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お墓参り[6]
「あ、そうだ…」
ふと、思い至って、何事も無かったかのように平静を装う悠さんの脚の間を目視で確認。
……う、まあ…そうなります、よね?
俺にあんなふうに触って何も反応しないほど、悠さんは枯れてもいないし、俺はとっても愛されちゃってる訳で……。
「あの、…俺も舐めようか?」
おずおずと…、俺のなんか比べ物にならないくらい凶悪にそそり勃っちゃってるソコにそっと触れると……
「それも魅力的なお誘いだが、それよりも後で存分に皐月の中で感じたいかな」
手を攫われて、そして手の甲にちゅっと唇を当てられた。
……王子様、みたいだ。
変なこと言っちゃってる、ヘンな人なのに。
その物腰に、うっ…、とちょっとだけ固まって。
でも恥ずかしさを隠して、赤く染まってるだろうほっぺを隠して悠さんを見上げる。
「俺も、悠さんのこと、中でいっぱい感じたいです…」
「───はいっ。悠さんを中で感じたい、頂きました。ありがとうございます」
可笑しな事を口走りながら、悠さんは掌を合わせて俺を拝む。
なんだ、どうした急にそのテンションは…!
王子様!?何処消えました?王子様!?
「…何してるんですか?」
ちょっと引き気味で訊ねると、
「悠さんは今幸せを噛み締めているので、水を差すような行為はご遠慮下さい」
手を合わせたまま、もう一回俺を拝んだ。
なんだ、もう。なんだ、この人のノリは……。
「ああ、それにな」
急に普通に戻って、顔を外へ向ける。
「ほら、もうあいつらも戻ってくる」
悠さんの視線の先に、まだ掌で隠れるぐらいのサイズで映るリュートさんと夏木の姿が見えた。
「うそっ!ヤバい!悠さん、臭 い平気!?」
「臭いより、皐月の方がマズいかな。お前、エロい顔してるぞ」
自分じゃ分からないか?とほっぺを撫でられ、バッと顔を押さえる。
なんだ!?エロい顔って!!
「まああいつらも、2人っきりにしたらなにか起こることぐらい想定できるだろう」
「普通しないよ!ココは車の中って言っても外なんだし!」
「自分で誘っておいてそんな風に言われてもなぁ?」
「ううっうるさいっ!」
ジュース買ってくる!窓開けといて!と言い残し、車から転がり出る。
10分、…いや後5分でいい!もうちょっとだけ、2人を足止めしないと!!
「リュートさ~ん!おかえりーっ!」
手をぶんぶん振って、おかしくなってた、残ってただろうエロい雰囲気を吹き飛ばす。
リュートさんが手を振り返して応えてくれる。
夏木がでっかい声で、「俺はー!?」って文句言ってる。
この先にあるのは、リュートさんのお母さんのお墓だ。
お祖母さんは普通に仏教のお墓で、お母さんは基督教徒だったからクリスチャン用のお墓で。
彼女たちは別々のところに眠っているのだそうだ。
夏木は、リュートさんのお母さんの墓前で、何を思ったんだろうか。
俺は悠さんのお祖母さんの墓前で、何を思うんだろうか。
2人のところまで走って、赤く火照ったままだったほっぺを誤魔化す。
「皐月くん、迎えに来てくれたの?ありがとう」
「香島さんは?」
「悠さんは車に置いてきた。なんかジュース買おうと思って。2人も一緒に行こ」
答えを聞く前に、リュートさんの手を掴んで歩き出す。
「桃のやつあるかなぁ、桃のやつ」
「ふふっ、皐月くんは桃のジュースが好きなんだね。今度店にも仕入れようかな」
「あ、俺コーラ買おう。リュートさんは?」
「僕は、水筒に温かいお茶を持ってきてるから」
「「おばあちゃんかよ!」」
「…おばあちゃんに育てられたんだから、それも仕方ないと思う……」
思わず被ったツッコミに、リュートさんはちょっと恥ずかしそうに目を伏せた。
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