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不機嫌な彼。
「すまんすまん、ついカッとなった。俺も大人げないよな。いい加減、感情的になったりするのも卒業しないとな…――」
彼はそう言って掴んだ胸ぐらを離すと、俺の前で笑って誤魔化した。
「阿川、今のは悪かった。どうか忘れてくれ……。あいつが来なかった理由が、お前の所為 だと聞いてついカッとなった。俺、昔からあいつに過保護なところがあるから参るよな」
「過保護……?」
「ああ、って……昔の話だけどな?」
「2人は本当に〃仲〃が良いんですね…――」
俺は皮肉混じりに笑うと、2人が仲が良いことを改めて知った。そうなるとますます胸の中で嫉妬の炎が燃え上がった。
「――今のは僕も忘れます。誰だって、大事な人を傷つけられたらムキになって怒りますよ?」
「だ、大事な人って…? おいおい、茶化すなよ。俺はだた葛城とはな――」
「あっ、そろそろ仕事に戻らないと…! 柏木さんすみませんが先に戻ります!」
俺は自分の腕時計をチラッと確認すると話の途中で切り上げた。そして、慌ただしく出て行くと、仕事に戻った。
そのあと、仕事の途中で頭がずっとモヤモヤしたままだった。2人が仲が良いとか、彼が少なくても葛城さんに好意があるのを隠してるとか、勝手に自分で妄想して嫉妬した。
モヤモヤした気持ちで頭の中がいっぱいになった時、エレベーターの中で葛城さんに偶然会った。その時、彼の前でどんな顔をしていたかは覚えていないが、自分でも凄く不機嫌な表情をしていたと思う。そして、俺は柏木さんには負けないと彼に自分の思い告げた。その時、どんな心境で俺の気持ちを聞いたのだろうか?
俺は葛城さんの気持ちが知りたい――。
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