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第20話 生贄2人と奇妙な友達
放課後。
授業が終わり各々が帰り支度を始める中で一際早く、そして楽しそうに帰り支度を終えた人がいる。
「それじゃあ行こっか!悠真、海斗」
そう。昨日降臨されて昨日の内になんとかお鎮まり頂いた魔王様。ではなく、僕らのクラスの頼れる委員長の伏見歩君だ
「「………はい」」
そしてご機嫌な歩君とは対照的に見てわかるほど気落ちした悠真君と海斗が教室を出る歩君の後ろをついていく。
教室を出て行く3人を僕は後ろから見届けいたけど、肩を落としトボトボと歩いていく2人の姿は哀愁を感じさせる
「大丈夫かな。海斗と悠真君」
あの温厚な歩君が怒るって事は2人の自業自得なんだろうけど、流石にかわいそうなので心配になってしまう
「あっはは。大丈夫大丈夫!」
そんな僕に弘君は気楽な調子で答えた。弘君と歩君は特に仲がいい気がするからそんな弘くんが大丈夫だって言うなら本当に大丈夫かもしれない。
「弘君がそう言うならそうなのかもしれないけど。でもやっぱり不安だよ。あんな風になった歩君僕、初めて見たし」
「まぁ、普段怒らない人が怒ると余計に怖くなるよね。特に歩は普段とのギャップが激しいし」
「うん。正直凄く戸惑った。だって顔だけはいつもの歩君なのに雰囲気だけは全然違って違和感が凄かったからね」
始めて見た時は本当に歩君なのか疑ったなぁ。だっていつもの穏やかな雰囲気がその逆で教室全体が重苦しくなる程の圧が出ているのに顔だけはいつもの優しい笑顔でそのギャップが余計に怖かった
「確かにあれはやばいよね。まぁ、でも大丈夫だよ」
「なんだか確信してる感じだね。何か理由があるの?」
相変わらず気楽にそしてどこか自信満々に言う弘君に何か根拠でもあるのかと気になった僕は思った事そのままに聞いてみた。
「だってあれ多分わざとだよ」
「………え?」
わざとって一体なんのことを言ってるんだろう。何に対して言ってるのかは分からないかど、話の流れからしてあまりいい流れがしない。
「えっとわざとって何が?」
「んーとさ。悠真と海斗が歩にケーキを奢る流れなったでしょ。あれ多分そうなるようにわざと話を持ってたんだよ。」
「えっ、なんでそんな事を?」
というかそれが本当だとしたら歩君って実は策士?もしかして結構怖いのかな。まさかあの魔王状態の方が素だったりしないよね
「今回マジギレしたからしばらくはあの2人が大人しくさせるる為にお灸を吸わせる為じゃないかな。」
「あーなるほど。そういう理由だったんだ」
一人で勝手に歩君の事を邪推しちゃったけど、弘君の話を聞く限りどうやら杞憂だったようだ。ふぅ、よかった
にしてもなんていうか歩君はお母さん見たいというか、保護者みたいというか前から思ってたけど結構世話焼きなのかも
「なんていうかお母さんみたいだよね」
どうやら弘君も僕と似たような事を考えていたらしい。
「いや、お母さんって。まぁ、世話焼きではあるとは思うけど」
「あと純粋に歩がたのし………うわぁっふん!?あ、ごめん空君!今のなしで!」
弘君はまだ何か続けようとしていたけど、その言葉の先は続かなかった。何故か喋っている途中で急に弘君が悲鳴を上げ出したからだ。
なんか久しぶりに聞いたかもしれない。弘君の犬っぽい悲鳴。それにしても急にどうしたんだろう。
僕が疑問に思ってると僕達に声がかけられた。
「おーい弘。空君に辺な事を吹き込まないでよ。」
そういいながら僕達の方に向かってくる歩君が弘君の肩越しに視界に入ってきてそのまま弘君に話しかける
何故だろう。歩君の表情はよく浮かべることの多い少し困った様な笑顔なのにどこか昨日の黒さを思い出させる。
……昨日の魔王様の印象がまだ頭に残ってるのかな。きっとそうだよね。だってなんか『余計な事を喋るなよ』的な副音声が歩君の顔から聞き取れそうだし。彼がそんなことを言うはずないし、きっと気のせいにに決まってるよね
「いや、別に変なことは言ってないよ。ただ歩が世話焼きないい奴だって話してただけだし」
「いや、それ以外の事も言いかけてたよね」
「そそ、そ、そんな事よりどうしたの?ケーキ屋行くんじゃなかったの?」
弘君は口では否定しているけど目が泳いでるし、そもそも吃っているから明らかに嘘だって分かる
けどそれはともかく、確かに何で歩君がここにいるんだろう。さっき教室を出たばかりなのに
「うん。そのつもりだったんだけどさ、弘に見せようと思っていたのがあったのを忘れてた事を思い出してさそれを見せに戻ってきたんだよ。はいこれ」
そう言って弘君は自分の携帯を弘君と僕に見えるように向けて差し出し、弘君に渡した。
「あっ、空君も見る?」
「えっじゃあ、せっかくだし」
「うん。見てみて」
歩君に勧められたので弘君が持ってる携帯を覗き込むと複数の猫や犬の写真が写っていた。
えーっと……かわいいおバカなわんちゃん猫ちゃん特集?
「これ結構かわいいでしょ。この前偶々見つけたんだけど結構癒されるんだ。これを教えようと思ってさ」
そう言った歩君の顔は穏やかなものだった。写真は段ボールの中に入って動けなくなったり、ハンガーが首に掛かって取れなくなったネコや便器にハマってしまった犬など歩君がおすすめするだけあっていい写真ばかりだ。どれも見てるとほっこりした気持ちになる
「へぇ~確かにどれも可愛くて癒されるね」
「そうでしょ空君。ねぇ、弘もそう思わない?」
「そ、そうだね~確かにかわいいね。」
あれ今一瞬しか見えなかったけどなんか弘くん苦虫を噛み潰したみたいな顔をしてた?まぁ、見間違えだろうけど。こういう写真を見てそんな表情を浮かべるなんてそうそうないしね
そう思っていると弘君は何か思い出したかのように声を上げて僕はこの後の予定を聞かれた
「あっ、そうだ。空ってこの後暇?」
「え?うん。暇だけど」
「よし、じゃあ歩達はこの後またケーキ屋に行くだろうし、仲間外れ同士、僕の家でスマ◯ラでもやろう!」
「えっ、急だね。まぁ、いいけど」
ゲームとかは好きだしね。本当はまた響君に渡す用のBLを選ぼうかと思ってたけど、今日のミスからしばらく封印する事にしたからそれもなくなったしね
「よし、じゃあ行くぞ!」
そう言って弘君は僕の腕を掴んで歩き出した。
「うわっ!?急に引っ張っらないでよ」
「あはは。ごめんごめん。じゃあそう言う事でじゃあね歩」
「あっ、また明日ね歩君」
「うん。気をつけてね弘、空君」
弘君は歩君に声をかけた後は少しだけ足速になって玄関に向かう。
「弘くーん。そんなに急がなくてもよくやい?」
「いやー、だって早く着いた方がその分沢山遊べるじゃん。」
「まぁ、それはそうだけど」
なんだか今の弘君は違和感を感じるんだよね。表面上はいつも通りなんだけど妙にそわそわしてるように見える。
それにいつもの弘君なら喋りながらゆっくり帰ると思うし、仮に早く遊びたいなら僕の手を引っ張ったりせずに少しだけ先を歩いて「は~や~く~」って言ってる来ると思うんだよね
「他にも何か理由があったりしない?」
「いや、それだけだよ。ただ今日は何となくそう言う気分だったんだよ」
「そ、そっか」
他に何かあるんじゃないかと思って聞いてみたけど、あっさりと否定された。いつもの歩君だったらこの辺りでボロを出すから何かあるんじゃないかと思ったんだけど
この様子だと本当に何もないのかな?ただの気まぐれって事?まぁ、これ以上は考えても分からないし、いっか
「ボソっ(歩が地獄耳なの完全に忘れてたな)」
「え、ごめん何て言ったのかな。よく聞き取れなかったからもう一回言ってもらっていい?」
「いやーどのキャラを使おうかなお思ってさ。」
「もう、考えてるの。早すぎない?」
まだ弘君の家にも着いてないのに。そんなに今日はスマ◯ラをしたい気分だったのかな
「そんな事はないよ!というわけで直ぐに行こう!ダッシュで行こう」
弘君は水を得た魚。というよりもリードを離してしまった犬のように走り出し、僕を置いてドンドンと離れていく
って呑気にそんなこと考えてる場合じゃない!
「えっ、ちょっ、待ってよ!?」
直ぐに僕も追いかけるけど弘君ってクラスで1番速いんだよね。陸上部で短距離の選手がいるのにその人を押さえて1番だし。
僕も足が速い方だけどさすがに弘くんほどじゃない。だから必死で弘君を追いかけるけど距離は一向に縮まらない
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