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初めての外出デート②

 思わず立ち止まったまま少し距離のある蓮先輩の姿をジッと見つめてしまう。  蓮先輩の周りに居るお姉さん達はみんな凄く綺麗で、なんだか胸がギュッてなる。  美男美女でお似合い、だなんて自分で思って自分で傷付いてしまう。  こんな風に思いたく無いのに。  きっと蓮先輩はあんな風に綺麗なお姉さんに声をかけられるなんてよくある事なんだろう。全く、1ミリも動じてない。周りの人が存在してないみたいな感じで全スルーしてる。  ・・・・・・あれ?ちょっと待って、よく見たら蓮先輩あんな美人さん達相手にも全然興味無さそうなんだけど。  なんか全然羨ましく無くなってきた。  いや、女性だから蓮先輩の彼女になれるかもっていう所は羨ましいんだけど。でも蓮先輩にあんな興味無さそうにされるのは嫌だなぁ。  僕、割と自分で自分が図太い自覚もあるけど、あの美女さん達みたいに無視され続けてもめげずに話しかけられる自信は無いし。  構ってもらえる位置に居られるんなら蓮先輩の後輩で良かったかも、なんて調子のいい事を考えていたらふと顔を上げた蓮先輩とパチリと目が合った。  ・・・はっ!僕、蓮先輩の観察してる場合じゃ無かった。待ち合わせしてもらってたんだった!!ただでさえ待たせちゃってるのにここでぼーっとしてちゃダメじゃん!  慌てて蓮先輩の方に行こうと思ったんだけど、美人なお姉さん達の壁に一瞬怯んでしまう。  さすがにあそこの女の人達の壁を掻き分けて行ける気がしないんだけども。  僕が足を止めてしまった一瞬のうちに蓮先輩が女の人達の壁をすり抜けて僕の前に来てくれていた。  「おはよう結翔」  ポンって僕の頭に手を乗せていつもみたいに優しく笑んでくれる蓮先輩になんだかホッとする。それにしても私服の蓮先輩も格好良すぎて心臓に悪いんだけども。  ゆるっとした黒のビックTシャツに黒のスキニーパンツっていうシンプルな感じなのに、シルバーのアクセサリー達がアクセントになっていてそれだけでなんだかすっごくオシャレだ。  っていうか蓮先輩だったら何でも似合っちゃうと思う。だって格好良いもん。  そして今日もたくさんピアスが付いてる。いつも思うけどピアス開けるのって痛くないのかな?  勝手に赤く染まっていく頬っぺたをそのままに蓮先輩を見上げた。  「おはようございます、蓮先輩!ごめんなさい、お待たせしちゃいました」  「いや、楽しみすぎて俺が早く来すぎた。まだ待ち合わせの10分前だし」  ・・・なんだって!?蓮先輩が僕とのお出かけが楽しみだって言ってくれた!幻聴じゃないよね!?例えケーキが楽しみなんだったとしても嬉しいよぉ〜!  「僕もすっごく楽しみにしてましたっ!蓮先輩とお出かけ嬉しいですっ!」  思わず破顔してそう言うと、蓮先輩も嬉しそうに笑ってくれた。  「わ!可愛い〜!ねぇねぇキミ、私達と一緒に遊ぼぉよ!丁度私達も2人だしぃ、そっちのイケメンのお兄さんと4人で!」  「へぁ!?」  蓮先輩とにっこり笑いあってたら、突然横からさっきまで蓮先輩にひたすら話しかけていたはずの女の人に腕を掴まれてぎゅうっと胸を押しつけられた。  突然腕を掴まれて驚いたけど・・・僕におっぱいくっつけてもどうにもならないんだよね、申し訳ないのだけれども。  なんて思ってたら今度は逆の手を蓮先輩にグイって引っ張られて、スルリと女の人の手が外れてそのままスッポリと蓮先輩の腕の中に抱き込まれた。  うん、前もこんな事があった気がする。  あの時は相手が匠だったからちょっと恥ずかしかったなぁ。  「コイツ、俺んだから。勝手に触んな」  僕が少し前の事を思い出している間に、氷みたいな冷たい声でそう言い放った蓮先輩にひぇって何故か頬を赤くした女の人たちは、ヤバいリアルBL尊い・・・って2人で呟きながらどっかに去っていった、んだけど。  蓮先輩に顔を覗き込まれるまで思考を飛ばしていた僕はさっぱり聞いていなかった。  「結翔?行こう」  ・・・あれ?いつの間にあの女の人達居なくなったんだろう。  まぁ蓮先輩独り占めできるから居ない方が良いんだけど。  なんて思った僕は深く考える事なく元気よくはいっ!って頷いた。

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