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セカンドエッチ
『……ジェイド、…オレ…もうっ、』
(……フロ…ィド。、ぼくも、もう…)
『、、はっ、く、、ん。…っっくぅ!!』
…ぱたた。
勢いよく吹き出した白濁が自身の手と腹を汚す。それを用意しておいたティッシュで拭き取ると簡単に衣服を整え「…はぁ」と小さく息を吐きながら、僕は暫し余韻に浸った。
「……フロイド」
愛しい愛しい僕の片割れ。
先日、やっと身体をひとつに繋げる事ができた僕たち。 可愛い彼の、可愛らしさの欠片もない寧ろ凶悪なウツボに一瞬怯みはしたが。だがひと度自分のナカへと迎え入れてしまえば、この上もない充足感と快感になす術もなく翻弄されてしまった。
「……ああ、フロイド」
手近にあった彼の抱きつき用ぬいぐるみを引き寄せ抱きしめる。微かに香るフロイドの匂いを吸い込み、体の内側からフロイドで満たされていく感覚にうっとりとした。 …ずっとこうやって浸っていたい。けどそういう訳にもいかない。
「……そろそろ、フロイドが帰ってきますね」
腕の中のぬいぐるみを元の位置に戻して体を起こす。フロイドのベッドだからそこまで綺麗に整える必要はないだろうが、鼻のきく彼にここでナニをしていたのかバレたくはない。
(………いや、寧ろバレた方が僕の気持ちに気づいてもらえるでしょうか?)
身体を繋げてからどことなく僕を避けるようになったフロイド。彼からのいつもの抱きつき等はなくなり僕が近づくとさりげなく距離をとられた。
最初は気のせいかと思っていたけれど、常に僕の隣にいたハズのフロイドが最近は半歩先を行く。食事の時は必ずアズールが一緒で僕の対面にアズールが座りその隣にフロイドが座った。
『……フロイド。どうしてそちらに座るのですか?』
『ん~?今日はこっちな気分なだけぇ』
気分屋な彼にそう言われてしまえば、もうそれ以上聞くことはできない。アズールがちらりとこちらを見たが面倒事に巻き込まれたくない彼は特に何も言う事もなく食事を終えた。
それから数日経ったがフロイドの態度は変わらない。けど、僕の身体は圧倒的フロイド不足に陥ってしまった。
フロイドが欲しくて欲しくて欲しくて、堪らない。
そしてとうとう我慢が出来なくなった僕は、フロイドがラウンジのシフトで部屋にいない時に、彼のベッドで彼の匂いに包まれ自慰をシてしまったのだった。
「…足りないです」
マジカルペンを振り、やはり綺麗しておきましょう、と致した痕跡を消した。
(……フロイドはどうして僕に触れてくれないのでしょう)
自分のベッドと大差ない状態に整えたフロイドのベッドを見つめため息を吐く。
(…僕はこんなにフロイドに触って欲しくて、フロイドに触れたくて、、仕方がないというのに)
「……足りない」
「なぁにが足りないのぉ?」
ぽつりと溢した言葉に疑問符付きの返事が背後から返ってきた。振り返ると部屋の扉をばたんと閉めたフロイドが寮服の帽子を脱ぎこちらを見ている。
「…おかえりなさい、フロイド」
「ただいま~、ジェイド」
以前なら「つっかれた~。ジェイドぉ、がんばったオレをほめて~、よしよしして~」と抱きついて甘えてくるところなのだが、一定の距離を保ったまま上着を脱ぎ始めるフロイド。
「どうしたの?なんかあった?」
と、僕に近づく事なく心配そうに声はかけてくれる。
「何もない事が、ありました」
「……は?」
僕の返事に訳が分からず怪訝そうな顔になるフロイド。そんなフロイドに僕は訴えるような眼差しを向けてゆっくりと近づいた。
「…足りないんです」
「うん?ああ、さっきも言ってたねぇ。何が足りねぇの?」
「……大事なものです」
「…大事なものぉ?」
「…はい。とても大事なもの」
「なに?」
「フロイドにも関係あります」
「オレに?…なに?」
「分かりませんか?」
「分かんねぇから聞いてんじゃん」
呆れるフロイド。近づく僕をするりと躱すと、脱いだ上着をポイっとベッドに放りそのまま自身もベッドへと倒れ込んだ。
「………もーいい。めんどー、」
「……フロイド」
顔を枕にうつ伏せたままのフロイドに声をかける。が、フロイドは僕の相手に飽きたとでもいう風に微動だにしない。
「……傍に行ってもいいですか?」
「……………だめ」
はっきりとした言葉での、拒絶。
これにはさすがの僕も、僕の中の何かがキレる音を聞いた。
残りの距離をつめフロイドへの傍に行き彼の腕をとる。
「どうしてですか!」
「わーっ、なに?、え、傍に来んのだめっつったじゃん」
「そんな事聞けません」
「聞けよ!」
「理由も分からないのに聞きたくありません。理由を言って下さい」
「理由は、、ない!傍には来んな!」
「はい!!?、、いくらフロイドとは言えそんな我が儘、聞く事は出来ませんっ!!」
僕に腕をとられ顔だけこちらに向けていたフロイドを、グイッとひっぱり仰向けにする。それからベッドに乗り上げフロイドの腹に馬乗りになると、胸倉を掴んで唇を奪った。
角度を変え何度もフロイドの唇を貪る。頑なに閉じていた唇を舌で抉じ開け次に現れた歯列をなぞりくすぐると薄く開いた口内に侵入させる。そしてその奥のフロイドの舌を捕らえ、ぬるりと絡みつかせた。
「……、ふ、…ぅん、」
咥内を蹂躙する舌遣いに甘い吐息が零れ頭の芯まで蕩けていく。飲み込みきれなかった唾液が口の端しから溢れると首筋へと伝い落ちていった。
ちゅっと音を立て離れて行く唇がそれを追い舐めとる。その感触にそれをされているのが自分の方で、フロイドとの体勢がいつの間にか入れ替わっている事に今更ながらに気づいた。
「……………え?」
「………」
「……フロ…ィド…?」
見下ろすフロイドと視線が絡み、目元にじわじわと熱が集まってくるのが分かる。と、黙っていたフロイドが急に「あーーーっ、、もう!」と腹ただし気な声をあげ僕に抱きついてきた。
「なんでジェイドってそうなの?オレのガマン台無しじゃん」
僕の肩に頭をぐりぐりと押しつけ僕に対する不満をぶちまけるフロイド。…?…………我慢、とは?
「……あなた、我慢、していたのですか?」
「………ん」
「…何故」
「………」
「……フロイド?」
僕の肩口に顔を埋めたままでいるフロイドの髪に手の平でそうっと触れる。ぴくりと揺れた頭が僕の方へと顔の向きを変えた。
「…………だってぇ、ムリさせちゃったんだもん…」 「………ムリ、ですか?」
「……うん」
「…?…記憶にないのですが」
「……は?だってジェイドってば、イッた後気ぃ失ったんだよ?それだけ激しくしちゃったってことじゃん!!」
「…そうなんですか?すみません。気持ち良かった事しか覚えていません」
「…なにそれ。じゃあ気持ち良すぎてトンじゃったってこと?」
「そうなりますね」
「…………はじめてで?」
「フロイドが上手すぎたのでは?」
にこりと笑うと、フロイドはぶわっと赤面して「なんだよ、それっ」と口を尖らせた。
「………心配したのに」
「おや、ありがとうございます」
「………ガマンする必要なかったってこと?」
「そもそも頼んでいませんが?」
「、、!!」
目を見開き二の句を次げずにいるフロイドをほっぽり、僕はため息を吐く。
「……大体僕がどんなに寂しい思いをしていたかあなた分かってます?らぶらぶセックスをした翌日から愛するフロイドに避けられて悲しさで枕を涙で濡らす夜…可哀想すぎると思いませんか?」
「……カワイソウって。朝までぐっすり寝てたじゃん」
「触れ合いたいのに触らせてもくれない、抱きしめて欲しいのにはぐらかす、、そんな日が一体何日続いたとお思いですか?」
「…すげー日が経ったみてぇに言うけど三日だから」
「たった三日みたいに言わない出下さい!もう三日です!」
「うっ、そうかもしれねぇけど。もうごめんてぇ」
「ごめん、じゃすみません」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ、」
「償って下さい」
「…え、」
するり、とフロイドの首に腕を巻きつけ唇を彼の耳元に寄せる。
「三日分の交尾を。僕が満足するまで、シ、て」
ふう、と息を吹きかけるように囁くと、びくりと身体を震わせたフロイドが僕の腕を解き互いの額を合わせた。
「…煽るじゃん。いいよぉ、ジェイドの気の済むまでシてあげる♡」
ばちゅん、ばちゅん、、
肌と肌がぶつかり合う水音の混じった濁音が薄暗い部屋の中に響く。
ベッドにうつ伏せの状態で腰だけ高く持ち上げられた僕はフロイドの陰茎にナカを穿たれ必死で枕にしがみついていた。
「、は、、あっ、、ぁあっ、」
何度もナカを往き来するソレはただの排泄する為の器官を快楽を拾う場所へと作り変えていくようだ。
「…あは♡ ジェードのここスゲーね。オレのちんぽ孔いっぱい咥えこんでんの♡…ナカはぎゅうぎゅう締めつけてくるし、ちょーきもちいーよ♡」
がっしりと僕の腰を掴みナカの具合を確かめるように抽挿するフロイド。その声は特に機嫌のいい時のモノで、それがフロイドを受け入れる自分の胎内のお陰なのだと思うと胸もナカもきゅうっとしめつけられた。
「あ、締まった~」
「…や、……いわないで、」
「だって、きもちいーし。ジェイドもきもちいー?」
「………あ、……ん…。…きもちいい、です」
「よかったぁ」
「…あ、あ、……フロ…ィド」
「…なあに、ジェイド。もっとほしいの?」
「………もっと…ほしいです。…もっとシて、フロイド」
「あは。ジェイドってば、えっちだねぇ」
「………えっちなの、……だめ…ですか?…」
「え~? 、んふふ、全然いいよぉ。だーいすき♡」
一際大きくガツン、と奥を突き上げられる。
「!、、は、、あっ」
息がつまりそうな衝撃が背を弓なりに反らせた。 続けざまに奥をぐりぐりと擦られる。、と思うとずるりとナカから引き抜かれ、陰茎のカリの部分が抜けそうなところで、またばちゅんと衝かれた。
「、はあ、…っ、…!!」
「…ジェイドはぁ、浅いところとぉ奥。どっちがすきぃ?」
愉し気な声でフロイドはそう言うと孔から近い所をカリで引っかけるように擽り、次にぐいっと奥まで挿入させるとごつごつ、と奥の奥へと割り開くように突いた。
「!!、…や、…それやだっ、フロイド…!」
「……あ~、これはまだはやいかぁ。…もう少し慣れたらしようねぇ、ジェ~ィド」
一瞬強ばった体がフロイドが腰を引くのと一緒に力が抜ける。だがそれもつかの間、再び始まった抽挿にすぐさま快感の波に飲み込まれた。
「…は、…ん、あ、…っ…あ、…」
「………、…、」
「……あぁ、…い、……ん、ふろぃ…ど」
「……っ、………ジェ…、ィド」
後ろから抱きしめるように覆い被さってくるフロイド。腰を擦りつけ僕が逃げられないように体全体で押さえつける。その間もナカは激しく突かれ続け、逃げ場のない快楽に目の前がちかちかと点滅した。
「あ♡…あ♡…♡…ふろ♡…♡ふろぃど♡」
「はっ、はっ、、」と荒い息づかいのフロイドが僕の首筋に口づける。
「…♡…あ♡…いぃ♡…あ♡…ん♡」
ぢゅぅ、と強く吸われ、ちりっとした小さな痛みのような感覚があった。
「…あ♡…も♡…♡ぃ…く♡」
徐々に速くなる抽挿と激しい突き上げ。
ズン、と奥を穿たれたとき、フロイドの鋭い歯が人である今の僕の薄い皮膚を突き破った。
「あ、ああぁっ♡、、…♡」
ふ、と意識が浮上し目を覚ますと僕は自分のベッドに寝ていた。隣には寄り添うようにフロイドが眠っている。
「………ボクは?」
「……あ、ジェイド、、目ぇさめた~?」
僕の声で起きてしまったのか、フロイドが寝起きの蕩けたような声で聞いてくる。
「………すみません。オこしてしまいましたか?」 「んーん。だいじょーぶ。それよりジェイド、スゴい声だね」
言われてみて「あー、」と声を出してみる。
確かにスゴい声だ。
「ダレのせいでしょう?」
「オレのせいだねぇ」
悪びれもせずにぱっと笑うフロイド。
「あとこれもぉ、」
手を差しのべて触れてきたのは、フロイドが僕を噛んだ首筋。そこには大きめな脱脂綿がカットバンで貼りつけられていた。
「いっぱい血出てびっくりした!もー噛まないからぁ許して…ね?」
これにはちょっと反省したらしくしょぼんとした顔で上目遣いで見てくるフロイド。
…可愛いから許しましょう。
「ツギはカゲンしてくださいね」
「は~い」
「コウビはカゲンなしでいいですよ?」
「は、、ええ~っ?!今回も気ぃ失ったのに?」
「はい。ふふ♡」
「懲りないねぇ」
「クセになりそうです♡」
「もぉ、ジェイド大好き♡」
「ボクもダイスキですよ、ふろいど♡」
顔を見合わせくすくすと笑う僕ら。 目を閉じると、次の約束のキスを交わしたのだった。
おしまい。
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