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01 愛し合う男達(1)

とあるラブホの一室。 カイトとダイチは、明日のライブ出演を前に、男同士の愛の営みに興じていた。 ダイチは、背中にのしかかるカイトに言った。 「うっ、うっ……カイト、お前、今日はいつにも増して激しいぜ……やばい、やばい……」 「あん? 知ってるだろ? ライブの前は収まんねぇんだよ」 「だからって……うっうう……俺、これ以上いったらおかしくなる……うっ……」 「何を言ってんだ? まだまだこれからだぞ? オラオラ!」 「うっ……いくっ……あっ、ダメ……壊れるっ……」 ダイチは、ビクッ、ビクッ、と体を痙攣させ白目をむいた。 だが、カイトのピストンは暴走列車の如く止まらない。 激しい突き上げで、ダイチはイキのまどろみから無理やり起こされ、うっすら目を開けた。 カイトが耳元で囁く。 「ダイチ、もういったのか?」 「ああ……だってよ……カイトのって気持ちよくて……」 「ふふふ、そうか? だが、もっといくぞ?」 「……ったく、お前はどれだけ性欲つえぇんだよ」 「あん? 今更だな」 「まぁ、それがカイトなんだけどよ……それにしても今日は……激しいぜ」 「ほら、しゃべってると舌噛むぞ! 奥までぶち込むからな! オラ!」 「うぐぐっ……バカ……マジでやばいっ……ううっ」 ダイチは、シーツをギュッと握り閉め、イキの快感を耐えようとした。 しかし、我慢できずそのまま断末魔のような叫び声を上げた。 「いくーっ!!!」 カイトとダイチは、そのままベッドに崩れ落ちた。 ダイチは、色白で手足が長いモデル体型。 時折少年のような無垢な表情を見せる、愛らしい爽やか青年である。 一方、カイトは、大柄色黒で、男らしい筋肉ボディ。 それでいて、整った精悍な顔をもつ美形男子である。 二人は、そのまま抱き合いながら夜を明かすのだった。 **** その日、ヒビキはオーディションへ審査員として参加していた。 前半のノルマが終わった所で休憩となった。 アシスタントのトキオがぼやく。 「ヒビキさん、やっぱりソラのような人材は中々出ませんね」 「ん?……ああ、寝てたわ」 「ヒビキさん!! どうしていつも……」 「ああ、悪りぃ。ふあーあ。俺、外出てくるわ。トキオ、あとはよろしく!」 「もう、ヒビキさんが居なくてどうするんですか! プロデューサーなんだから! あーもう!」 ヒビキは、とあるアイドルプロダクションのプロデューサー。 人気ミュージカル俳優・ソラを育て上げた実績を持つ実力派。 容姿は、無精ひげにボサボサ頭、ラフな着こなしのビジネスカジュアルスタイル。 コワモテだが、笑みはドキッとする程色っぽい。そんなナイスミドルである。 ヒビキが飛び出した行先は、事務所近くのいつもの公園。 ベンチに座り青空を眺める。 「ふあーあ……いい天気だな……ん、なんだ?」 ヒビキの耳に入ったのはバンド演奏。 「野外ライブでもやっているのか?……それなら新人発掘って事でせめて給料分は働くか……ふあーあ」 欠伸をしながら、音のする方に歩み始める。 公園中央の円形ステージに辿り付いた。 そこでは、アマチュアバンドが演奏をしていた。 観客はまばら。 しかし、一部の熱狂的ファンが声援をおくっている。 「この曲……何だ? 胸に突き刺さって来る感じ……」 ヒビキは、自分の胸ぐらをギュッと抑えた。 「何と言う事だ……こんなところにいたとは……俺が求める原石。荒削りではあるが……芯の通った力強い歌声。心に響いて来やがる。鋭利な刃物のようだぜ……」 呆然と立ち尽くし、結局最後の曲が終るまでそこにいた。 「はっ……ふふふ、そうだよな……こんなのを聞いた日にはこうなる。ふふふ」 ヒビキは、ギンギンに勃起した自分のものを見て自嘲した。 **** 楽屋代わりの仮設テントには、演奏を終えたカイトとダイチの姿があった。 「ほらよ、お疲れ、ダイチ!」 「サンキュー! カイト」 ダイチは、受け取ったペットボトルに口を付けた。 「グビ……グビ……プハーッ! 最高!」 「だな! すげぇ、いい気分だ!」 「なあ、カイト」 「なんだ?」 「俺さ、最後の曲は、テンションかなりアゲアゲでヤバかったぜ。俺、歌っててイキそうになってたわ。ってか、実はちと後ろイキでじんわり出ちまった……」 「ぷっ、お前らしいな、ダイチ。でも、その燃え尽きた感は、確かに伝わって来た。そっか、あれは絶頂だったか……」 「あはは、バレてた? 恥っ……」 二人は大笑いをする。 ふと、ダイチは、カイトの顔を覗き見た。 「なぁ、カイト……」 「ん? どうした?」 「甘えていいか? 体が火照ってしかたねぇんだ」 「ふっ、いいぜ。来いよ」 ダイチは、カイトの胸に飛び込む。 そしてすぐに、唇を重ね、舌を絡ませ合う。 んっ、んんっ……ぷはっ……。 ダイチは、カイトの胸の中で呟いた。 「カイトの汗の匂いがする……」 「悪りぃ。臭かったか?」 「ううん、いい匂いだ……俺、カイトの匂い大好きだからさ……はぁ、はぁ……やっばっ、ムラムラしてきた……俺って発情しすぎかな?」 「そんな事ねぇよ。俺だってダイチとやりたくてウズウズしてっから。ほら、触ってみるか?」 カイトは、ダイチの手を自分の股間にいざなう。 「うわっ……もうカチカチかよ……なぁ、カイト」 「ん?」 「やっぱ、飯は後にして、ホテル直行しようぜ……我慢出来ねぇ……こいつが欲しくてどうにもなんねぇよ。ダメか?」 「いいぜ。ライブの後はいつもこうだもんな、ダイチ。性欲が抑えきれなくなるんだろ?」 「……俺のこういう所って嫌か? カイト」 「あん? んな訳あるかよ……俺、そういうダイチの事が好きだから」 「ふふふ。エロいな、俺達」 「だな……男同士で互いの性欲を受け止め合う。最高にエロい関係だが、これが最高のパートナーって証拠だろ?」 「なぁ、くっちゃべってないで、行こうぜ……ここでやりたくなっちまう」 「ああ……」 二人は、楽器を背負ってテントを出た。 **** 行きつけのラブホテル。 二人は、入室するとすぐにキスを始め、そのままベッドに雪崩れ込み抱き合いながら繋がった。 そして、あっという間にダイチは絶頂を迎える。 「いくっ、いくっ……あーっ!」 ダイチのイキの雄叫び。 カイトは、ダイチの体をギュッと抱きしめた。 「くっ……すげぇアナルの締め付け……ダイチ、そんな良かったのか?」 「……ああ、最高っ……お前のチンコ、気持ち良すぎ……俺のケツマンコ、幸せ過ぎだって……」 「ふふふ、確かに痙攣やばいな……俺も気持ちよくなってきたぜ」 「バカ! よせよ、まだ出すなよ、カイト? 俺はまだイキたりねぇんだ……」 「分かってるって、ダイチ……しっかり満足させてやっから」 「……ったくお前ってイケメンすぎだぜ。俺、お前無しじゃ生きていけなさそう……」 「それは俺のセリフだっつうの……」 どちらかともなく、互いの手をまさぐり合い、ギュッと結んだ。 握った手で無言の言葉を交わす。 しばらくして、ダイチは言った。 「……さぁ、続き頼むぜ。この体の火照りが収まるまで、カイト、お前を逃がさないぜ。今度は後ろから頼む。奥の奥までぶち込んでくれ、そのぶっといのを」 「ああ、いいぜ……」 カイトは、ダイチを後ろ向きにさせ、イキリ勃った自分のモノをダイチのアナルにあてがった。 「いくぞ、オラッ!」 「うぐっ……きたーっ……カイトのでかチンコ……あぐっ……うぐぐぐぐっ……あたってる、あたってる奥まで……感じるっ……熱くて固いの……いいっ、いい……」 「もっと、いくぜ。ケツをもっと上げろよ。グイグイねじ込んでやる! オラオラ!」 ダイチの悦びの悲鳴は再び響き渡った。 **** プロダクション事務所の執務室。 ヒビキは、自席に腰を下ろした。 すると、すっとトキオが飲み物を持ってやってきた。 「やっと戻って来ましたか、ヒビキさん」 「ああ……」 「今日は、オーディション終わりにしましたよ。ヒビキさん、もっと真面目にですね……あれ? どうしたんですか?」 トキオは、珍しくやる気になっているヒビキの表情に気づいた。 「ああ、悪かったなトキオ……実はダイヤの原石を見つけてな」 「な、なんと……それは本当ですか!?」 「ああ間違いない。こいつもそう言ってる」 ヒビキは真面目な顔で自分の股間を指差した。 ズボン越しにも分かる勃起の膨らみ。 トキオの表情はみるみる内に失望の色に変わった。 「は? そ、そういう冗談はやめて下さい! 笑えないです! 次はちゃんとオーディションやって下さいよ! こっちは真剣なんですからね、ブツブツ……」 ヒビキの興味は既に別のものに移っていた。 SNSでそれらしいライブ告知を検索。 「……野外ライブ開催……これか? バンド名は、ボーイズ・ラヴァーズ……」 更にそこからプロフィールに辿り着く。 「……ボーカルは、ダイチってやつか。なるほど……まっさらであの実力。こいつは化るぞ」 ヒビキは、かすかに口元を緩めた。

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