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三十年の事件
ドアを開けたら彼にぎゅっと抱き締められた。
「なかなか帰ってこないから心配したんだよ」
「ごめんなさい和真さん」
心地いい温もりが全身をふわりと包み込んだ。ここが一番安心する場所だ。
「電話でも説明したが、早水さんから色々と話しを聞いていたんだ。遅くなってすまん」
「ヤスさんまで謝らないでください。四季やお腹の子に何かあったんじゃないか、そう思うと心配で何も手に付かなくなるんです。こんなのおかしいですよね?」
「おかしくない。普通だ。オヤジもそうだし、鞠家も鳥飼も似たようなもんぞ」
そこへ心春がバタバタと走ってきた。
名残惜しそうに彼の腕がすっと離れていった。
「パパ、まーちゃんおっきした。あ、ママだ」
「ただいま」
心春がよいしょよいしょと膝の上によじ登ってきた。
「心春、ママのお腹には赤ちゃんがいるんだよ。下りなさい」
「やだ」
僕の体にしがみつくとぶんぶんと首を横に振った。最近の心春は変だ。こんな風に甘えん坊さんじゃなかったのに。
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