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第3話 はぁ?間違いだと?

翌日から三日三晩、勇者召喚として祭りが行われた。 それはもう、街を上げての大騒ぎ。 和久井は凱旋やらなんやらで忙しいらしく 「神代も一緒に来てよ~」 と耳を垂らしてしょんぼりしながら言って来たが、冗談じゃない。 モブでヘタレな俺が注目されたら、それこそ失神しちまう。 そこは丁重にお断りして、俺は街を散策した。 勇者召喚でお祭り騒ぎの中、貧富の差や荒れた田畑が気になった。 土を弄っていると 「荒れてるだろう?ここ数ヶ月、雨が降らないんだ」 突然声を掛けられて視線を向けると、目が潰れるんじゃないかと思う程にキラキラした金髪碧眼の美形が立っていた。 「水脈は?井戸を掘るなりしたのか?」 ポツリと聞いた俺に 「井戸?井戸ってなんだい?」 と、眩しい笑顔で聞いて来た。 しかも顔を近付けてきやがるから、目がこいつのキラキラでつぶれるかと思った。 ジリジリと後退しつつ 「井戸も知らないのかよ!水が地下から湧いてくるんだよ」 そう答えると 「水が地下から!え?きみってもしかして、ババ様が召喚した勇者?」 と聞いて来て、パーソナルスペース無視して近付いてくる。 「そ……それ以上近付くな!眩しくて目がつぶれる!」 「え?どうして?眩しいってなんで?」 自分の美貌に疎い男は、これだから嫌いだ。 キラキラと太陽の陽の光に当たって黄金色に輝くブロンドの長髪。 空のように抜けるような真っ青な瞳が、興味深そうに俺の顔を覗き込む。 「きみは変わった肌の色と、瞳の色をしているね。そう……まるで幻の宝石、エンスタタイトのような瞳の色だ」 キザな物言いに、思わず吹き出してしまう。 「はぁ? エンストトス? なんだそりゃ。あんたって、変なヤツだな」 笑い出した俺に、そいつは俺の手を掴み 「もし、異世界から来た勇者なら、僕と結婚して欲しい」 真顔でそう言われて、ひっくり返りそうになった。 「待て! 俺は男だぞ」 「そうだね。どう見ても、女性には見えないよ」 「それで結婚て、おかしくないか?」 「何故だい? この国では、そんなもの関係無いよ。愛し合う者を隔てるものなんて、この世に存在しないんだ!」 熱く語るコイツに、実は頭がおかしいヤツなんじゃないかと思い、俺はそいつが熱く語っている隙を狙ってそっと逃げ出した。 「あ! ねぇ! 待って!! 多朗!!」 何故か名前を呼ばれた気がするが、異世界に来て変なキラキライケメンを見たから幻聴を聞いたんだと、ひたすら走って逃げた。 街は賑やかなお祝いムード一色で、さっき見た光景が嘘のようだ。 きっと俺達を召喚したのは、この痩せた土地をなんとかしたいからなのかもしれない。 だとしたら、あながち俺が召喚されたと言っていた和久井の言葉も頷ける。 ……ふとそう思いながら、俺はさっきの頭がおかしいキラキライケメンに見つからないように警戒しながら城へと戻った。

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