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おはようからおやすみまで2 *エロサンプル
あれから俺がリオをぎゅっと抱きしめているところや頬を舐められているところを、写真で、動画で、たくさんのお客さんに撮られ、SNSで瞬く間に拡散された。
俺はSNSの類は全くやっていないからよくわからないのだが、園のツイッター担当の子に「ものすごい反応来てますよ!」と興奮気味に言われ、差し出された画面を覗くと……「飼育員さんかわいい」「本当に信頼しあってるんだなあ」「完全に猫」など、とんでもない量のコメントで溢れ返っていた。
トレンドというものにも「リオ」「ライオン」、うちの園の名前の「旭川動物園」、それと「飼育員さん」も入っていたと聞かされる。ただの偶然で、他の動物園の人のことだろうと思ったら、
「そんなわけないでしょ。今こんなに話題になってる飼育員なんて、世界中探しても高良さんしかいませんよ」
と間髪入れずに言われてしまった。
自分のことを、日本中の人が話題にしてくれている……という実感がじわじわこみ上げて、カーッと顔が熱くなった。
その日のうちに園長に呼び出されて、こっぴどく叱られた。でもそれは、自分や園の体裁を守るために怒っているのではなく……俺の安全を第一に心配してのお説教だとわかったから、心にすんなりと入ってきた。帰り際に「これからもリオのこと、よろしくな」と言われ、胸がじんわりと温かくなる。
それから、夕方のニュース番組から「取材させてください」と問い合わせが来たり、地元の新聞が一面を使ってリオと俺の写真を載せてくれたり、今までのまったりしていた生活が嘘のように、瞬く間に忙しくなった。
「リオ、あのさ……」
出勤直後からドタバタするようになり、閉園後、こうして二人で過ごせるほんの少しの間が、本当の意味で心が休まる時間になった。ずっと考えていたことをリオに切り出す。
SNSやテレビで話題になったおかげで、かなりお客さんが増えてきているし、リオと俺でショーをやってみたらどうだろう?
お客さんが笑顔になってくれたら嬉しいし、何より、子供たちが動物を好きになるきっかけになって、動物が心の拠り所になったり、同じように飼育員や生き物に関わる仕事に興味を持ってくれたら嬉しい、と思う。
あまり友達がいなかった俺が、家で飼っていた猫とインコ、ばあちゃんちに住み着いた野良犬、夏休みに全力で追いかけた蝶やカブトムシ、川辺に隠れたカエルやカメ、周りのたくさんの生き物に関わることで救われていたように。
すると、「がうっ」と嬉しそうな返事が返ってきて、俺の頬に鼻先を擦りつけてきた。
「……一緒に、頑張って練習するか?」
そう聞くと、ぐるると喉を鳴らしながら、まるで笑っているかのように目を細めた。
それから閉園後に少しずつ練習して、休日は一日二回、平日は一日一回、ライオンの展示スペースで小規模なショーを初めた。
園の小動物コーナーではうさぎのかけっこレースをやっていたりして、小動物担当はたくさんの人の前で喋ることもある。けれど、肉食獣担当の自分が、大勢の前で「みなさん、こんにちはー!」なんて……教育テレビのお兄さんばりに喋る日が来るなんて、夢にも思っていなかった。最初のショーは、このままUターンして逃げてしまいたいくらい緊張した。
大きい輪をリオがジャンプしてくぐり抜けたり、お手、おかわり、伏せをしたり、俺が投げたおもちゃを空中でキャッチしたり……ショーは大盛況で、ついにアメリカのTV番組からも取材が来た。目の蒼い、気さくなリポーターが喋った内容を通訳さんが教えてくれる。まさか自分の人生でこんなことが起こるなんて、この時ほど「ちゃんと英語勉強しとけばよかった」と思った日はなかった。
午前中にインタビューを受け、ショーをこなして、今日も一日、俺もリオも怪我することなく無事に終わった。
「リオ、今日もありがとな」
かっこよかったぞ、と声をかけてわしゃわしゃすると、いつも通り頬を擦りつけてきたはいいが、なんだかそわそわしていて落ち着かない。様子が変だった。
「リオ……? どっか痛いのか?」
俺の休みに合わせてショーも休みにしているが、慣れないことをやらせたうえ、ちょっとスケジュールを詰めすぎたかもしれない。リオが体調を崩したら、全て俺の責任だ。俺の管理不足だ。心配で申し訳ない気持ちでいっぱいになって、身体を触って血が出ていたり、腫れているところがないか確かめる。
背中には特に異常はなさそうだ。そのまま屈んでお腹側を触ろうとすると、
「ぁ……」
目に飛び込んできたリオのそこは、苦しそうに勃ち上がっていて、白い液体をつー……と零していた。先端はいつも隠れていて見えないから、赤黒いそれは強烈に生々しく映った。
動物の発情期に遭遇するのは、珍しいことじゃない。飼育員を長くやっていると、もうなんとも思わなくなる。少なくとも、この園に勤めている人はみんなそうだ。
こんなに……意識して心臓をバクバクさせているのは、俺だけだ。
あの日の記憶がばっと蘇る。絶対的な支配者に征服される快感。陵辱すれすれの行為。暴力に似た悦楽。
「っ……」
俺も、リオと……その、また抱き合いたいという気持ちはある。けれど閉園後に取材を受けたり、園長とショーの打ち合わせしたり、小道具を準備したり……なかなか二人きりになれる時間なかった。……というのもあるけれど、その……この間、俺があれだけ……声を出して、誰も来なかったのは、本当に奇跡に近かったのだ。
すっと息を吸い込んで、愛しい獣のそこをきゅっと握った。ぴくっと反応して、ぐるるる……と威嚇するように喉を鳴らす。熱い、生々しい感触に、一度だけリオを受け入れた場所がきゅっと窄まるのがわかった。
「我慢させて、ごめんな……」
人間と同じやり方で擦ってやればいい……と頭ではわかっていても、痛くないだろうか、これでいいのだろうかと不安になる。その気持ちを振り切って上下に動かした。
「……ん、……」
リオのものを握っている……という状況が妙に気恥ずかしくて、たどたどしい動きになった。
「っ……」
あの時は、リオに殺されると思っていたから極限状態だったけど……ここも、その……猫と同じように、小さなトゲトゲがある。それを意識するたびに手が止まる。牛の搾乳のような体勢になっていたので、「リオ、座って……」と、扱きやすいようにお尻をぺたんと地面につけてもらった。
「ふ……っ、っ……」
暗くてはっきり見えない分、手の中の熱さを強烈に感じる。触られてるリオよりも、俺のほうが息が荒い。触れているだけなのに妙な気分になってきて、背中に汗が滲んでくるのがわかった。
「リ、オ……」
視線を上に向けると、同じように首を曲げて俺を見ていたリオと視線がぶつかった。あ、と思う間に美しい顔が近づいてきて、唇をべろりと舐められる。
「ふ……っ」
口を開けると、長くて熱い舌が奥までぐうっと入りこんでくる。
「んぅっ……! ふぁ……っり、……っ」
舌を絡ませようと思っても追いつかなくて、上顎から歯の裏までぐるりと舐め上げられた瞬間、びゅっ、と手に熱い液体がかかるのがわかった。
「ぁ……っ」
手の中のものはびくびく痙攣して、なかなか止まらない。人間の射精とは、根本的に量が違う。それもそうだ。身体の大きさも、牙も、力も……比べることがおこがましいくらい、何もかもが違う、完璧な生き物なのだから……。
「っ……」
これがあの時、全部俺の中に注ぎ込まれたなんて信じられない。
それを意識すると、じん、と、尻の奥が重くなるのがわかった。
ぴく、ぴく……と痙攣が緩やかになっていき、全部出しきったのを確認してから手を離す。自分の手のひらを見ると、溜まった液体が端からつーっと垂れていって、顔から火が出そうになった。
はっはっと犬のように息を切らせたリオが、名残惜しそうに頬を舐めてくる。
「……もうちょっと、待ってて、な……」
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続きではやたら長く合体しています。
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