六月初旬。 初夏が終わり暑さが増してきつくなるこの頃。冷房が効いていて快適な本屋の中で僕の頭には、「慣れた頃が1番危ない」や「油断大敵」という言葉が僕の頭の中に思い浮かんできた。 あっ、ヤッベ そしてそれに対しての感想は少しマヌケな感じだがそれは小さな問題だったり軽い問題だからではなく、現実逃避の為に軽く考えてるだけだ。 「よう、偶然だな～木鈴」 僕が現実逃避をしてる間に喋りかけてきたのは僕の通う高校のクラスメイトの遠藤君だ。運動も勉強も万能で誰に対しても分け隔てなく常に笑顔な頼れる副委員長だ。僕は関わりが少ないけど凄くいい人だと思う 「えっとそうだね。遠藤君」 やばいやばい！どうしよう。まさかクラスメイトと会うなんて。今まで店内で見かけても隠れたりしてやり過ごしてたのに、今まで問題なかったし別に大丈夫でしょって大して周りを気にしなくなった今日このタイミングで出くわすとか最悪だ！ ……いや、落ち着け僕。そもそもこういう時の為の言い訳を考えてきたじゃないか。そうだよそうだった。初めての事だから焦って忘れてたけど、僕は元々準備する性格だから大丈夫！ よし落ち着いてきた。もう大丈ーー 「とりあえずそれ買ってきたらどうだ？買うの楽しみにしてたんだろ？」 いや待って！お願いだから上げて落とす方式はやめて！いやまぁ、僕が勝手にそう考えてたから君に非がない事は分かってるんだけどね！ 「え？あ、あ！そ、そうだね。と、とりあえず会計に行ってくるね。」 そう言って僕は会計へと向かっていく。今の僕なら競歩の選手に慣れるんじゃないかな。金メダル取っちゃうかも～。なんて2度目の現実逃避をしている （やばいやばい！ここのコーナーにいた事もこの本を持ってたことも、もしもの時の為に考えておいた言い訳があるからまだ何とか誤魔化せたのによりにもよって買うのを楽しみにしてた事を聞かれてたなんて。これもう絶対無理だよ。） 油断大敵。その言葉が再び僕の頭に思い浮かぶ。さっきよりもより鮮明に。そして思い出す。僕は変なところでよくドジをかますということを 今日の天気は快晴ということもあり蒸し暑く外にいると自然と汗が噴き出てくる。その為冷房の効いている本屋の中は快適だ。だがそんな快適なはずの環境に僕はいるのに冷房は僕の体を涼ませるどころか体を芯から冷やすような錯覚を感じるのに肌からは汗が噴き出ている。 ………お、おかしいな僕は今鳥肌が立ってるのに、汗が止まらないな～ そして僕はそんな事態の原因である自身の手元の漫画へと意識を向ける。僕の手にあるのは恋愛物のジャンルのものだ。だがその表紙に描かれている物は世間一般でイメージされるものとは違う。 恋愛ものの漫画のイラストっていうと大体は男性キャラか、女性キャラのどちらか又はカップルの2人が描かれている。そして僕が持っている本の表紙にはカップルの2人が描かれている。だが、男女ではなく、男性だけが描かれているのだ。 ここまで言えば、もうお分かりだろう。僕が買うのを楽しみにしていた作品は恋愛ものは恋愛ものでも男同士の恋物語の作品。BLであると。 そしてここまで言えば当然の帰結として察するだろう。何を隠そう、いや隠せてないんなけど今絶賛クラスメイトに目撃されたばかりだが、実は僕は腐男子なのだ。