24 / 192
透る雫 8
空気を求めて開かれた口を塞ぎたい衝動を堪えながら、翠也の未熟なそこが吐精するまで刺激を与え続けた。
突っ伏し泣き続ける彼の傍らで、すっかりぬるんだ冷やし飴に口をつける。
さきほどあれほどうまいと思ったそれは、どこか苦みを伴う後味の悪いものになっていた。
「っ……ぅ、ぅ 」
他者に力ずくで促された射精行為に、翠也は着物を乱れさせたまま怯えて震えて……
何とも言えない罪の感情に苛まれながら、その着物の裾に触れた。
「ぅ っ……」
白桃のような頬に真珠の玉を転がし、翠也の濡れた目がこちらを見る。
その目を見詰めつつ、利休鼠の裾に口づけた。
「ぁっ……」
その肌に触れてもいないのにびくりと体を揺らす。
「う、……卯太朗さ……どうして、こんな……」
「すまないとは思う。けれど、謝罪はしないよ」
乱れた着物から覗く石膏の白さの肌を、
吐精し淡く色づき濡れそぼるそこを、
震える体と、その奥にある温もりと才能が欲しいと思う。
「 ────君が欲しいから」
翠也はわずかに口を開いたけれど言葉を発することはない。
薄いけれど官能的な唇に触れたいと焦れ始めた頃にやっと小さく「僕が?」と零した。
静かな問いかけに、頭を垂れて着物の端に触れる。
そのまま、斬首を待つ罪人の気分で彼が動くまで項垂れ続けた。
遠く鳴く蝉と、
微かなしゃくりと、
汗の滴る音のみの、気の遠くなる時間が過ぎる。
やがて、しゅっと衣擦れの音がして手の中から着物が消えた。
「 ────すみません」
返されたのは謝罪の、いや、拒絶の言葉。
「僕は、その……男女のことすらわからないのだから、返事のしようがない」
震えのためかおぼつかない手つきで着物を直す。
隠されて行くその体を繋ぎ留めたくなるのを堪え、俺は翠也の言葉に頷いた。
逸らすように背を向けられて、胸が苦しくなるような奇妙な絶望感に唇を噛む。
「この、……こんな行為が良しとされるのかすら 僕にはわからない 」
小さな肩の震えを抱き締めようとする前に、彼は「失礼します」と告げて工房を出て行ってしまった。
ともだちにシェアしよう!