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どうか、無事でいて
「乗客乗員四十三名が亡くなり、唯一五歳の男児が生き残った。稀にみる戦後最悪のバス事故。ヤスさんは新たに分かった新事実が何か、分かるんですか?」
「詳しいことまでは知らないが、おおよその検討はついている。十八年たって俺は四季にやっと会えたんだ。なにがあっても俺は四季を守る。後悔はもう二度としたくないから、絶対に四季の側から離れない。和真、悪いな。新婚だからいつも四季とくっついていたいのに。シスコンで心配症で。こんなめんどくさい兄貴が側にいて申し訳ない」
「なんでヤスさんが謝るんですか。俺も四季もヤスさんが側にいてくれることがどんなに心強いか。蜂谷さんと青空さんにも感謝してもしきれません」
翌朝。
仕事に向かう彼と保育園に向かう心春を見送って家に戻ろうと思ったけど、車椅子は自然と菱沼金融へ向かっていた。
「四季おはよう」
「蜂谷さんおはようございます」
ソファーに座りコーヒーを飲みながら新聞に目を通していた。
蜂谷さんの膝を枕代わりにして青空さんが寝ていた。
幸せそうな寝顔に僕まで幸せな気持ちになれた。
昨日交番に駆け込んだのは海翔くんじゃなくて鉄将くんだった。
「パパが押し掛けてきて、ママを叩いている。お巡りさん助けて!」
すぐにアパートに警察が駆けつけたけど、鉄将くんのお母さんは椎根さんに連れていかれたあとだった。
「どこから情報が漏れたんだ?」普段は決して怒らず、物静かな卯月さんが声を荒げていて、昨日はみんなぴりぴりしていた。
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