17 / 20
第17話 確認はしっかりしないとね
翌日
昼休み。
「空これ昨日借りた奴な。見終わったから返すわ」
そう言って響君は昨日僕が渡した漫画を入れた紙袋を差し出してきた。
「え、もう全部見終わったの?早いね。」
「あぁ、BLじゃなくても恋愛もの自体をあんまり事はなかったけど、どれも結構面白かったぞ」
正直昨日だけで全部見終わるとは思ってなかった。昨日の昼休みに一冊読み終わったとは言え、あとまだ4冊は残ってたのに。
「それが本当紹介した手前凄く嬉しいね。全部読んだって事は『叶わなかった思いの続きを』は3巻とも全部読んだんだよね」
「あぁ、そうだぞ。いやぁ、ページ数の割には結構すらって読めたな。それにしても3巻目でやっと清永の気持ちとか考えとかが出てきたな。一二巻の頃からどう見ても両思いっぽいのに何を考えてるのか分からなくてモヤモヤしたんだよなぁ。」
「あー僕もそれ思った」
清永が明らかに広瀬の事を意識してるって示唆する描写があるけど、肝心の広瀬が何を考えてるかは書かれなかったんだよね。それが3巻目になってやっと明かされる
「それで3巻めでやっと清永の気持ちとか分かったから納得は出来ないけどまぁ、多めに見ることはできるくらいにはなったかって感じだな。友達に戻ろうと渋川に声をかけようとしてるのにそれ無視した上に彼女を作ってこれでも主張したのはマジでどうかと思うけど」
「本当にそれなんだよね。あと個人的には清永に告白を振られた後に同じゲイ同士で友達になった西村と付き合って欲しかったんだよね。」
「あはは。確かにそっちの方が自然な感じがするよな。でもあれはあれで面白かったけどな。まぁ、最後のシーンにさ少し驚いだけどな」
「…?え、最後何か驚くような展開とかあったけ?」
最初の方とか中盤辺りだとそうなるのか!?って思うような事はあっても最後の方は順当だった気がするんだけど
「いや、俺エロ系の奴とか見た事なかったらな。まさかそういうの初めてがBL漫画になるとは思わなかったわ」
「………は?」
……………その瞬間僕の体と思考は固まってしまった
別に聞こえなかった訳じゃない。脳が言葉の理解を拒んでるんだ。
今響君はなんて言ったんだろう。分かってる。けど分かりたくない。
あ、あれー?お、おかしいなぁ。読みやすい作品にする為にそういう描写がない作品を選んだはずなのに。
「えっとマジ?」
「あぁ、マジマジ。俺そういうのに興味湧かなかったからな。友達と仲良くしてる方が好きだしな」
あっこれ僕が何の事を聞いてるか分かってない奴だ。日本語って難しいなぁ。受け取り方で意味が違って来るんだから。
ちょっと馬鹿な方向に思考がそれたけど、何とか思考を元に戻して正常な思考を再開させる。
そしてそれと同時に僕はさっき返してもらったばかりの紙袋から『叶わなかった思いの続きを』の3巻を恐る恐る取り出す。
そして最後の方のページを見てみる。『叶わなかった思いの続きを』これ確かコミックスになる前はそういうシーンはなかったけど、もしかして追加されたのかな。
僕はコミックスになる前の最後のページのところを開き、重く感じる指先をなんとか動かしてページを開くと僕の予想通り知らないページが出てきた。台詞は特に見ずに、どんなシーンが描かれてるかだけ確認をしてページを捲っていく。
そうしていくと響君が言っていたシーンのページが確かにあった。………今度からちゃんと最後まで読み切ろう。
「お、おーい空大丈夫か?」
僕が1人小さな決意をしていると響君が心配そうな顔で僕に声をかける。うん。まぁ、そういう反応するよね。
だって僕の行動って客観的に見たら話の途中で急に本を取り出して、多分真剣な顔で本を読み出しと思ったら読んでいる内に顔色も悪くなっただろうからそりゃ心配されるよね。でも、とりあえずは
「えーっと響君」
「ん?どうした?」
「本っ当にごめん!ネットで掲載されてる時はこういうシーンなかったんだよ。でも本になったら追加されてたみたい。そういうシーンがあるって分かってたら紙袋の中に入れてなかったから!だからわざとじゃないんけど、それでごめん!」
「ん?何で謝るんだよ」
必死に弁明と謝罪をする僕に響君は心底分からないと言った声色と顔色だった
「えっ、いやその嫌じゃなかった?男同士のあぁ、いうシーンとか。気持ち悪いとか思わなかった?」
「え?いや、別に俺はそうは思わなかったけどなぁ。」
「そ、そっか。ならいいんだけど」
よ、よかったー。にしてもこの前響君とバッタリ会うって言うドジをやらかしたばかりなのにまたやらかすと何してるんだろう僕は。
まぁ、過ぎた事を考えても仕方ないよね。幸いにも響君は気にしてみたいだけど何かあぁ言うシーンのある漫画を渡してしまった事にどこか恥ずかしさを感じるんだよね。
そう1人内心考えていると響君に声をかけられる
「っていうか空は嫌なのか?」
「嫌って何が?」
やばい考え事してたから何の話をしてたか覚えてない。
「だから男同士のあぁいうシーンとか見るのは嫌なのか?気持ち悪いとか感じるのか?」
「えっいや僕は別にそうは思わないけど見ないようにはしてるかな」
「ん?BLが好きなのにあぁ言うのは見ないのか」
「うっ、だって僕も響君と同じでああいうのに興味がなかったし、僕物語に熱中しやすいから見ててなんだか恥ずかしくるんだもん」
そう言った僕に対して響君は目を丸くして珍しい物でも見たと言いたげな顔をしていた。
「へぇ、意外だな。俺はてっきり好きなのかと。」
「仕方ないじゃん!僕そう言うのに全く耐性ないんだから!なんか悪い!?」
「あはは。怒るなって別に悪くねぇよりっていうかそれなら俺も似たようなもんだろ。大して興味がないんだから」
「………それもそう……なの…かなぁ~?」
恥ずかしくて見ない僕と大して興味がないから今まで見て来なかった響くん。理由は違うけどお互いに特に見なかったから似たようなものってことかな。
……え?それって似たようなものなのかな何か違くない?
「まぁ、細かい事は気にするな」
「う、うん。分かった」
正直言って納得はしてないけどこれ以上深く考えるのはやめておいた。なんだけ自分から墓穴を掘る事になるなりそうな予感しかしないしね。
うぅ、恥ずかしくて目を合わせられない。
僕は目を泳がせて響君と視線を合わせないようにする。
「あははっ別に気にしなくてもいい大丈夫だろ」
「べ、別に気にしてはいないよ。」
「いや、どう見ても意識してんじゃん」
「そ、そんな事より!響君って最近アニメとか見始めたんだよね!どうして見ようと思い始めたの?」
このままいくといじられそうなので少し強引だけど話題を空下。
しばらく響君にBLの話題は封印しよう。わざとじゃないとは言え変なミスと多分言わなくてもいい事を言った気がする。よし忘れよう。
しばらく記憶の奥底にしまっておこう。いや完全に忘れるとまた失敗しかねないし、少し浅いところにしよう。
「ぷははっ。めっちゃ強引だ」
「えっと、なんの事だろう」
「いや、明らかに目が泳ぎまくってるから。まぁ、別にいいけどな」
ふぅ、なんとか話を逸らせそうだ。よかったぁ
ともだちにシェアしよう!