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誰よりも綺麗で美丈夫な不良さん⑧
「あー!ゆいおはよぉ!・・・ってなんか疲れてない?」
「おはようゆい。ほんとだね、どうしたの?」
「おはよう。今日いつもより遅かったけどまた変なのに声かけられたの?」
朝のゆいくんお嫁にいっちゃうよ騒動のおかげで朝から気力を持っていかれた上に、いつもより家を出る時間が遅くなっちゃったからって学園まで早歩きで来たから体力まで持っていかれちゃった僕は教室に着く頃にはもうヘロヘロ。
疲れたぁ〜・・・って教室のドアを開けたら笑顔の3人が出迎えてくれてちょっと癒された。持つべきものは優しい友であるっ!
「おはよぉ。ちょっと家出るの遅くなっちゃって急いで登校したから疲れちゃった〜。ってゆうか僕変なのに声かけられた事なんて無いよ?」
ってコテリと首を傾げると全員から生暖かい視線をいただいてしまった。解せない。
「まぁそれは置いといて。ゆいが家出るの遅くなるのって珍しくない?寝坊でもした?」
昨日の僕のテンションの上がり方を知ってる匠がニヤリと悪戯っ子みたいに笑うから思わず苦笑してしまう。
「違うよ〜!いつもみたいに父さんとお弁当作ってたら、急にゆいがお嫁にいっちゃう!ってこの世の終わりみたいに騒ぎ出して、それに便乗した兄弟がまた騒ぎ出して収拾つかなくなっちゃって。それでいつもよりお弁当作るのに時間かかっちゃったんだよねぇ。母さんが止めてくれるまで人の話聞かずに騒ぐんだから疲れちゃった」
「え〜!何それ!ゆいお嫁さんなるの?」
「ならないってば〜!そもそもそんな相手居ないしっ」
「じゃあ俺のお嫁さんになれば良いと思うよ」
「静まで揶揄うの〜?もうお嫁さんネタやめよーよぉ」
ぺたりと机に片方頬っぺたをくっつけて不貞腐れていると、匠に頬をツンツンと突かれた。
「ごめんね?飴ちゃんあげるから機嫌直して?」
「・・・しょうがないなぁ。許してあげよう!」
ん、と手を出して匠にいちご味の飴ちゃんをもらって、くふ、と匠と笑い合った。
匠と顔を見合わせていたので、その後ろで陸が静に生暖かい視線を向けてドンマイ、と肩を叩いていた事には気付けなかった。
ーーー授業をこなしているうちに段々とソワソワしてきた。やっと3限目が終わった小休憩に、本当に僕、蓮先輩と一緒にお昼を食べるの?食べれる?蓮先輩のご尊顔拝みながらご飯食べるとか僕大丈夫?いや大丈夫じゃないかもしれない!なんて事を考えながらいつものようにぼぉっと渡り廊下を見下ろしていると、目の端にキラキラと光る白色が写り一気に意識が引き戻された。
蓮先輩だ・・・っ!別館で授業なのかな?今日もちょっと気怠そう・・・もう歩いてるだけで格好いい。
はわぁ〜・・・、と蓮先輩を視線で追っていると、どうやら自販機に用事があったみたいで入り口らへんで少し立ち止まったあとすぐ踵を返した。
こっちに向かって歩いてくる蓮先輩。僕の事見えちゃいそうだけど・・・でも上なんて向かないだろうから大丈夫だよね?
気付かれないならと、ここぞとばかりに蓮先輩を目に焼き付ける。ちょっと眩しそうに目を細めながら歩いてる。今日ちょっと日差し強いもんね。
キラキラの蓮先輩に見惚れていると、急に蓮先輩がパッと上を向いた。
ーーーパチッ、て音がしたのかと思った位にピッタリと視線が重なる。
あ、どうしよ・・・見てたのバレちゃった・・・!
窓枠に寄りかかってた僕は、動揺して思い切り動いてしまいゴンっておでこを打ってしまって涙目になっちゃった。
・・・・・・痛いぃ!
おでこをさすりながら恐る恐る蓮先輩に視線を戻すと、肩を震わせて笑ってた。
めちゃめちゃ痛いけど、蓮先輩が笑ってくれて嬉しくなっちゃってヘラリッて顔が緩んじゃった。
それを見た蓮先輩が自分のおでこをトントンと指差して口パクで何か伝えようとしてくれる。
ひ、や、せ、よ・・・?
冷やせよ、か!え、心配してくれたの?優しい・・・。
キュンとする胸を押さえながら一生懸命コクコクと頷くと、ハハって笑った蓮先輩はひらりと手を振って校舎の中に入ってしまった。
蓮先輩の姿が見えなくなってもさっきの蓮先輩の格好よさと優しさの余韻でしばらくそこから動けなくて、おでこの痛みがちょっと落ち着いた頃やっとハンカチを手に動き出せた。
蓮先輩が冷やせって言ってたからちゃんと冷やさなきゃ・・・!
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