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透る雫 8

 空気を求めて開かれた口を塞ぎたい衝動を堪えながら、翠也の未熟なそこが吐精するまで刺激を与え続けた。  突っ伏し泣き続ける彼の傍らで、すっかりぬるんだ冷やし飴に口をつける。  さきほどあれほどうまいと思ったそれは、どこか苦みを伴う後味の悪いものになっていた。 「っ……ぅ、ぅ  」  他者に力ずくで促された射精行為に、翠也は着物を乱れさせたまま怯えて震えて……  何とも言えない罪の感情に苛まれながら、その着物の裾に触れた。 「ぅ  っ……」  白桃のような頬に真珠の玉を転がし、翠也の濡れた目がこちらを見る。  その目を見詰めつつ、利休鼠の裾に口づけた。   「ぁっ……」  その肌に触れてもいないのにびくりと体を揺らす。 「う、……卯太朗さ……どうして、こんな……」 「すまないとは思う。けれど、謝罪はしないよ」  乱れた着物から覗く石膏の白さの肌を、  吐精し淡く色づき濡れそぼるそこを、  震える体と、その奥にある温もりと才能が欲しいと思う。 「  ────君が欲しいから」  翠也はわずかに口を開いたけれど言葉を発することはない。  薄いけれど官能的な唇に触れたいと焦れ始めた頃にやっと小さく「僕が?」と零した。  静かな問いかけに、頭を垂れて着物の端に触れる。  そのまま、斬首を待つ罪人の気分で彼が動くまで項垂れ続けた。  遠く鳴く蝉と、  微かなしゃくりと、  汗の滴る音のみの、気の遠くなる時間が過ぎる。  やがて、しゅっと衣擦れの音がして手の中から着物が消えた。 「  ────すみません」  返されたのは謝罪の、いや、拒絶の言葉。 「僕は、その……男女のことすらわからないのだから、返事のしようがない」  震えのためかおぼつかない手つきで着物を直す。  隠されて行くその体を繋ぎ留めたくなるのを堪え、俺は翠也の言葉に頷いた。  逸らすように背を向けられて、胸が苦しくなるような奇妙な絶望感に唇を噛む。 「この、……こんな行為が良しとされるのかすら  僕にはわからない  」  小さな肩の震えを抱き締めようとする前に、彼は「失礼します」と告げて工房を出て行ってしまった。

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