92 / 214
秘密の味9
まだ完全に調子が戻らないこの人は、なかなか立ち上がろうとしなかった。無理に立ち上がらせて汚されても面倒なだけである。
自分のペースでできることをやらせた方がいいと判断した俺は、そっと背中をさすりながら無言でそばにいた。
「……おい、あんまくっつくな」
「大丈夫。介抱してるって言えばいいし、今頃メインだったから夢中になってるよ。だから、俺たちのことはバレないよ」
さすっていた手を肩に回し、そっと抱き寄せる。大丈夫だと悟ったその身体は、そっと俺にもたれかかる。相当辛かったのか、かなり埋めているように感じられる。
そっと頭に触れていき、髪を梳きながら優しく撫でていく。素面であれば拒んでくる人であったが、今日は素直に俺の手を受け入れてくれる。その感触を求める姿はまるで子猫のようだ。
次はいつ触ることができるか分からない感触を、俺はただひたすら堪能していた。
この人にここまで触れるような関係になったのは、割と最近のことであった。それまでは、とても仲の良い先輩と後輩という関係だった。今でも傍から見ればそうに違いない。
ともだちにシェアしよう!