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プライステイスト30

「タクト」  呼び掛けても返事がない。聞こえてくるのは規則正しい呼吸だけであった。  ようやく落ち着いた様子に、ほっとするコウ。自分の身体に乗っかっているタクトの背中をそっと撫でながら、飲みかけのワインを手にしてカップに注ぐ。  半分程度入ったところでボトルから一切出てこなくなり、完全になくなってしまった。  ボトルからカップに持ち替え、最後の一杯を静かに味わっている。その上にある温もりを感じながら。  この一杯に満足感を得ながら、次はタクトの料理と共に味わいたいと考えていた。  今日のところは、食べ終わった皿を眺めながら料理の味を思い出し、最後の一口をぐいっと飲んでいった。  そうして完全に飲み切ったところで、グラスをテーブルに置いた。それからタクトの身体を起こさないように抱き上げると、彼を後ろのソファへと横たわらせる。

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