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第75話「もどかしい」* 寛人side 1/2
途中までは、深刻な顔して話してたくせに。
ワインを飲み始めた頃から……弾けた。
もういいや、と思いはした。
よっぽど普段出せないんだろうと思って、飲ませてやる事にしたけれど。
白ワイン、ボトルにした頃から、やばいなーとは思っていたが。
……結局、彰をおぶって帰る事になった。
二人とも成人してから、何回か飲んではいるけれど。
仁がこっちにくるまでは、仁の話はした事がなかった。
彰が避けてたから。
それでも、たまに酔いたくなるらしくて。
何度かつぶれた彰の世話をした。
――――……にしても、今日は、ひどい。
「……ひろとー……重いー?」
「……いくらお前が軽いっつったって、しばらくおぶってりゃ重いわ」
「ごめーん……」
タクシーを拾うほどの距離でもないし。
――――……このまま、酔ったままの素直な彰と、話したい気もして。そのまま歩き出す。
「……なあ、彰」
「……んんー?」
「……お前、仁の事どう思ってる?」
「んー…… 大好きだよ……?」
大好きというワードが出る事自体、結構酔ってんな……。
と、苦笑い。
「どこが好き?」
「……一緒に居ると楽しいし。優しいし。たまにすごい、可愛いし……」
「どんな意味の大好きだよ?」
「んーーー…… 意味って……?」
眠そうな声。
……まだ寝んなよ。と、思いながら。
「……じゃ、オレの事は? どう思ってんの?」
「大好き、ひろと……あたりまえじゃん……」
「……オレと仁、同じ好きなの?」
「――――んー……違う……かな……」
「どう違う?」
「……寛人は友達。仁は……家族……?」
――――……疑問符ついてるし。
苦笑いが浮かんでしまう。
「……んー。キスしてた事とか思い出すけど……やっぱりそれは、ダメだし……」
「……何でダメなんだよ?」
「弟だから……」
酔ってるくせに、即答。
「……じゃあ、仁が他の奴とキスしたり、抱いたりすんのは、良いのか?」
「――――……やだ」
……は。酔ってんな。
やだ、だって。
「……オレにしたみたいに、他の人にするの、やだって思うけど……でも、仕方ない……。 仁には、誰かと幸せになってほしいし……仁は……もうオレとはしないし……」
「……仁が今、お前としたいって、言ってきたら?」
「そんなのはダメ。むり」
また即答。
「――――……弟だし…… 男だし……」
「……男はありなんじゃなかったっけ?」
「……タブーが多すぎ……て……」
「タブー?」
「……弟だし……男……だし…… 親の事……とか……和己だっているし……そもそも……仁、そんな気、ない、し……」
――――……こいつらって。
オレから見ると、両想い、にしか、見えねえんだけど……。
彰は、やっと少し認めてるのに、仁にはその気がないと思い込んで、最初から諦めてるし。だから前には絶対に進まないし。
仁は、もう前みたいになりたくないからって、彰から好きになってくれるまで、言わないって言ってるし。
……その気がないと思ってる仁に、彰が、自分から行くなんて、
99.999%…… いや、100%無い。って事だけは、確実なのに。
……て事は。
……絶対、交わらずに、
こいつら、ずっと、お互いを好きなまま、諦めながら、他の奴と付き合うとか……結婚するとか。していくんだろうか。
………なんか、すげえ、イライラすんなー……。もどかしすぎる。
はー、とため息。
無言で歩いてると、背中の彰は、どうやら寝たらしい。
……言ってしまいたい。
仁には、彰はほんとはお前の事が好きだって。認められないだけだって。
彰には、仁は前とずっと変わらずに、お前の事が好きだって。
――――……そしたら、進むんだろうか。
分からない。
……拗れすぎてて、破綻しそうな気すら、する。
仁が、認めさせようとすればするほど、彰は頑なになりそうだし。
彰は、仁の言葉を、そう簡単に信じられそうにないし。
……また二年前みたいに、離れる事になりかねない。
しかも、今度は、そのまま、ずっとになるんじゃないか。
拗れすぎてて、正解が見えない。
彰が、仁を好きだと認めて、 仁の所に自分から行くのが、一番良い。
……仁が言ってたのが、一番形としては、うまくいきそうな気はするけれど。
……どーやりゃそんな事に、もっていける訳?
酔ってたって、頑なに。
弟だからダメ、と、可能性の全てを、一言で切り捨てるのに。
こんなのを、動かすのが、オレの言葉っつーのは。
……かなり余計な事だと思うし。
はー、と息をつく。
しょうがねえのかな。
……このままいくしか。
こんな風に、拗れて、薄れていくしかない気持ちも、
世の中には……いくらでも、あるんだろうけど……。
――――……出来たら、こいつらには幸せでいて欲しいんだけどな。
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