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週の始まりは憂鬱

 あ~~~、眠い。先週は斉藤さんと一回できたけど、次の日お互い仕事だからって事でセーブして、いまいち欲求不満の解消にならなかった。そんで今日は週の始まり、仕事の始まり。  小児科医という仕事柄、もちろん子供は嫌いじゃない。元々小児科医になるため医学生になったんだ。昔からの夢だったばずなんだけど、その辺の、なんで小児科医だったのかが思い出せない。  小さい頃木から落ちて頭ぶつけたらしく、その辺の記憶がないのよ俺。困ってはいないけどね、小児科医にならなきゃって目標はずっと変わらなかった。  ここ、江橋大学病院の小児科医は、持病もちの子供の患者が診察にくる。地域の病院では、いざという時に手術が出来ないので、大きな病院に紹介状を持ってかかりつけ病院を変える。その、紹介状を持ってこられる先が、この江橋大学病院だ。  広い敷地に大きな建物のこの病院は、大学病院だけあって様々な科がある。  そんな中、臨床研修を終えた二年前。赴任してきた大学病院には新人の、まさかの小児科医が二人いた。  そんなに目指す者が多いわけでなく、人気なわけでない小児科医に新人が二人!  なんで小児科医が人気ないかっつーと…  ・子供のみならず親の対応が必要なので、倍苦労する。  ・子供が相手というコミュニケーションのとりにくい中での診察・治療。  ・患者の親からの目線が厳しい(そりゃそうだ)。  ・一般的に見て、自分より小さな子供が苦しんでる姿が見てられない。  なんていう理由があって、ここ数年小児科医を目指す者が減っている。なぜか俺は小児科医一択だったけどな。  新患もそこそこいるわけだけど、普段の診察は顔見知りの子供が定期受診でやってくる。中には「たくみしぇんしぇ、ありがとごじゃぁます」とか喋りだしたばっかで「ばいばい」だけ言ってくれる子供もいる。  可愛いんだよそれが。断じて俺はショタが好きだの、ロリコンてわけではないけれど、あの無垢な瞳がなついてくれて、病状が改善していくのが、やりがいを感じる。  乳首にピアスなんて空いてるちょっと不良なお医者さんだけど、そんなん白衣の上から見えないもんね~。  やりがいのある仕事なんだけど、午前の診察終わりにいつも厄介な事がある。    バタバタバタバタバタ…  今日も聞こえてきた。 「先生、廊下は走らないで下さい!」 「すみません!」  ほら、婦長の声と俺の同期のもさ男の声。『もさ男』は俺がつけたあだ名。190㎝近くあるんじゃないかって長身に、長いもさもさした髪で目がよく見えない。その上分厚いメガネ。『もさ男』じゃん。 「匠先生!お昼休憩一緒に行きましょう!」 午前の診察が終わると、もさ男が俺を昼食に誘いに来る。これいつもの定番。 「お前毎日懲りないね。俺昼飯あんま量食わないから社食無理だって何回言わせんの?」 「社食じゃなくても、売店で買って中庭ででも…匠先生と一緒ならどこでも…」 「う~ん。今日はパス」 「そんな~~~」  もさ男はなぜか出逢った頃から俺に猛アタックしてくるちょっと変わった奴。周りをきにしないから、今では俺たちの恋の行方は看護師たちのいい話題だったりする。  めんどくせぇけど、同期だからそう無下にも出来ねーんだよ。あー、めんどくせ。恋人とかいらねっつの。

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