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SNSで出会ったイケメンに捕まるまで

 とあるつぶやき投稿系SNSがある。  表向きは普通のつぶやき投稿系なのだが、相互フォローのみが投稿を閲覧できるシステムがあって、個別にメッセージを送ったりもできるため、ゲイ向けの出会いの場としても使われている。  出会い系目的の投稿者は、ハンドルネームの後ろにとある記号を付ける。  タチなら凸、ネコなら凹。  どっちもできる奴は回。  記号を使わないで@マークを付けてその後ろにアピールポイントを書いたりする人もいる。  決まりって訳じゃないから、人気あるタチさんとかネコさんはそういう記号付けなくても皆知ってたりするけどね。  暗黙の了解で、モロ語を書き込むのは禁止。  その日の相手募集はいいけど恋人募集は敬遠される。    俺はタチもできなくはないけど、大抵はネコなのでハンドルネームの後ろに凹を付けている。  ハンドルネームは「麦」。  特に深い意味はない。  本名をもじって身バレしたら困るしね。  何しろ、ハメ撮りの動画をアップしてるから。  ちなみに海外サーバーの動画サイトにも動画をアップしてお小遣い稼ぎをしてる。  SNSには3分以内で全体にボカしを入れたショート動画、動画サイトには最初から最後までの編集済みのフル動画で、こちらは顔だけボカし入り。  海外サーバーだから局部が無修正でも問題ないし、外国人ユーザーも多く居るサイトだから、動画を上げると結構な額のチップを貰える。  ちなみに一定額のチップを払わないとフル動画は観れない仕様みたい。  このチップのお陰で月数万くらいの副収入にはなっているから大助かりだ。  今は恋人もいないし、作るつもりもないから適当に相手を募集しては動画を撮らせてもらって3〜4ヵ月に1回くらいのペースでアップしてる。  1度お相手してもらった人とは基本的にもう会わない事が多い。  余程相性が良かったらリピートもありだけど、俺はそんなにモテるタイプでもないし、リピート希望しても向こうから願い下げだろうし。  相手を募集する時はつぶやき投稿を全体公開で行う。  ゲイ専用のSNSではないから、あからさまな募集はしない。  〇日〇時に、どこどこのお店で飲んでます⋯⋯みたいな感じ。  それを見た人がそのお店に来て、声をかけてくれたら交渉開始って感じかな。  メッセージで直接誘われる事もあるけど。  ちなみにこういう募集で使うお店はいわゆるハッテン場的なバーだ。  バー自体はゲイ向けだけど、男とヤッてみたいっていうノンケも出会いを求めて来たりしている。  時々、男同士の修羅場もあったりする。  結構カオスだ。  とりあえず俺は修羅場に巻き込まれた事はない。  巻き込まれるのは人気のある調教師とか、独占欲強いネコと、そんなネコを相手した事あるタチさん。  調教師にガチで惚れちゃったドM君や、イケメンタチにチヤホヤされたい欲が強いビッチネコ君が周囲に盛大に迷惑かける感じかな。  店によっては即出禁だけどね。  見てる分には面白いけど当事者にはなりたくないから気を付けないと。  恋人でもない不特定多数の男とエッチしてる俺もはたから見たらビッチだろうし。  まあ、気持ちいい事を共有しちゃうと、勘違いしちゃう気持ちはわかるけどね。  ドSな調教師でも、心身のケアばっちりの紳士いるし。  俺も最初の頃はアナルではなかなかイけなくて、調教師の人にアナル開発してもらったんだよね。  正しいやり方でアナル開発しないと、縦割れアナルなんてのになっちゃうとかで。  流石に縦割れはちょっとビッチっぽくて嫌だよね。  正しい知識がないと色々と危ないしね。  俺のアナル開発をしてくれた調教師の人はタイチさんていうドSさんなんだけど、ちゃんと正しい知識持ってて凄く優しいし紳士だし、あれはMっ気のあるネコなら勘違いしても仕方ないと思う。  誰に対してもドSって訳じゃないとこが凄いんだよね。  俺もMじゃないけどちょっと勘違いしそうになったし。  タイチさんは調教するだけで自分自身は絶対に挿入とかはしないんだ。  なかなかアナルでイけない子をとろとろにしてメスイキさせる過程が好きらしい。  ちなみにタイチさんはゲイではないので、女性を調教する事もあるらしい。    俺もタイチさんのお陰でアナルはばっちり開発されて、今では相性いい人が相手だと挿入だけで軽くメスイキしちゃう事もある。  ちなみにアナル開発されてる時の動画もあったりする。  タイチさんに許可もらって、動画サイトにアップしてる。  簡単にメスイキしちゃう麦君にもこんな時代がありました的な(笑)  動画自体は結構好評頂いてる。    タイチさんは元々マッサージ師で凄くテクニシャンだから、男女問わず調教されたいって人はかなりいるみたい。  癒しとエロって、極上の組み合わせだよね。  俺はそんなタイチさんに気に入られてるみたいで、アナル開発終わった今でも時々声がかかるんだ。  ドM君を掘りたいドSさんや、ノンケだけど男とヤリたい奴、ノンケにガンガン掘られたいドM君に、彼女にアナル攻めてって言えないノンケとか、とにかくまあ色んなタイプの奴らがタイチさんのもとに集まるみたい。  で、相性いいパートナーを探してるタチさんがいると、俺にも声をかけてくれるんだ。  アナル開発の前のカウンセリングで、過去のあれこれを話したからね。  ちょっと親身になってくれてるというか。  君は溺愛してくれる優しいタチと付き合うべきだよって言ってくれてて。  そういう感じのタチさんから依頼があると俺に紹介してくれるんだよね。  まあタイチさんに依頼するようなタチさんはドSな人が多くて、恋人よりもドMのパートナーが欲しい人がほとんどだから、なかなかいい出会いはないけども。        そろそろ次の動画上げるために相手募集しようかなーと思って、つぶやき投稿する事にした。 『動画撮らせてくれる相手募集します。  報酬は出せないけどホテル代はこちらが持ちます。  凹経験の方が多いけど凸もできます。  〇日〇時頃に〇〇町のfootrailっていうバーにいます。  興味ある人いたら探してみて。  1時間くらい飲んでます』  こんな感じの投稿をしてから、とりあえず軽めにアナルの準備してから家を出た。  服装は軽めな感じにした。  黒のTシャツにカーキのジャケット、黒のパンツ。  リュックには財布とか撮影用のタブレットと折り畳み式のタブレットスタンド、後はローションとかの小物を入れてる。  撮影はスマホとタブレットでやってるんだ。  本格的な撮影機器は使ってない。  タブレットは固定、スマホは手持ちで撮影してる。  アングルによってはタチさんに撮ってもらったりもする。    目当ての店に到着すると、カウンター席の隅っこに腰掛ける。  マスターお任せでカクテルを注文した。  バーのマスターとは顔見知りだ。  俺が時々ここで相手を探してるのも知っている。  まあ、客の殆どは相手探しでここに来てるんだけど。  カクテルをちびちび飲みながらスマホを眺めてみると、ちらちらとコメントがついてる。  『今店内にいるんだけど、どれが麦くんなの?』  『今日こそは麦くんにお相手してもらいたい!』  俺はネットでは顔出しはしてないのでメッセージで探りを入れて来る人が多い。  たまに、以前会った事のある人や募集を見てない人が声をかけてくる事もあるけど。  声をかけてくれれば対応するけど、自分からは正体をバラしには行かない。  返信しちゃうとスマホ操作でバレるかも知れないら、スマホを眺めるだけに留めてカクテルを口に運ぶ。  ふと、背後に人の気配を感じたと思ったら隣りのスツールにスーツ姿の男が腰掛けた。  何となく顔を見ると、少し年上くらいのかなりのイケメンさんだった。  うん、ドン引き。  俺は自分の容姿は平凡なモブ顔だと思ってるから、こんなイケメンと並ぶと居たたまれない。 「1人で飲んでるの?」  イケメンさんは俺に顔を向けて訊いてきた。 「そうですよ。相手を探しに来てるんで」  俺はカクテルグラスを置いてから答える。  流石にこの人はこんなバーで相手を探さなくても引く手数多だろう。  特に俺みたいな平凡な奴を相手しなくても、可愛い子なんて選び放題な気がする。 「じゃあ、僕なんてどう?」 「俺、今日は動画撮らせてくれる人を探してるんです。で、動画サイトに上げてお小遣い稼ぎしてますけど、それでも大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ。君、麦くんでしょ」  思いがけず正体を当てられて目を見開いた。  やっぱりどこかで会ってたのかな。  それが顔に出てたのか、イケメンさんはぷっと吹き出した。 「これでも僕は君のファンなんだよ。SNSも動画サイトもフォローしてるしね。SNSではシロって名前だよ」  そう言われて、フォロワーの中にこんなイケメンさん居たんだーってびっくりしてしまった。  俺、SNSでも動画サイトでも顔出しはしてないし、動画も数ヵ月に1回くらいのペースでしか上げてないからフォロワーそんなに多くないんだよね。  週1ペースで上げてる子達と比べると、桁数1つは違うし。  俺のフォロワーは大体1万人行かないくらい。  9千人台後半だ。  毎週エロい動画上げてるタチさんやネコさんはフォロワーが数万人いる人もザラだから。 「俺のファンだなんて、結構変わり者ですね」  思わず言ってしまった。  イケメンことシロさんは苦笑する。 「タイチさんから君の事聞いて、SNSと動画サイト見てそこからファンになって、タイチさんに麦君を紹介して欲しいってお願いしてたんだけどね」 「えっ、そうだったんですか?タイチさんからは何も聞いてなかったです」 「タイチさんが言うには、僕は気に入った子ができたらその子の意思に関係なく囲い込んじゃうタイプだから麦くんは無理だと思うって」 「あー······それは、そうかも」  こっちの意思と関係なく囲い込む······のを過去にやられて酷い目に遭ったからなあ。  タイチさんにはカウンセリングの時にその事を話してた。 「僕も過去にそれで失敗してるから、もうそんな事はしないって言ったんだけどね。金と権力ある奴は懲りないからって言われちゃって」  シロさんはそう言って苦笑する。  確かに前の相手は金と権力にものを言わせて俺を囲い込もうとしてたな。  俺が思い通りにいかないからって監禁されかけたし。  ていうか、この言い方だとシロさんも金と権力ある人って事だよね。 「もうそんな事しないって誓うよ。どうかな?」 「お試しからでいいなら。あ、撮影はしたいですけど」  そう提案してみた。  SNSで俺を知っててファンだとは言っても、実際にやってみたら身体の相性悪くて興醒めなんて事もあるし。  期待外れだったってなって今回だけで終わる可能性もあるしね。 「それでいいよ。どこか行きたいホテルある?」 「いつも撮影で使うホテルあるんで、そこでいいですか?」 「オッケー。じゃあ行こうか。ここは奢らせて」  シロさんはにっこり笑うと席を立ってさっさと支払いを済ませてしまった。  断る余地もないくらいの早業だ。    店を出た俺たちは、俺がいつも撮影の時に使うホテルへ移動した。  ラブホとかじゃなく、ビジホよりは少しだけラグジュアリーな雰囲気のホテルだ。  動画を上げた時に室内がいかにもなラブホはちょっとなーって感じだし、かと言ってビジホは味気ないしねー。  という訳で、高級ホテルほどじゃないけどそれなりなホテルを選んでる。  ちなみに防音とかもきちんとリサーチした上でお眼鏡に叶うホテルを選んでるんだよね。  ホテル代は毎回俺が全額払ってる。  動画撮らせてもらってるし、動画を上げたら元は取れるからね。  店から歩いて10分くらいで目的のホテルに着いた。  毎回、ほぼ初対面の人が相手なのでそれほど緊張はしない。  先にシャワーを浴びて貰っている間に、タイチさんにメッセージを送った。  シロさんて人に誘われてこれから撮影する予定、と。  ヤバい人ならタイチさんから何かしらの警告なり注意なり来るだろう。  タイチさんが俺に紹介するのを渋った人だ。  危険な事はないと思うけど、一応タイチさんには言っておかないとね。  シロさんがシャワーから出て来る前にタイチさんから返信が来た。  タイチさんいわくシロさんはドSではないし、好きになった相手には一途でとことん尽くすタイプなんだそうだ。  それを知って最初は俺に紹介しようと思ったけど、過去に気に入った相手の意思を確かめないまま囲い込むような事をしていたみたいだから紹介するのを躊躇ったとの事。  俺の過去の相手みたいに過激な事はしないハズだから、望まない事を強要してこないなら付き合ってみるのもいいかも、との事だった。  ちょっと安心した。    シロさんが出て来る前に手早く撮影の準備をする。  と言ってもタブレットスタンドにタブレットをセットして、動画撮影モードにするだけなんだけど。  後は、ホテルを特定できるような物が写りこまないアングルを調整する。  写ってしまっても後から編集するから、そこまで厳密にはしてないけど。  準備が終わる頃にシロさんがシャワーを終えて戻って来た。  備え付けのガウンを着ている。 「シャワーお先。麦くんもシャワー浴びてくる?」 「そうですね。家を出る前にシャワー浴びてるんですけど、簡単に汗だけ流して来ます」  俺はシロさんのお言葉に甘えてシャワーを浴びる事にした。  シロさんは撮影用のタブレットを興味深そうに眺めながらベッドに腰掛けていた。    ささっと汗だけ流してから、俺も備え付けのガウンを羽織って戻る。  パジャマ代わりの室内着なので、バスローブほど厚手ではない。  シロさんはベッドに腰掛けたまま、自分のスマホを覗いていた。  長身のイケメンが着るとホテル備え付けのガウンも似合うんだなーと感心して見つめてしまった。 「どうかした?」  俺が見つめてるのに気付いたシロさんがスマホから顔を上げて俺を見る。 「あ、何でもないです」  慌てて首を振った。  流石に、見蕩れてましたなんて言えない。  シロさんはスマホをベッドサイドのテーブルに置くと、ベッドをぽんぽんと叩いた。  どうやら、横に座れって事らしい。  俺は素直にシロさんの横に座る。  するとゆっくり腰を抱き寄せられた。  初対面の相手とこういう行為をするのは初めてじゃないのに、毎回少しだけ構えてしまう。 「緊張してる?」 「んと、少しだけ」  シロさんは優しく顔を覗き込んでくる。  イケメンのアップは心臓に悪い。 「キスしていい?」 「あ、ちょっと待って、撮影始めますね」  俺はリモコンを操作してタブレットの動画撮影を開始した。  スマホも一応動画モードにしてスタンバイしておく。  シロさんはそれを待ってから俺に顔を近付けてきた。  優しく唇を塞がれる。  舌で唇をノックされ、唇を開くと直ぐにシロさんの舌が滑り込んできた。  合わせた唇の合間から息を吐き出す音と、唾液が混ざり合う音が響く。  いつの間にかガウンの紐を解かれていたようで、ガウンが肩から落とされた。  俺はガウンの下はボクサーパンツだけだ。  シロさんもおそらくそうだろう。        何ていうか、シロさんと身体の相性が良すぎたのかシロさんのテクが凄すぎたのか、すぐに翻弄されて、気付いたらトロトロにされてしまっていた。  撮影してる事なんて頭から抜け落ちてしまっている。  いつもならスマホでも撮るんだけど、そんな余裕も無くしてた。  どこを触られてもビクビクと反応してしまって、はしたない声を上げてしまう。  アナルは準備していたから、大して慣らさなくてもすぐに柔らかくシロさんの指を飲み込んだ。 「あ、あ、んぅ、は⋯⋯」  指だけでも気持ちよくてイきそうで、声が抑えられない。  徐々に指を増やして、3本で解されてしばらくして指が抜かれた。 「そろそろいいかな」  「ん⋯⋯どうぞ」  頷いた直後、シロさんのモノが俺のアナルに宛てがわれた。  ゆっくりと挿入される。  最後まで収まると、ゆっくり抽挿が始まった。  初めてなのに俺のいい所を的確に突いてくる。  段々と激しくなる動きに翻弄された。 「はぅ、んんっ、やぁっ、ああっ、ひっ、あ、んあっ」  腰を打ち付けられるたびに快感が押し寄せてきて、言葉にならない声があがる。  いつもなら少しは感じてる演技もするんだけど、そんな余裕は全くなかった。  アナル開発された時以来の素の喘ぎ声が漏れてしまう。  ヤバい。  この人ほんとヤバい。  多分だけど身体の相性良すぎる。  いつのまにか白濁で下腹が濡れている。  いつ出たのかもわからない。  しかも多分1回分の量じゃない。  何回イかされたかわからない。    いつの間にかトんでしまっていたんだろう。  気付いたら騎乗位で下から突き上げられていた。  力が入らなくて、がくがく揺さぶられる度に倒れそうになる上半身をシロさんの腕が支えてくれている。 「も、無理ぃ⋯⋯」  やっとの事で絞り出したのはそんな一言だった。  イきすぎて辛い。  こんなの初めてだった。  シロさんはクスッと笑うと上半身を起こして俺を抱き締めてきた。  まだまだ余裕そうな感じがする。 「けっこうエロいの撮れたんじゃない?」  シロさんがカメラには拾えない小さな声で耳元で囁いた。  それを聞いて、そういえば撮影してたんだっけと思い出す。  返事をしようとしたらまた腰を動かしてきて、上半身が揺れる。  ふと周りを見回すと、使用済みのコンドームの残骸が散らばっているのが見えた。  何回やったんだろう。  冷静に考える余裕もない。  イきすぎて下半身の感覚も鈍かった。 「シロさ⋯⋯も、そろそろ⋯⋯あ」  俺が言おうとしている事を理解したのか、シロさんは俺が言い終わらない内に腰の動きを早めた。 「やあっ、んっ、んあ、ああ、ぁ⋯⋯っ」  再び快感に支配されて、口からは意識しない声があがる。  シロさんが最後にばつんと腰を打ち付けて、ぶるっと震えた。  そして何回か腰をぐいぐい押し付けてくる。  どうやらイったらしい。  俺は力が入らない腕でシロさんの首に抱きついていたけど、腕を外して後ろに倒れ込んだ。  シロさんはそんな俺の上に覆いかぶさってくる。  自然と唇が重なった。  撮影始めた時にもキスはしたけど、よく考えたらハメ撮りする相手とキスするのは初めてかも知れない。  何となく、キスは好きな人としかしたくなかったから。  けどシロさんとは最初から自然にできた。  不思議な感じだった。  とりあえず、動けない俺の代わりにシロさんに動画撮影を止めてもらう。  編集は明日以降にしよう。  今は何もしたくない。  まだ余韻に浸っていたい。  シロさんはタブレットの動画撮影を止めると直ぐに俺の傍に戻ってきた。  やっばりイケメンだ。  ぼーっとシロさんの顔に見蕩れていると、シロさんと目が合って微笑まれた。  あー、ヤバい。  イケメンで身体の相性も良くて、シロさんは多分性格も良いと思う。  惚れそうだ。 「ねえ麦くん」 「はい?」 「僕の恋人にならない?身体の相性も良さそうだし、さっきも言ったけど、君の事は前からファンで、好きだったんだよね」  シロさんはにこにこと俺を見つめてそう言ってきた。  マジか。  タイチさんは、望まない事を強要してこないなら付き合ってみるのもいいかもって言ってた。  ちょっとシロさんはイケメン過ぎて俺には釣り合わない気もするけど、確かに身体の相性は良かった。  良すぎるくらいだった。  これを知ってしまったら他の不特定の人たちと体を重ねるのは無理かも知れない。  いや、わかんないけど。  付き合ってみるのもいいかも。  望まない事を強要されそうになったら逃げよう。  まずは軽い感じでどうだろう。 「⋯⋯とりあえず、最初にも言いましたけどお試しって感じでいいですか?」 「いいよ。お試し期間はどのくらい?」 「そうですね⋯⋯3ヵ月くらいでどうでしょう」  3ヵ月くらい付き合えば、シロさんの人となりもわかるだろうし。  そう言うと、シロさんはにっこり笑って頷いた。 「じゃあ、まずは3ヵ月。その後も末永くお付き合いできるように頑張るよ」 「よろしくお願いします」        その後、動画を編集して動画サイトにアップした。  あの時は気付かなかったけど、シロさんは俺のスマホでも動画を撮ってくれていたんだ。  上手く撮れてた部分を編集で差し込んでみると、まあまあ生々しいエロ動画が出来上がった。  アップしたフル動画はこれまでにないくらいの高評価でちょっとびっくりした。  もらった感想によると  『ガチで感じちゃってる麦くん久々に見た気がする』  『麦くんをここまで感じさせる事が出来る奴が羨ましい』  『トロトロになってる麦くんエロすぎてヤバい』  『俺もあんなふうに麦くんトロトロにしたい』  『スマホからのアングルがタチ目線なのが、麦くんとヤッてる感があってイイ』  などなど。  顔出ししてる子達の方が人気はあるんだけど、俺みたいに顔出し無しでも需要はあるんだよね。  顔がわからない方が、自分好みの顔で妄想できるからいいのかな?  まあ、俺はお小遣い稼ぎできるからどっちでもいいんだけど。  あれからシロさんとは本名を教え合った。  とりあえずはお試しだけど、恋人としてお付き合いを始めている。  一応恋人が出来たので、今後の動画撮影はもうしないか、するなら相手はシロさんのみになりそうだ。        お試し期間が終わって直ぐに同棲のお誘いをされる事を俺は知らない。  溺愛という名の束縛を嬉しく感じる事になるなんて俺は知らない。  気付いたらズブズブに嵌ってしまう事を、俺は知らない。    SNSで出会ったイケメンに完全に捕まるまで、あと3ヵ月。

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