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いつかのさけ28

「これって確か、結構高いやつだった気がしますけど」 「ピンキリだな。高いやつはなかなか手を出せないが、今飲んでるやつはそうでもないな。安くてもそこそこするけどな」 「匠の技を感じます。それから、岡崎さんの素晴らしいセンスも」 「素晴らしいって何だよ。褒めても何も出ないぞ」 「俺は事実を言ってるだけっすよ」  桂木の笑いが少し力の抜けたようだ。顔もすっかり赤くなっている。意識ははっきりとしているが、酔いが回ってきた様子である。  その一言でも岡崎には相当嬉しいようで、桂木につられて笑顔になっていた。  お互いに笑い合いながら酒を飲み進め、合間に器の鍋をちまちまと食べていた。  傍から見ていた若松は、二杯目を食べ終えたところで存在感を消しながらそっと席を外していった。  二人きりになったテーブルで、岡崎と桂木は夢中になって話し続けていた。

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