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一世一代の告白

「さっき今朝の新聞って言ったよな?」 弓削さんが机の上に置かれた新聞を広げると、ヤスお兄ちゃんが隣に移動した。 「もしかしてこれじゃないか?」 「こっちだべ」 「あの……何が書かれてあるんですか?」 二人の邪魔をしないように彼なりに気を遣い、おそるおそる声を掛けた。 「昨日の夜、さっき喋っていた御霊の碑の前で花火をしたり飲酒をして大声で騒いでいた新成人のグループが地元民からの通報を受けて駆け付けた交番のお巡りとトラブルを起こし公務執行妨害で逮捕された。成人になって嬉しいのは分かるが人様に迷惑をかけるなどあってはならない。小学生でも分かることだ」 「斎藤はそのことを言ってたのか」 「もしくはこっちだな」 二人の目に止まった記事は、五十代の父親と三十代の母親に保護責任者遺棄罪と、一緒に暮らしていないのに一緒に暮らしているように装い不当に児童手当や臨時給付金を受け取っていた詐欺の疑いで逮捕されたという記事だった。 「海翔の両親のことだろう。息子の世話を弟夫婦に丸投げしておいて児童手当はちゃっかり懐にしまって。海翔が行方不明になっても探しもしない。見付かっても知らぬ存ぜぬ。迎えに行こうとしないし、電話の一本入れやしない。扶助が必要な海翔に対しなにもしなかった。悪いことはいつかバレる」

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