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るり 13

 口の端から零れた白濁の液体を舐め取りながら笑うるりは、老獪な娼婦のようだ。 「  ぁ!」  ぐいっと引っ張られてるりの体が玄上の大きな体の下に消える。  大きな男に圧しかかられ、思うままに唇を貪られる様は野獣に食い殺される少女のようにも見え、それを見ているだけで崖の縁に立たされているかのようなぞわぞわとした不安感が胸を揺さぶった。 「るり、中でいいな?」 「んっ」  細い腕が許しを表すように猛々しい背に縋りつく。  玄上に抱き締められて、男娼としての表情ではない心底嬉し気なるりの顔に、後ろ手を突いてはぁと大きく息を吐いた。  激しく胸を上下させてるりと玄上が寝転がる。  二人にそうされてしまうと、自分一人座っているのもなんだか座りが悪くてごろりと玄上と反対側に転がり、呆けているるりの作り物のような瞳を覗き込む。  静まり返った、波紋のない凪いだ湖の色だ。 「美しい、な」 「だろう?」  汗で乱れたとしても輝きを失わない髪と白い肌。  玄上にくすぐられるように頬ずりされると、くすぐったそうに身を捩りながら接吻を強請るその背は、蛇のように艶めかしかった。  気怠い体に活を入れて身なりを整えていると、玄上がるりに金を握らせているのが見える。  不本意とは言え楽しんだ身なのだからと、俺も金を渡そうとすると玄上に押し返されてしまった。 「今日は俺の奢りだ」  今日とつくところを考えると、また来てやれと暗に言っているのだろう。  手で髪を梳いているるりにちらりと目をやり、こんなことが二度とあるわけないだろうと胸の内で玄上に毒づいた。  どんなに美しくとも、どんなにそれが名器だとしても、翠也と比べられるようなものではないからだ。      掘っ立て小屋を出ると日がずいぶんと傾いていることに気がついた。 「  っ」  翠也には「ちょっと出てくる」としか言ってこなかったし、すぐに帰るつもりでいたのに……  鼻歌を歌い、ご機嫌な様子で隣を歩く玄上を睨みつけ、痛み止めを貰った段階で帰るべきだったと、どうしようもない後悔に奥歯を噛み締める。  今日は翠也の傍についていてやりたかったのに……  文句の一つでも言いたげな俺に気づいたのか、玄上は鼻歌を止めてこちらを見下ろしてきた。   「あの目がな、いいだろう?」 「ああ」  蒼さを滲ませる瞳を思い出すと、ざわりと背中が騒ぐような気になる。 「俺も気に入っている」  そう笑うが、きっと俺の見ている蒼い瞳と、玄上のそれとではまったく別物のはずだ。  るりが信頼を寄せて、触れてもらえて嬉しいと感じている時の瞳は、玄上しか知らないはずだから。  この繊細さの欠片もないような男はそれをわかっているのか……  るりのような外見の人間が金を稼いで自力で生きて行くことの難しさはわかっているつもりだが、あんな目を向けるるりをこんな境遇に置いておくことに玄上は何も思わないのだろうか?

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