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わがままドッキリ✦side秋人✦1

◆この先の番外編には他作品『セフレなんて嫌なんだ』の京×榊のネタバレが含まれております。ご注意ください◆ 「なあ、蓮くんってさ。怒ったことあんの?」    今日は京と二人でトーク番組に出演するため一緒に楽屋入りをした。それぞれ楽屋が与えられたのに、京はずっと俺の楽屋でくつろいでいる。 「なに突然。前にも言ったけど俺たちケンカ知らずなんだって。入れる入れないでしかケンカになんないの」 「その言い方って……まさかまた同じケンカやった?」 「……ケンカまでは……してない……ぞ?」 「ケンカまではって」  ぶはっと吹き出して「それって怒ってるの秋人だけなんだろ」「大事にされてるってことじゃん」と慰められる。 「そうなんだけどさ。……で? 急にどうした?」 「いやー。蓮くんってどんなことで怒るのかなーって思ってさ。機嫌が悪くなるでもいいんだけどさ。全然想像できなくて気になった」  俺も想像できない、と言おうとして、ふいに思い出す。 「そういえば……一度だけ、怒ったことあったわ」 「え、マジで?」  まだ付き合う前。蓮が美月さんと付き合ってると勘違いをしてた頃。  蓮とすれ違っていたあの頃は本当につらかった。  キスシーン前に腕を組ませてほしいと言われたのに、あのとき俺は美月さんの目が気になって断った。その結果、蓮が怒り出したんだ。  京に話して聞かせると「マジかっ」と驚く。 「でもそれ、いまじゃ絶対ありえない状況じゃん? もう蓮くんが怒ることってないんじゃね?」 「……そんなに言われると……気になるじゃん」    蓮が怒ることってないのかな? 「な、な、これ見てこれ」  京がスマホで動画を見せてくる。 「わがまま……ドッキリ?」 「結構出てくるんだよ、こういう動画。なぁ、蓮くんにもやってみてよ、これ」 「……はぁ?」 「検証してみてよっ。んで結果教えて? 別に動画は撮らなくてもいいからさっ」 「……ええ? もしそれで蓮が本気で怒ったらどうしてくれんの?」 「んー? それはあれだ、責任もって駆けつけてやるよ。夜中でもさっ。ドッキリ大成功の紙、第二弾作って用意するか?」 「…………駆けつけるときは書いて持ってきて」 「ははっ。うんうん、わかったっ」           ◇     わがままドッキリって何をやったらいいんだ……?  明日は久しぶりにオフが被る。  でも、明日はデートしたいし、やっぱりやるなら今夜だよな。  蓮の帰りを待ちながら夕飯の準備を……と思って思いとどまり、ソファに腰を下ろす。  夕飯食べに行きたいってわがままはどうだろう。  ……普通にニコニコ「いいよ!」って言うだろな。  疲れて帰ってきた蓮に夕飯作ってって言うほうがいいかな。  でも、俺が先に帰って来てんのに、ダラダラ休んで蓮に作らせんの……嫌だな……。  俺は一人うだうだ悩んでから腰を上げた。 「カレーだっ! ただいま秋さんっ!」  玄関からリビングまでドタバタと走って来たと思ったら、開口一番の「カレーだっ!」に笑ってしまった。  ちょうど出来上がったカレーに蓋をする。 「おかえり、蓮」 「ただいまっ」  蓮が後ろから抱きついてくる。首、耳、とキスが移動して最後に唇を食べられた。 「ん……蓮……」  なんだよ、このままベッド行く?  スイッチを入れられて甘えようと思ったら、パッと唇が離れていった。 「秋さんっすごいっ!」 「え? なにが?」 「俺、今日一日ずっとカレー食べたかったのっ! すっごい嬉しいっ!」 「マジか。そっか、カレーにしてよかった」  食べに行きたいなんて言わなくてよかった。 「蓮、シャワー行こ?」 「うんっ。あ、でもその前に」  と俺から離れ、飾り棚の上にあるリングケースから結婚指輪を取り出し薬指にはめ、俺の指輪も持ってくる。  俺の薬指に指輪をはめると、満足気に微笑んだ。  オフのときはいつも前日の夜からこうして指輪をはめる。  胸がぎゅっと痛くなる。マジで愛してるよ……俺の蓮。  気を取り直してドッキリだ、ドッキリ。 「蓮」  コアラ抱きして、ってわがまま言おうと思ったら、蓮が両手を広げて笑った。  どうしよう、この、わがまま言う前に甘やかされる現状……。ドッキリにならないじゃん。  俺は小さくため息をついて蓮にコアラ抱きで抱きついた。 「どうしたの? なんか疲れてる?」 「いや? 全然?」 「でも秋さんがため息なんてめずらしいよ。気づいてないだけかもね?」 「……そ、かな」 「今日は俺が全身洗ってあげる」 「えっ」  洗うの面倒臭いー洗ってー。って言うつもりだったのに……。  ドッキリがことごとく失敗していく。 「秋さんかゆいとこない?」 「ん、気持ちい。最高ー」  蓮は美容師並の手つきで俺の頭を洗い、コンディショナーで仕上げた。  それから、泡で出てくるボディーソープを手に取って、首から順に優しく俺を泡で包んでいく。 「蓮、蓮、ここは念入りにな?」  わざと俺の息子をつまんでふるふると揺らすと、蓮が楽しそうに笑った。 「いいけど、秋さんまたスイッチ入っちゃうよ?」 「蓮もだろ?」 「俺は出せばスッキリするけどさ。秋さんは違うでしょ?」 「大丈夫だって。ここにもちゃんとローションあるじゃん。後ろも念入りに洗って?」  耳元でささやくと、蓮が顔を赤らめてもくもくと洗いだした。  見るともう蓮の息子は立ち上がってる。ほんと可愛い、俺の蓮。  俺もボディーソープを手に取って蓮の身体を洗った。 「秋さんが俺を洗ったら休んだことにならないよ」 「いいよそんなの。早く洗って繋がろうぜ」 「でも、秋さんのカレー早く食べたい」 「じゃあ超特急でやろ」 「ええ……やるならゆっくりがいい」  ゆっくり、という言葉で、後ろがうずき始めた。  俺たちは最近、ゆっくり愛し合うのが好きだ。激しく抱き合うのもいいけど、ゆっくりは格別に幸せで最高に気持ちいい。  あ……やばい……もうほしい。  俺は蓮を倍速で洗い上げ、後ろを急いで準備した。 「秋さん、それ俺の仕事だよ」 「仕事ってっ。ふはっ。笑わすなよ。……んっ……っ」  結局二人で準備して、急いでシャワーを出る。  身体を拭くのもそこそこに、蓮にコアラ抱きでベッドに運ばれた。 「秋さん、ゆっくりでいい?」 「カレーは?」 「……今はもう秋さんしかいらない」 「ん……俺も……」    蓮の首に腕を巻き付け、俺たちは唇を合わせる。  ゆっくり、と宣言したときは、キスも初めからゆっくりだ。  ゆっくり優しいとろけるキス。  なんでだろう。今は激しいキスよりもこっちのほうが官能的に感じる。   「あ……っ、んん……っ」    弱い耳をゆっくり舐められる。蓮は俺の身体を横向きにして、首から胸へと舌で愛撫しながら、背中を指でツーっと撫で上げる。   「れんっ、あ……っ、それ……やば……ぃ…っ! んっ!」 「秋さん、また背中と乳首でイッちゃう?」 「イッちゃう……かも……っ、あ……っ……」 「じゃあ、一回イかせちゃおうかな。可愛い秋さん見たい」 「はぁ……っ、んん……っ!」    蓮は背中と乳首って言ったのに、俺を仰向けにして俺の腕を上にあげた。   「れ、れんっ、それだめ……っ」

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