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第2話

「今、様子を見てきた。音は大きかったが被害は少ない。もう大丈夫そうだ」 ルキを始めとする村の男性達が避難所に戻ってきたと同時に、この場の全員が安堵しそれぞれの自宅へと帰り支度をはじめた。 「リーラの家近くで、意識を失った男が倒れていたが、知らない男だ。この村の住人ではない。近くに馬もいてな、男も馬も無事だが、治療は必要かもしれない」 「わかりました。すぐに向かいます。ネロ、アル手伝って。クルットさん、またこれに乗って。家まで帰りましょう」 リーラはそう言い、自宅まで急いだ。 リーラの家の前に、その男は横になって倒れている。意識は無いようで、数人の男達が心配そうに囲んでいた。 「大丈夫ですか?僕の家の中に運んでください」 「おい、リーラ。大丈夫か?知らない男だぞ」 「怪我人だし、意識もないようなので、治療が必要だと思います」 「…わかった。何かあればすぐに言えよ。馬は俺たちが面倒みておくから」 「わかりました」 家に入るとリーラ、ネロとアルで看病をしていく。 「熱がちょっと出てるみたいだね。ネロ、水を使って冷やしてあげて。アル、風を起こして部屋の空気回して。できる?」 「わかった」 「できるよ」 双子は力を発揮し、リーラは薬草を男の傷口に塗り治療を行う。左手を負傷しているようだった。 (骨は折れてないみたいだけど…傷が多いな。熱が下がれば意識も戻ると思うけど) 「ねえ、リーラ。この人、すっごく大きい人だね」 「ルキおじさんより大きいよ」 確かによく見るとこの村にいる男性より体が大きく、がっしりとしているので、特別な訓練を受けている人のように感じた。それに、身なりが良く高貴な印象をしていた。 (騎士さんかな…とりあえず、ひとりでも助けないと) 同じ過ちは繰り返したくないと、リーラは強く思い、看病を続けることに専念する。 「リーラ、起きたよ。目を覚ました」 「おっきい人が起きたよ」 双子の興奮する声が部屋に響き、男が寝ているベッドの周りをくるくるとネロとアルが楽しそうに走り回っているので、 「こら、走らないの」とリーラが優しく諭す。 「大丈夫ですか?気分はどうでしょうか」 「あのね、僕が看病したんだよ」 「僕もやったもん。看病したよ」 三人に話しかけられ、目が覚めた男は呆気に取られた顔をしていたが、思い立ったように口を開いた。 「俺は…気を失ってた?」 「そうです。昨日の鉄砲水に巻き込まれたと思います。うちの前に倒れていたので、村の人が運んでくれました。左手が負傷してます」 「そうか…あの水はそれか。あ、ここは君の家?世話になったようだ。感謝する」 そう言って、男は動き出そうとしたが傷口が痛むようで顔を歪める。もしかしたら、見た目より傷が深いのかもしれない。 「お腹すいたでしょう。ご飯食べましょうか、ここまで持ってきますから」 初めて見る大きな男の人に双子は興味津々で付きっきりであった。 「おっきい人、お名前は?僕の名前はね ネロ」 「僕はね、アルだよ」 「俺の名前は…ランディだ」 二人は「ランディだって、ランディだって」と大はしゃぎしている。 「ランディさん、僕はリーラです。右手でご飯食べられますか?スープとパンです。とりあえずこれ食べてください。食べ終わったら薬、飲みましょう」 「リーラありがとう。何から何まで…本当に感謝する。君は医者なのか?」 「いいえ。薬草を育てていて、それで薬を作ってるだけです。この辺にはお医者様はいなくって、病院は町までいかないとないから、なるべくみんなからの要望に応えられる薬を作ってるんです。高齢の人も多いから…」 「これも、リーラがやってくれたんだな」 ランディは左手に巻かれている包帯を差し出す。 「あ、そうです。痛みませんか?もし痛いようなら町のお医者様に診てもらった方がいいです。痛み止めの薬を塗っておいたのですが…骨は折れてないと思うのですけど」 「ああ、大丈夫そうだ。これくらいならすぐに治る。ありがとう」 ランディは笑顔でリーラを見た。

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