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 カナタが変わるための道を、作ってあげても良いのではないか。  カナタが変わるための架け橋を、ツカサの言葉で。 「いつもなにかに怯えていて、なにかから隠れようとしていて、内気で弱気なカナちゃんを『可愛いな』と思ったのが、始まりです。『弱いカナちゃんのそばにいたい』と思い、それから『守り続けたい』と思ったのが、始まりでした」  ツカサは父親から目を逸らさず、ハッキリとした口調で自分の想いを口にする。  それが、カナタが望む【変化】への引導となるように。 「だけど、今は違います」 「……今は、違う?」 「はい。……カナちゃんは、変わりました。弱かったカナちゃんは自分の弱さを知っていて、きちんと理解したうえで『変わりたい』と思い始めたんです。こうして、自分のご両親に俺のことを紹介しようとしたように。カナちゃんは、変わろうとしたんです。……俺にはそんなカナちゃんが、酷く眩しい存在に思えました」  隣に座るカナタの手を、ツカサはそっと握る。 「俺は、自分自身の弱さに気付いていなかった。……いえ、気付いてはいたと思います。だけど、自分のことを『強い』と思い込んでいたんです。そんな俺に、カナちゃんは『強く在ろうとしなくていい』と言ってくれました。カナちゃんを守りたいと思っていた俺にとって、その言葉はとても衝撃的だったんです」  ツカサから語られる、息子の変化。それを聞き、両親はどう思うのだろうか。  ──自分と同じように、心を揺さぶられてくれたら嬉しいと。ツカサは、心の中で思わず願ってしまう。 「始まりは、カナちゃんの弱さに惹かれました。だけど今は、変わろうとした──変わっていく強さを持つカナちゃんのことを、愛しています。そして、そんなカナちゃんの隣に並んでいても恥ずかしくない俺として、俺も変わります。カナちゃんと二人で、変わっていきたいです」  カナタの手を握ったまま、ツカサはゆっくりと、両親に向かって頭を下げる。 「──お義父様、お義母様。カナちゃんを、俺にください。必ず、誰よりも、幸せにしてみせます」  以前までのツカサならばきっと、カナタの両親から許可を取ろうとしなかっただろう。  こうして頭を下げずに、どんな手を使ってでもカナタを奪い、既成事実で固めた後にでも『結婚の報告はした方がいい?』と言いのけたに違いない。  けれどツカサは変わろうとし、変わる過程としてこの行動を選んだ。  ──カナタが変わるための道を、堂々と切り開いてくれた。 「ツカサさん……っ」  普通の恋人ならば誰しもがきっと通る、なんてことない道筋。  その道に、ツカサと共にいる。……そんなことが、カナタにとっては胸が詰まるほど嬉しかった。  思わず瞳を潤ませてしまったカナタは、頭を下げるツカサに向けていた顔を、慌てて両親に向ける。 「……お父さん、お母さん」  両親を呼び、背筋を正し、カナタはしっかりと前を向く。 「いきなりのことで驚かせちゃったのは、本当にごめんなさい。……だけどオレ、本気だよ。本気で、ツカサさんのことが好きだよ」  片方の手は、膝の上で拳を握る。もう片方の手で、大切な人の手を握った。  カナタは一度、呼吸を整える。……それからグッと力を籠めて、カナタは言葉を発したのだ。 「──ツカサさんとの結婚を、どうか許してください……っ!」

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