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世界を半分
魔王と勇者の戦いが終わろうとしている。
瘴気が濃い魔大陸を乗り越え、ついに勇者は魔王の根城にたどり着いたのだ。
「ここかっ!」
勇者によって、重厚な造りの扉が蹴り開かれる。
「よくここまで来た。勇者よ。……仲間はどうした?」
魔王の歓迎に間が入る。仲間はと聞かれた通り、勇者はただ一人であった。
「死にたくないと言って、帰っていったよ。お前くらい俺ひとりで大丈夫だ」
「ふふふ、自惚れもそこまでにしておくんだな」
「問答無用!」
勇者は剣を構えると、魔王に襲いかかった。
「なかなかやるな。勇者よ」
「なんだ」
「問答無用ではなかったのか? ふふふ、世界の半分をやるから終戦としないか」
「なんだそれ、いや、待て……」
勇者は混乱したのか攻撃をやめた。
「お仲間もひどいものだ、たったひとりで魔王に挑まさせるなんて。そんな仲間のことなんて気にしなくていいのでは?」
「どうせ甘言で騙そうとしているんだ」
「世界の半分をやるといったが、私は本気だぞ。」
「……」
「どうだ?」
「分かった。世界の半分は俺にくれるのだな」
「ああ、煮るも焼くも自由だ」
「お前なんかと違ってそんなことしない」
「ほう、我は意外と優しいぞ」
「はっ、どうだか」
こうやって世界の半分は勇者のものとなった。世界は大混乱したらしい。
勇者をひとり置いていった元仲間も魔王との戦いの場にいなかったことがバレ、国に責められた。
こうして勇者と魔王で世界を半分にしたこのまま世界は続くかと思われた。
しかし、いま魔王は混乱している。
「どうして、ここにお前がいるのだ。……勇者よ」
魔王も混乱する通り、魔王の目の前には勇者がいた。それも寝転がっている魔王の上に馬乗りで。
ついでに言えばここは魔王の寝室である。
「どうしたもこうもない。」
「それならどうしてこんなことをする。こちらは、今すぐ退去願っても構わないんだぞ」
そう言うと、左手に集めていた魔力を見せびらかす。
「あなたにある提案が有る」
「なんだ、言ってみろ」
上目遣いで魔王が勇者に言う。勇者は小声でつぶやく。
「……この格好はヤバいな」
「なんだ?もう1回言え」
「それはいいんだが、提案が有る」
「それはもう聞いた。だからなんだ?」
「お前がくれた世界半分だが」
「今更取り消すと言っても遅いぞ。世界の半分は我のものだ」
「たしかにそうなんだが。もう半分手に入る簡単な方法を見つけたと言ったら?」
「そんな方法があるのか!よしお前を殺せばいいんだな」
「違う。どちらかが死ぬような方法ではない。簡単な方法だ」
「ほう、それは?」
「オレとオマエが結婚すればいいんだ」
「なんだと!……それは、いやイイかもしれない」
「だろっ!魔王ならそう言ってくれると思った!それに配下の奴らに結婚を勧められていたんだろ。だったらオレでよくね?」
「世界のもう半分も手に入るから、一石二鳥であるな」
「じゃあ、そうと決まれば」
勇者の手が魔王に迫る。瞬間、その手を振り払われる。
「なにをしておる」
「いや、結婚するならこっちもしてもいいだろ」
「結婚すると決まったが、まだ結婚していない」
「もうわかったって」
こうして世界の半分同士はくっつき元に戻った。
魔王と勇者も末永く仲良く暮らしたとさ。
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