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プライステイスト26
一体何なのかを考えながらゆっくりと口を付けていく。それが入っていくと、甘みと酸味を含んだ柑橘類の爽やかな味わいが彼の中に広がっていく。
「柚子……?」
「正解だ。ずっと気になってた最高の一品だ」
「これもワインなの?」
「あぁ。店では出してないが、前に土産で貰ってずっと気になってたんだ。家でしか飲めないからな」
「へぇー……」
真剣になって口数を減らしながら味わっていくタクト。どのワインよりも真剣に、丁寧に味わっている。
そんな姿を観察しながら、コウもようやく飲んでいる。
「タクト」
カップを空にしたタクトの名前を呼び、振り返ったところで自らの方へ抱き寄せる。今にもぶつかりそうになったところで額を合わせて止めた。
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