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契約

「俺は、ハルティオナ=ヴォルグノーツ。みんなからはハルって呼ばれてるんだ」 「ハルさんですね。俺もそう呼ばせてもらいますね」  渚が無邪気にハルに笑いかけるが、俺の心の中はモヤモヤした感情が漂っていた。  このハルという男、どう考えても渚に気があるように見えるぞ……。 「君たちの名前も聞いてもいいかな?」 「あ……俺は柊渚です。こっちが大翔荒玖。普通に渚って呼んでください」  渚が握手を求めるように手を差し出した。  ハルはその手をじっと見つめて何やら考え込んでから、するりと両手で渚の手を包み込む。 「ナギサくんっていうんだね。良かったら俺とロストを組む気はないかな?」 「はい?」  聞き慣れない単語に渚はキョトンとした顔で首を傾げた。  俺も何が言いたいのか分からず同じように首を捻る。 「おい、ハル。いきなり初対面の人にそういうことをお願いするな。つか、渚は荒玖とロストを組んでるんだろ?」  なぜかその単語を知っている前提で話を進めようとする冬季に、俺は慌てて会話に割って入った。 「ちょっと待ってくれ。ロストってなんだ?」  その質問に冬季が思い出したように手をポンと叩いた。 「そういや教えてなかったか。まぁ、えっと、LPを回復しなきゃ魔法が使えないじゃないか? その回復をする相手と契約(ロスト)を組むと、契約者が許可しない限り他のやつとしても回復出来ないようにするっていう契りみたいなもんだよ」 「契り……許可しない限りってことは許可をすれば他の人とLPを回復できるってことだよな?」 「まぁ、そうなるな」  つまり、その契約(ロスト)をハルは渚に組んでほしいってお願いしてるってことか?  なんで? つか、いきなり過ぎないか? 「て、ちょっと待て! 俺と渚がロストを組んでるってなんだよっ」

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