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「料理も何にも出来ないから心配だったの。
結くんが傍にいるなら、もう大丈夫ね」
「でも……僕男ですよ?
本当にいいんですか?」
「結くんだからいいんだよ。
今までこんなに非番にリラックスしてる秀は見たことがないし」
「そ。
男女ってのはあんまり拘り無いんだ。
秀の目の下のクマが消えてる事の方が重要」
「………………」
自分の膝枕で気持ち良さそうに眠る秀。
「……秀さん、現場から戻る時にいつもうちの店に寄ってたんです」
「「………………」」
「目の下のクマ凄いし、疲れ切ってるし、胃も荒れてるから口の端傷んでて……。
なのに揚げ物オンリーのお弁当とカップ麺とエスプレッソ流し込んでるの、見てられなくて」
だから、胃に優しいおかずやサラダを勧めた。
コーヒーもドリップのものやカフェインレスのものを……。
「顔色も随分良くなったし、甲斐甲斐しく世話をしてくれる人が出来たのは気づいてたの。
結くん、ありがとうね」
「…………っ、いや、その……っ、出来ることをしただけで……っ」
「無鉄砲な秀の手綱を握ってくれてるし、もう心配要らないな」
「………っ、……」
ほんの少しのビールで寝入った秀の寝顔。
それが、堪らなく愛しいと結人は思った。
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