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秘密の味9

 まだ完全に調子が戻らないこの人は、なかなか立ち上がろうとしなかった。無理に立ち上がらせて汚されても面倒なだけである。  自分のペースでできることをやらせた方がいいと判断した俺は、そっと背中をさすりながら無言でそばにいた。 「……おい、あんまくっつくな」 「大丈夫。介抱してるって言えばいいし、今頃メインだったから夢中になってるよ。だから、俺たちのことはバレないよ」  さすっていた手を肩に回し、そっと抱き寄せる。大丈夫だと悟ったその身体は、そっと俺にもたれかかる。相当辛かったのか、かなり埋めているように感じられる。  そっと頭に触れていき、髪を梳きながら優しく撫でていく。素面であれば拒んでくる人であったが、今日は素直に俺の手を受け入れてくれる。その感触を求める姿はまるで子猫のようだ。  次はいつ触ることができるか分からない感触を、俺はただひたすら堪能していた。  この人にここまで触れるような関係になったのは、割と最近のことであった。それまでは、とても仲の良い先輩と後輩という関係だった。今でも傍から見ればそうに違いない。

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