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「論文も短答も成績は良かったんだろ?
なら、不安材料は無いんじゃないのか?」
ビクリと震え、抱え込んだ秀の手を更にキツく掴む。
「………合格したら、……卒業後に研修所に行かなきゃいけないから……、やだ」
「おいおい。
狭き門だろ司法試験は。
それに、親御さんたっての希望でもあるんだろ?」
「取っておけば後々役に立つかも知れないってだけで、強制じゃないし……。
それに、………………っ、……」
かぷっ。
「痛ぇ!」
「むう……」
両手で掴んだ秀の手を、結人がカプカプと噛む。
「おい、何か地雷でも踏み抜いたか!?
こら、おいおいおい」
「あにゃえうのやら」
「…………?」
「秀さんと離れるのヤだ。
法学部なんか入らなきゃ良かった。
僕、大学入り直したい。
医学部あたりがいいかな……。
でも、研修医になったら拘束時間が長くなっちゃうだろうし」
「こらこらこら、何を勿体ないこと言ってる。
現役で大学に入って二十歳そこそこで司法試験合格するだけの頭を無駄遣いするな」
「秀さんの近くにいられるのが重要なんだもん」
「マジかよ……」
半分拗ね気味の結人に、秀は天を仰ぐしかない。
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