや、その、ちょっと待って……♡」 「どうされました?」 「だって、そこぉ……っ♡」 さっきから指先がぐりぐりと撫でまわしているのは俺の胸筋というよりは、乳首なんじゃないのか。 熱に浮かされていた思考が少し晴れていきながら、俺は疑問を口にする。 「しかし随分と凝っていらっしゃいます。解してさしあげるのが私の使命ですから」 そう言って、細い指が乳首をこね回す。 乳輪をなぞっていたかと思えば、指でつまみ上げるようにねじって、挟み込まれながら弄られる。 「あひ……♡♡っはぁ、あ♡」 「いけませんね……凝りが収まりません。少し手荒くさせていただいてもよろしいでしょうか」 「な、なに、駄――ぉ゛っ♡♡」 ぎゅううと千切れそうなくらいの強さで引っ張られて、つい濁った声を上げてしまう。 「ん゛ぉお゛♡♡♡い゛だ、ぃ♡いだぁ゛♡や゛め、でくださ……!♡」 そうしてぴんと突き出た乳首を爪先でかりかりこりこりと引っかかれながら、俺は拒否感を露にする。 だってこれ、ちょっとおかしい。胸まではまだいいとしても、人の乳首をこんな風に弄り回すのはマッサージとしてもおかしいだろう。 「ご安心ください、決して危害を加えるつもりはありません」 そう言いながら、マッサージ師は俺の手を取り施術台の横に何かで固定した。 ……いや、待て待て。おかしい。これはあり得ないだろ! 「ふざけ、な゛ぁ!」 抵抗が遅れたのもあって両手は見事に台の左右にベルトか何かで括りつけられてしまった。 信じられない、何がマッサージだ。こんなの……。 「ほぉ゛お!?♡♡♡」 けれど罵声が出るべき俺の口からは、聞くに堪えない声が出てくるだけだった。 「驚かれずとも、オイルの変更をさせていただいただけです。決して体に害のあるものではありませんから」 そう言って体に垂らされたオイルは粘度が異様に高い。ねちゃねちゃと糸を引きそうなほどのオイルは、乳首を包み込むようにへばり付くと、そのままこちゅこちゅと刷り込まれる。 「ああ゛ぁああ!?♡♡♡」 熱い。めちゃくちゃ熱い。なんだ、これ。体に害がないとか嘘だろ、絶対に変な薬とか入ってるだろ。 「それ゛いや゛ぁ♡♡♡ッあ゛!♡♡っひぃ゛い♡♡♡」 ねちゃねちゃ乳首を弄ばれて、心底嫌なはずなのに俺の口からは裏返った声しか出てこない。 信じられないが、俺はまさか快感を覚えているらしかった。嘘だろ。いくらなんでもあり得ない。 こんなマッサージ師だかなんだか分からない変態野郎に身体を好き放題触られて、挙句拘束までされて感じさせられてるなんて……。 「大丈夫です。そちらは生理現象なので恥ずかしいことではありませんよ」 「はぇ゛……?」 ――嘘だろ? ほら、と両足をぐいと開かれて――そこにあったのはべたべたにテカった短パンを押し上げる俺の息子だった。 「そ……そ、んな゛……♡」 あまりにもショックだった。うっかり変な声なんて出していても嫌悪と拒否感をはっきり感じていたはずなのに……どうして、なんでちんこなんて勃たせてるんだ。 「お客様、こちらの凝りも解させていただきますね」 「……ぁ゛?!♡♡♡ちょ、そこ……いや゛だ!!♡♡♡や゛めろぉ゛!!♡♡♡」 短パンをずり下げられて、ぶるんと反り返るちんこに向かってオイルの容器が傾けられる。どろりとした液体が垂れていくのが見えて、俺は思いっきり首を横に振った。 「やだ!!♡♡♡いやだぁあ゛!!♡♡♡そんなも゛の塗っぢゃ……ぉ゛ぉおお゛♡♡♡♡♡」 オイルが触れた瞬間、がくがくと下半身が痙攣したように跳ねた。じゅわりと溶けそうなくらいの熱を感じて、ちんこがなくなってしまったんじゃないかと錯覚したほどだった。 「では塗り込ませていただきます」 そう言ってマッサージ師は平然と俺の下半身に手を伸ばす。ぬちゃぬちゃとオイルを拡げながら竿を扱かれて、腰が浮き上がった。 「あ゛ひぃい゛ぃい!?♡♡♡♡♡」 足を閉じたい。こんな変態野郎に急所を触られるなんて気持ち悪すぎる。 なのに、俺の下半身は関節がバカになったみたいに言うことを聞かなくなった。ガニ股で固定されてしまったようにちんこを曝け出している。 「や゛べで、ぐださ♡♡♡お゛っ♡♡♡あ゛ぉお゛♡♡♡♡♡」 「せっかくの機会ですから楽になさってください。ここも、凝っているでしょう」 「ん゛ひぃ゛いいッ♡♡♡♡♡」 ぬりゅぬりゅとオイルを亀頭に塗り込まれる。手のひらで覆い被さるように刺激されて、だらしのない声が止められるはずもなかった。 「出りゅ♡♡♡イ゛っぢゃ♡♡♡ぁああ゛ぁ♡♡♡」 先端を擦られながら竿も扱かれる。オイルに自分の先走りが混ざってねちゃねちゃ、にちゃにちゃといやらしい音が聞こえて泣きそうだった。 イキたくなんてない。けど、そんなの時間の問題なんじゃないかと思えるくらい激しくちんこを刺激されてしまう。 「だめ、だっ♡♡♡ぁ゛♡♡♡イ゛ッーー……、っあ……?♡♡♡」 駄目だ、出る。そう思ったのに……さっきまで激しかった手コキがぴたりと止められる。そのまま手が離れていって、俺はつい呆然としてしまった。 「どうかされましたか?」 「ッ……!」 そんな顔を見られた。マッサージ師は平然と見下ろしてくるが、あのまま触っていたら確実にイってただろうに焦らしやがった。 何でかって、そんなの俺に屈辱を味わわせるためだろう。俺は必死に呼吸を整えながら声を絞り出した。 「も゛……や゛めろ゛ぉ♡ケーサツ……よぶから……ッ♡」 「おや。どうしてですか?」 「は、ぁ……?!」 「失礼ですが、見たところ私の施術に大変満足されているかと」 こいつは何を言っているんだ……?俺がこんな変態的なマッサージに満足なんてするはずがないだろ! 「ふざけたことを言っ……んぉ゛ッ♡♡♡」 反論しようとした俺の口から、あられもない声が出る。……違う。これは、こいつがまたいきなり乳首を弾いたからだ。 そのせいでこんな……あれ? 「お客様、非日常的な体験に混乱していらっしゃるのは分かります。ですがここはひとつ、受け入れてみては」 「な゛、なにを言っ、っひぁ゛♡はひっ♡♡♡」 「マッサージをされて気持ちがいいと感じてしまうのは至って普通のことですよ」 「ちぎゃ……♡♡や゛、ちくび、弄るなぁ゛♡♡♡」 「気持ちいいのですよね?」 両手で何度も乳首を無遠慮に弾かれる。その度に頭が真っ白になって、下半身が切ない気がしてきてしまう。いやらしく勃起した乳首が虐められている姿を見て、俺は認めたくない気持ちでいっぱいだった。 「やだやだ♡♡ちがぅ゛……♡ちくび、違うから……!♡」 「そうですか……本当に気持ちよくないということであれば、控えざるを得ませんね」 「はぇ゛……え……?」 「私の勘違いだったのかもしれません。お客様が口にする言葉に嘘があるはずがないのですから」 そう言って、またマッサージ師は手の動きを緩めた。 くるくると乳輪のあたりをもどかしく弄るようにするばかりで、さっきのように触れてきたりはしない。 「おや、どうされました?何か失礼なことでも言ってしまったでしょうか」 「ぁ……」 こいつ、性根が腐ってやがる……!絶対に俺に言わせようとしている……『触ってほしい』って言わない限り続けないつもりだ! けど馬鹿だな、そんなの好都合だ。俺はこんなクソみたいなマッサージはすぐにだって止めてほしいんだから、そんなの言うはずがない。 「ですが……そうですね。私はお客様にご奉仕させていただくことを至上の喜びと感じております。もしお客様がお許しいただけるのであれば、極上の快楽を提供させていただくのですが」 「っ……うるさぃ……♡」 「嘘ではありませんよ?」 そう言ってマッサージ師はオイルをまた俺の身体に垂らしてきた。触れるだけで異様に体が熱くなるあのオイル。それが乳首に触れた瞬間に俺の唇から唾液がこぼれそうになった。 今触られたら、絶対に大変なことになってしまう。 「……どうされますか?」 乳輪をなぞっていた指先が、乳首に触れるか触れないかというところで止められる。胸元が呼吸の度に上下しても本当にギリギリ触れるかどうかのところで待ち構えられて。 全く……今更俺がそんなことで折れるとでも思っているのだろうか? そんなの、少し我慢すれば済むことだ。 「しゃわ、って……♡」 …………え? 「しゃわって……くださ……♡」 ……いや、違う。誰だ?そんなことを口にする大馬鹿野郎は。 「かしこまりました」 違う、違う!そんなこと言ってない!触ってほしいなんて思ってない! やめろ、と言おうとして口を開いた俺は――。 「はぁ゛ああぁああ゛……っ♡♡♡♡♡」 嫌悪の欠片も感じられない、蕩けた声を出すばかりだった。 「ぁ゛いぃ、しゅご……♡ぎもぢ、いっ……!♡♡♡」 乳首を指と指でねじり切るみたいにぎちぎちと抓られて、痛いと言いたいはずなのにそう言えない。まるで俺が本当に触ってほしいみたいに、背中を逸らせて乳首を押し付けている。 「気に入っていただけてなによりです」 ふふ、と笑うマッサージ師はさっきまでの優しさはどこへやら、俺の乳首を弄り続けている。 「あ゛ぅ♡♡だ、だめだめ♡♡しょれいじょ、ぅ゛♡♡♡り゛ゃめぇ~~~ッ♡♡♡♡♡」 脳内がばちばちと真っ白に弾けて、下半身ががくがくと痙攣した。びゅるるると何かを吐き出す感覚に、俺は驚愕よりも快楽を感じていた。 「おや、射精されてしまいましたね」 「ぉ゛♡♡♡♡♡ぃ゛ぐ♡♡い゛っでぅ……?!♡♡♡」 「はい。お気になさらず出し切ってください」 「ん゛いぃいい゛ッ♡♡♡♡♡」 乳首を潰されるように爪で抉られて実感してしまった。 俺は今乳首でイってる。 有り得ないほどの快楽で手も触れず射精してしまっている……! 「はひ……は……ぁ゛……♡♡♡」 虚ろな目でびくびくと痙攣する俺はどう思われているだろう?そんなことが一瞬どうでもよくなるくらい気持ちよくて、開放感があって。 だからそれに気を取られて、マッサージ師が俺の両足を開いてることに気づかなかった。 「……っふぉ゛おぉ!?♡♡♡な、なに゛!?♡♡♡」 「こちらも解させていただきますね」 こちら、って……。 手を触れられているのは足の間。指がどこかに入れられているのがわかる。どこかなんて……考えたくもないが、多分……。 「ぁ゛、っしり゛♡♡なんれ゛ぇ♡♡♡」 「男性の方は此方でリラックスされる方が多いんですよ」 とぷとぷとオイルを流し込まれて腹の中が火をつけられたみたいに熱くなる。嘘だろ、俺、まさか。 「んぎぃ゛♡♡♡っふぅ゛……ぅう゛~~♡」 「お客様も例に漏れず気に入っていただけそうで何よりです」 「ん゛、な゛わげ……お゛ッ♡♡♡♡♡」 ごりゅん、と指が内側のどこかを抉った瞬間、俺はまた腰を浮かせて無様に先走りを滴らせた。ぱちぱちと視界が揺らぐ感覚がする。 「あ゛~~♡♡あ゛っ♡♡あ゛ッ♡♡♡」 「おや、お客様は特に気に入っていらっしゃるようですね。ここまで締め付けてこられる方は珍しいですよ」 「い゛やっ♡♡♡しょこぉ゛♡♡♡びりびりすゆ゛……♡♡♡」 こんなのまるで女みたいだ。ナカに……男の、尻なんかに指突っ込まれて喘がされてるなんて。ふざけるな。許せない。悔しい。 けど……俺のこの様は何だ? 膜が張ったように歪む視界、熱で浮かされたような心地、自由のきかない身体、ひっきりなしの嬌声、弱々しい抵抗。 俺は……俺は、こんな、クソみたいなマッサージ……今すぐにでも止めてほしいはずなのに。 「ぉ゛っ♡♡ふぉ゛っ♡♡♡あ゛~~~♡♡♡」 ずちゅずちゅとオイルと肉が擦れる音と共に指が出し入れされる。何本入ってるかもわかりゃしないが、とにかく意識だけは持っていかれまいと必死に呼吸する。挿し拡げるように指が動かされた後、やっと引き抜かれた。 「んぁ゛……♡♡♡」 俺は安心した。抜かれたということはもう終わりなのだろう。後ろがひくひくと痙攣しているのがわかる。きっと弄られすぎて馬鹿になってるんだ。けどこれも時間が経てば収まるだろう。このマッサージもやっと終わりのようだし。 「…………あぇ?♡」 なのに、俺は感じ取った。穴に、また何かが押し付けられている。 「んぁ゛、い゛ぁああああ゛あああぁ?!?!♡♡♡♡♡」 ずぶぶぶと何かが押し込まれる。指じゃない。指だったらこんなに暴力的じゃない。なに。一体何が。 「あ゛~~♡♡♡あ゛ーーーっ!!♡♡♡♡♡」 「おっと。驚かれましたか? 本日の施術のラストスパートです」 指とは比べ物にならないくらい苦しくて、熱くて、視界が爆ぜる。 必死に顔を上げて下半身を見た。 ……挿入ってる。どう見ても、こいつのが、俺の尻に――。 「お゛ッ♡♡♡んぉお゛♡♡♡ほぉおお゛♡♡♡」 抜け、とも止めろ、とも言えない。肉の棒が狭い穴を出入りする度に汚い声で叫ぶしかできない自分が情けない。 「ここ、お好きなのですよね? 我慢しなくても構いませんよ」 「あ゛~~♡♡♡だめだめっ♡♡ひんじゃぅう゛♡♡♡」 いくら理性では抗おうとしても、さっき指でも抉られたところを重点的に擦られるともう駄目だった。駄目だのなんだの口にはしていてもそれは否定や拒否じゃない。 それは期待の裏返しだ。浅ましい、快楽の喜びだ。 「それともお客様は此方の方がお好みでしょうか?」 「い゛や、ぁあああ゛!!♡♡♡♡♡」 どちゅん!と奥まで強く押し込まれる。ずどん、ずどんと杭をハンマーで打ち付けられているみたいな衝撃で脳が揺れる。でもそれが俺はたまらなく――。 「ぁああ゛……あああ゛ぁ……♡♡♡」 浅いところをかき回されて、手前の感じるスポットを抉られる。そうしていたかと思えば、思い出したかのように腰を打ち付けられて、蹂躙される。 「ぎもぢ……っ♡♡♡ぎもぢぃ、がら゛ぁ!♡♡♡ら゛から……♡」 だからもう楽にしてほしい。心からそう思った。 楽になるというのが一体何を指すかなんてもう分かりもせずに。 「それはよかった。では、そろそろスパートをかけましょう」 そう言ってマッサージ師は俺の腰を抱え直して、足をより広げた。股関節が絶対馬鹿になってると思うくらい広げられているが、もう下半身の感覚なんてあったもんじゃない。 そしてギリギリまで腰を引いたかと思うと、再び勢いをつけて腰を叩きつけられる。 「お゛んっ!!♡♡♡♡♡」 ばちゅ!ばちゅ!と肉がぶつかり合いオイルが弾ける音。もう労わりもクソもあったもんじゃない。ただ快楽を追わせるような乱暴な腰使い。 「あ゛ぅっ♡♡♡はぇ゛ぇ♡♡♡」 こいつが何を思っているかは知らないが……少なくとも俺にとっては全てを忘れさせるのには十分なものだった。腰を一往復される度に本能に侵蝕される心地がする。 それは俺が忌避していたよりもずっと甘くて、切なくて、充足感があった。 「そろそろ達しそうでしょうか?」 「達っ……?♡♡♡ぁ、あああ゛~~♡♡♡」 「ああ……イくということですよ」 「んん゛ぅ……♡♡ぃ、イ゛ぐ……イぎだい……れす……♡♡♡」 「はい。ではこちらも遠慮なく」 まだそんな力があったのかっていうほど、乱暴に奥を抉られる。殴打してるんじゃないかっていうくらいの音の中、肉筒を端から端まで愛撫されて、今にも限界を迎えそうな俺のちんこが揺れる。 「い゛く♡♡♡イっぢゃう♡♡♡ぁ゛ーー♡せーえきでる゛ぅ……♡♡♡」 「いいですよ。出してください」 「いく♡♡♡イぐ……い、っああああ゛~~~♡♡♡♡♡」 風船に針を刺すように、ぱちんと弾けた快楽が一気にあふれ出す。びゅるっと勢いの衰えた精液を垂れ流して、俺は無様なまでにイった。 前に指一本触れられないまま絶頂するなんて思ってもなかった。けど腹の奥が快楽で痙攣するのも、暖かい感覚に途方もない満足感を覚えてしまうのも、こんなのどうやっても仕方がない。 だって気持ちいい。 それだけでもう他のことはどうでもよくなったんだ。 「お疲れ様でした。これにて施術は終了となります」 「っぉ゛……♡♡♡」 じゅぽん、とちんこを抜かれた穴から何かが零れていく。その生温かさを感じながら、次にぱちんぱちんと手を拘束していたベルトが外される。腹の上にタオルが乗せられて、簡単に清められた。 「少し休まれたらどうぞシャワー室をお使いになってください。こちら、次回使えるクーポン券をお渡ししておりますのでもしご機会があれば今後ともお待ちしております」 そう言って見せられたのはよくあるペラペラの紙と四角いカード……おそらくポイントカードだった。 マジかよ。こんなマッサージとは名のばかリの行為をしておいてリピーターになるとでも思われてるのか。馬鹿にしてる。 「っ……ぅ……♡」 怒りで手が震える。けれどそんな俺を他所に、既に衣服を正したマッサージ師はてきぱきと道具を片付けていた。 「私は毎週金曜日の担当ですので……よければご贔屓に」 にこりと営業スマイル。殴りたい。 けれど俺は振り上げた手を拳にはせずに……差し出されたクーポン券とカードをひったくるように奪い取った。 こんな店、多分もう二度と来ないかもしれないのに。

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