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第18話

いざ、豊を部屋へ招き入れたものの...何を話したらいいのかわからない。 「あ、なんか飲む?豊....」 「や、いいよ、気を遣わなくて。入学して初めて入ったな、樹の部屋」 「....あんま、まじまじ見ないで」 「作りは同じなのに、やっぱ、樹の部屋、て感じ....あ」 豊の視線を辿ると、テーブルの隅に置いたままだった映画のDVD。 「樹、買ったんだ?もう観た?」 「まだだけど...前、3人で観る約束してたよね、映画館で」 「だったな...なあ、一緒、観ない?」 「え?」 「まだ、樹、観てないんだろ?俺もまだだしさ」 豊は勝手にDVDのケースを開け、セットし始めた。 「え、ちょっと待って、豊....」 慌てて俺はリモコンで一時停止にした。 「映画観に来たの?」 「....そうじゃないけど」 長い沈黙が息苦しい。 あんなに好きだったのに、豊との時間がこんなに苦しいなんて...。 「....あの時、俺が寝つけていたら、違ってたのかな?」 豊は答えなかった。 「それとも、起きた方が良かったのかな、でも、なんて切り出せば良かったかな...どう思う?豊」 「....俺さ、ずっと樹が好きだった。小学校の頃かな、意識しだしたの。中学になって、もっと樹が好きになって...涼太に相談した」 「....うん」 それは俺も同じだ。 「最初はさ、応援してくれてた。頑張りなよってさ。でも、いざ、告白しようと思っていた前夜にさ、涼太から言われたんだ。樹、好きな人いるんだって、諦めた方がいいよ、樹の性格から、絶対、悩むと思うし、て」 俺はテーブルに視線を落としたまま、豊の話しを聞いた。 「俺、すっかり真に受けて。失恋した気分になって、勝手に落ち込んで....それで」 「もういい」 豊の話しを遮った。 「それ以上、聞きたくない。涼太を悪者にもしたくない」 「....そういうとこなんだよな」 「....なにが?」 俺が顔を上げると、久しぶりに豊と目が合った。 去年まで、あんなにドキドキした豊の瞳なはずなのに、全くドキドキしない。 寧ろ、冷静な自分がいた。 「樹を独り占めしたくなる。可愛くて、優しくて、純粋で....」

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