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凄く甘くて少しだけほろ苦い⑲
───ピピピ・・・ピピピピ・・・
「んぅ・・・ぅん!?朝!?」
いつもより少し早い時間にセットしてあった目覚ましの音に意識が浮上し、1番最初に思ったのは。
もう朝!?昨日の夜の蓮先輩との通話、最後の方全く覚えてないんだけど!勿体無い!
だった。
自分で通話を切った覚えもなかった僕は慌てて枕元に無造作に放り出してあった携帯を手に取ると、蓮先輩からメッセージが1通届いていて。
『通話、切っておくな?おやすみ結翔。電話できて嬉しかったよ。また明日な』
どうやら蓮先輩が切ってくれていたらしい。
この感じだと僕が寝てすぐに通話切ってくれたんだよね?助かったぁ。
さすがに意識の無い状態の通話はちょっと恥ずかしい。
もし・・・もしも、だけど!してる自覚も無いけども!蓮先輩の前でいびきかいてたり歯軋りしちゃってたりしたらヤダもん!
ホッとした僕はひとまず携帯を置いてジャージに着替える。
登校したらそのまま体育祭の準備だから、今日はジャージで登校が許可されてるんだ。
別に制服で登校してもいいんだけど、学校で着替えるのも面倒だし・・・許可されてるならもう着ていっちゃおうって。
───それよりも。
今日は体育祭用の豪華弁当作る予定でいつもよりちょっと早起き。
こんな時間に蓮先輩に返信して、もしまだ寝ている蓮先輩を起こしちゃったら申し訳ないし、もう少し経ってから返信しなきゃだ。
運動音痴な僕は、小学校から続く歴代運動会や体育祭の当日を毎回漏れなく憂鬱な気持ちで迎えていたんだけど、今日は蓮先輩のお陰でなんだか清々しいというかワクワクしてる。
鼻歌なんか歌っちゃったりして。
蓮先輩パワーってすんごい!
そんな感じで上機嫌のままキッチンに向かった僕は、父さんにすっごく驚かれちゃった。
そうだよね、体育祭当日は毎回死にそうな顔してた自覚はあるし。
でも僕、過去1ってくらいすっごく練習頑張ったし何より蓮先輩の勇姿が見れる今日この日をとっても楽しみにしていたのです・・・!
ちょっとだけ誤魔化すように、父さんに僕今回の体育祭は楽しみなんだ!って言ったらなぜか瞳をウルウルさせて。
「父さん・・・嬉しい・・・!!よし、今日のお弁当は元々豪華にする予定だったけどもっと頑張っちゃうぞ・・・!主に飾り切りをね!しちゃうよ!」
なんて言ってかまぼこを孔雀の形に切りはじめてポカンとしてしまった。
いや、凄いけども。
でも何故に孔雀なんだ父さん・・・。
・・・・・・まぁいいか、って父さんはスルーすることにして僕は僕の作業に取り掛かったよね。
✱✱✱
「蓮先輩、おはようございますっ!」
「ん、おはよ」
今日も玄関を出てすぐの所で蓮先輩が待っててくれている。
それが毎回嬉しくって、玄関からすぐなのに小走りで蓮先輩の所に駆け寄っちゃうんだよね。
あ、蓮先輩もジャージだぁ・・・!
制服もすっごく格好いいけど、ジャージ姿もたまんなく格好いい。
上は団Tシャツを着た上に学校指定のジャージを軽く羽織っていて、下も学校指定のジャージを少しダボっとさせている。
僕は団Tシャツの上に学校指定のジャージをきっちり着て、下は学校指定のハーフパンツ。
パンツ以外はほぼ同じものを着てる筈なのに、蓮先輩が着てるとそのまま雑誌とか出れちゃいそうなの、凄い。
ほわぁあ〜・・・!って蓮先輩の目の前で止まって見惚れていると、なんだかすこし頬を染めた蓮先輩にギュッて抱きしめられた。
「あ〜・・・。練習の時から思ってたけどハーフパンツ履いてる結翔クソ可愛いよなぁ。誰にも見せたくね〜・・・。俺のだって分かるようにすんの、どうしたらいいんだ・・・」
・・・・・・思いっきり頭ごと抱き込まれてしまって、蓮先輩が何言ってるか全然聞き取れなかった。
後で聞き返したんだけど、結翔がクソ可愛いなって言った、って言われたんだけど。
うーん、そんな短い言葉だったっけ?
まぁ蓮先輩がそう言うならそうか!なんて、それ以降はいつものように他愛も無い話をしながら学校へ向かった僕達。
今日もあっという間に着いちゃった。
これまたいつものように僕の教室まで送ってくれた蓮先輩に「今日は頑張ろうな」って頭を撫でてもらった僕は元気満タンやる気も満タンなのです・・・!
頑張るぞぅ〜!って気合を入れながら、匠達と合流して校庭に出る準備を始めた。
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