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第14話 身勝手な奔走
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うまく行ってたはずだったのに。
前に上官を救った時みたいに、うまくやれると思ったのに!
ヤーノと一緒にうまく上官を危険な目に合わせて、俺らが救って恩を売って功績にするって事を繰り返していた。
危険な場所に上官を誘導するように情報を出して、そろそろ良い頃合いかと出て行ったら上官とその側近が待ち構えていた。
「やはりな、貴様らの仕組んだことだったか!」
上官とその側近連中に嵌められた。
いや、バレてたんだ。
「違います!
私たちは危険だからと」
「黙れ! 貴様らが繰り返している事は裏が取れている!
軍法会議にかけられると思っておけ!」
そんな不名誉な事はロンダンの家からも追及されてしまう!
「決してそんなつもりはありませんでした!
どうか、挽回させてください!」
「私もです!
ベオクと同様、上官の危機だと思って駆け付けたのです!」
「ほう、では名誉挽回してもらおうか」
そう言われて、敵陣に特攻するしかなかった。
「くっそおぉぉ!!!!」
腕にはそれなりに自信があったが多勢に無勢だった。
何カ所か切られ、背中を袈裟切りにされて力尽きた。
そこからの記憶は病院で目覚めるまで途切れていた。
「気が付いたか!!
ベオク! よもやこんな体になるとは。
だがこれで除隊すればいい。
領主としてこれからはソリチュアと一緒に街を治めれば良いんだ。
もうすぐ子供も生まれるのだから」
親父が俺にそう言い、傍らで身重のソリチュアが泣き崩れていた。
「俺、の、体、どうなった」
「ベオク様!
貴方の体は、魔法治癒でも治せないくらいの傷があって……、」
「足、感覚が、ない」
「うぅ、ベオクさまぁ、もう、動かせないと」
「大丈夫だ! この父が必ず治せる魔法使いを探してみせる!
ソリチュアも泣くでない」
泣き崩れているソリチュアと、親父の言葉で俺の下半身が動かない事を知った。
「そうだ、帝国に金色の魔法使いが現れたと言っていた。
その方ならきっと治せる!
魔法管理部にどうにか頼んでみる!
官僚と言えば、代筆屋のとこのせがれが居たはずだ。
代筆屋から言って貰えば」
「ダメです! 無理です!」
ソリチュアが親父の言葉を遮った。
「どうした、ソリチュア?!
ベオクの体を治してもらうのだ、代筆屋のシアンと言ったか、あのせがれはベオクの幼馴染だ。
きっとどうにか話を通してくれるはずだ」
「きっと、断られます。
彼に、ベオク様から離れてもらう様に手紙を出しました。
縋りついて困ってるからと」
「なんだと」
「シアン、に、俺も、書いた」
そうだ、約束は守れないと勝手に突き放したんだ。
「帝都経理部に私から直接言う!
あんな魔力も無いせがれ如き、どうにでも出来るさ」
そうだ、うちの商会は帝都経理部に繋がりがあるんだ。
それに、俺は領主ロンダン家の婿なんだ。
シアンじゃなくても、魔法管理部への紹介くらいどうって事ないはずだ。
「ソリチュア、体に悪い。
とりあえず、ロンダン家で待っていなさい。
ベオクは必ず治療してそちらに帰らせるから」
泣き崩れるソリチュアを帰し、俺は実家に連れて行かれる事になった。
病院で移動ゲートの準備を待つ間に、親父が至急の魔力鳩でこの状況を伝え、どうにか魔法管理部に渡りをつけてもらうようお願いをした。
だけど帝都経理部からの回答は、却下だった。
理由は管轄外。
「くそ! こうなったら、代筆屋を脅してでもせがれから橋渡しをしてもらう」
親父はすげなく断られてシアンの両親を脅すと息巻いていた。
その日のうちにゲートが開かれ病室のベッドから、実家へと戻されている間にソリチュアが産気づいたと魔力通信が入った。
「ソリチュアが男の子を産んだそうだ!
ベオク! とうとう父親だな!」
親父たちは初孫とロンダン家との強い繋がりを証明する子供が出来たと喜んでいた。
ところがそのすぐ後にもたらされた報告は、緑色の髪の子供だと言う事だった。
「緑の髪……、相手はヤーノか」
ヤーノは俺と一緒に深手を負い、残念ながら助からなかったと聞いている。
「ロンダン家に行ってくる! こんなバカにした話があるか!」
激高したオヤジがロンダン家に出向いても、結果は余り良い方にはならないだろうと言う事も分かってた。
こんな体になってる俺の方が、かなり不利なんだから。
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