76 / 228
リルへの不審
風で飛んできたのであろう、枯れ草をはむはむと美味しそうに食べながら呑気に胡座をかいているリルに話しかける。
つか、草食べるのか。
「あぁ?……あー、LPは自然に減るもんだからな」
「自然に減る? どういうことだ?」
「言葉の通りだ。電力も機械とかから少しずつ抜けていくもんだろ? そういう感じでLPも体から漏れ出てるんだよ。確か目安で一日くらいで1LP減るんじゃなかったか。そういうふうに教えられた」
リルの言葉に僅かな違和感を覚える。
まるでその言葉は誰かがLPの制度のようなものをリルに教えて、それをガイドセンターがガイド役として使っているかのような。
むしろ、そのままの意味にしか取れない。
「リル、お前……本当に俺達の味方なんだよな?」
俺の疑惑の籠もった物言いに隣にいた渚が不安げにこちらを見る。
「あははっ! 俺様はガイド役だからなー。ガイドセンターからおめーら異世界人にガイドしてくれってお願いされてしてることだから、味方とか敵とかって概念がねーぞ」
リルはケラケラと可笑しそうに笑ってそう言ってのける。
だが、俺はリルに対する不信感を拭えないままだった。
あまり信用しすぎるのは良くないのかもしれない。
「他に聞きたいことはねーのか?」
「聞きたいっつーか……ここでの生活の仕方については、ギルドで生活費を稼ぎながらLP増やすために秘境を巡るってだけでいいのか?」
「そうだな。LP増やす必要を感じねーなら危ないことはしないに越したことねーし、ギルドで雑用すればある程度の生活は出来るぞ」
あっちの世界でいうと働いてお金を稼ぐことと同じものなのだろう。
どのみち、冬季もすぐには帰れないと言っていたし、こっちの世界にあるLP制度についても少し気になることがあるので俺は肝を据えることにした。
ともだちにシェアしよう!