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勝つのは師匠か弟子か 2<ポッキーの日SS>
もう一度咥え直すと、レイヴンも反対側を咥えた。
俺が咥えている方が持ち手側なのか、チョコレートが付いていないので甘い味が口の中に広がらないのが幸いだ。
レイヴンはやる気がなさそうな顔をしていた癖に、チョコレートとサクサクとした食感が気に入ったのか嬉しそうにちまちま食べ進めてくる。
俺は大して食べずに待ち構えていると、レイヴンが身体を乗り出すようにして俺へと少しずつ距離を縮めてきた。
「……っ」
レイヴンが眉を寄せて困ったように動きを止める。
このままお互いに譲らなければ、普通に唇が重なる。
俺が誘っているのは分かるらしく、咥えたまま動かない。
しょうがねぇな。コッチから動いてやるか。
固まったまま身体だけ乗り出しているレイヴンの後頭部に素早く手を当て、口を開いた瞬間にスティックを一気に食べ進める。
ついでにグッと身体ごと引き寄せて、困惑するレイヴンの唇を奪う。
唇に付いていたチョコレートが甘い。
「んむぅ!ん、んん!」
せっかくなので、油断している唇を吸い上げて右手で耳を擽ってやる。
すぐにふにゃりと力が抜けたので、半開きの唇に舌を入れて口腔もひと舐めする。
チョコレートの味が口の中に広がり、舌と舌が溶け合っていく。
指先で耳の縁を撫でると、目を瞑って快感を逃そうとするので逃さないようにと耳の穴にも指を入れて優しく擽った。
「ぁ、っふ……んぅ、んむぅ……」
今、何をしていたのかも忘れたようにレイヴンがおとなしく俺に委ねてきた。
すがるように俺の服をぎゅうっと掴む。
何度か舌を突いて遊んだあとに、ゆっくりと味わってから唇を開放した。
「……甘いな。ご馳走様」
ペロっと自分の唇も舐めてみるが、まだ口の中が甘い。
コレ、甘すぎねぇか?
「んぅ……って! 普通、手は使わないでしょう! 何引き寄せてくれてんですか!」
「別に手を使っちゃいけないとは一言も言ってねぇぞ」
「この人は……! 勝負にもなってないし!」
「引き分けだなぁ? じゃあもうひと勝負……」
「しませんっ!」
不機嫌にむくれるレイヴンを笑いながら撫でてあやす。
全く……ガキみたいな反応しやがって。
プイと俺から顔を逸らすが、耳まで赤くしているレイヴンは部屋から出ていこうとはしない。
「ほーら。機嫌直せって。今度は邪魔しねぇから」
「……次、余計なことをしたら。口聞きませんから」
「お前なぁ……」
「そういう子どもじみた反抗の方が、地味に効くって知ってますから。無視されたくなかったら、おとなしくしていてください」
俺に文句を言いながら、何気にお菓子を食べて頬を緩ませている小動物のようなレイヴンの反応がおかしくて笑っただけなのに、結局この後小一時間は口を聞いてくれないという徹底っぷりだった。
まぁ、結局一日中この部屋でレイヴンと過ごせたからいいとするか。
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