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第64話
あれから一年経った。
「リン、明後日からのスケジュールを追加しておいたから後で共通カレンダー確認しておいてくれ」
「はいかしこまりました、社長」
古田の運転する車の後部座席でパンをかじりながらパソコンと睨めっこしている。
仕事の方は何とか順調で一護 の人脈のおかげで社員の人数も増え仕事もうまくいっている方である。
今まで人の上に立つことを避け、人も働くことを避けていた寧人 が今では社長。
41歳となった今、部下たちに指示をしながらも自分からも足を運び多くの店とその店の料理を食べたい人をつなげる仕組みを構築するために奔走している。
「副社長はまたサイクリングだそうで……」
「今度はサイクリングチーム作るとか言って一週間でメンバー集めたからびっくりしちゃったよ」
「いいんですか、今日は……」
寧人は共通カレンダーを見る。花のアイコンが先頭についている。
「覚えていてくれたんだね、リン……」
「僕は秘書ですから……これくらい……」
古田は運転しつつも少しはに噛む。
「このあと少し時間空いた……どこかで休みたい」
「……かしこまりました……ではあの駐車場に。大きなモールですので昼休憩、としておきましょう。フィットネスもありますし先にそこへ行きましょう」
「ああ……」
◆◆◆
「あんっ……社長っ……今日はそこから攻めるの?」
「首筋も弱いもんな……リン。お前の太い首、血管……どくどくと流れる血液……」
「……キスマークはつけないでくださいね……はあっ……て言ってるさなから……」
寧人は古田の首筋に吸い込み、赤く跡がついた。
そしてそのまま胸元まで舌を這わせて乳首を責める。
「社長ううっ……もっと、もっと激しくっ」
「リン、声を出せ、もっと!」
「んんんーっ、はぁっはあっ……」
寧人と古田はあれほど一護に関係を持つなと言われたのにも関わらず、再燃してしまったのだ。
寧人はもちろん愛してるのは一護だが、体は古田を覚えていた。そして古田からの猛アピールで再開してしまった。
GPSやボイスレコーダーは付いているものの、電源を切ればボイスレコーダーは機能せず、今回のように会社が提携している店や複合施設の駐車場に車を置けば仕事だと言い切れるのだ。
そして一護も意外と執着はしていない。わざと二人を泳がせているのだ。
それを知ってか二人は合間合間に関係を持つ。
そして相変わらず二人は助手席で愛を交わす。毛布を被り、その中で激しくねっとりと……。
「リン、入るぞ……」
「うん、おねがいっ……」
「んっ!」
「あああっ……あんっ!」
「んっ! んっ……」
「お願い、今日はもっと激しくっ……」
「こうかっ、こうかっ?」
「ああああああっ!!!」
「リンっ、リンっ……」
「寧、寧人ぉおおお」
激しく車内は揺れる。そして二人は同時に果てて手を握り合い、キスをする。が、古田は寧人の左手だけを強く握る。
「どうした、リン……痛かったか?」
古田は首を横に振る。そして寧人に左手を目の前に出す。寧人の左手薬指には輝く指輪。寧人と一護の愛の証の指輪である。
「今日はプロポーズ記念日なのに、昔の愛人……現秘書と日中からセックス……最低だけど最高……」
古田なニヤッと笑う。
「何だよその言い方。最低で最高、か……僕は最高だよ」
「調子に乗っちゃだめだよ、前みたいに大変なことになったら。ねぇ、社長……」
「わかってるよ、リン。このあとのスケジュールはわかってるかい」
「もちろんですとも。三丸デパートの花屋に行って花束を、ケーキ屋でチョコケーキを、それをグレイスホテルまで運び最上階のレストランで一護副社長と会食のあとスイートルームで宿泊。僕はホテルに送迎後直帰」
そう、今日はプロポーズされてから一年である。
「このすべてを愛人にやらせる社長は本当最低……」
古田はなんだかんだで拗ねる。
「最高な秘書だ……あとでたっぷりと褒美を」
「褒美なんていらない……」
「じゃあなにが欲しい?」
寧人は焦る。実はやめようやめようと思ってはいたもののずるずる引きずってしまっていること。だが引き返せなかったのだ。
「一生社長のそばにいられる権利……」
と、古田は寧人を抱きしめて引き寄せた。
「あうううううう……」
寧人は推しに弱いのも直ってないようである。
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