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プロローグ

 気分が落ち込むと必ず思い出す光景がある。  忘れもしない。高校生のころだ。 「これなんだ?」  鞄につけたキーホルダーをぐいと引っ張られる。見上げた先にいたのは、爽やかな笑顔を浮かべたクラスメイトの男子がひとり。 「なんのキャラ? なんか……キモくない?」  なんの悪気もなさそうに言った。  俺は無言のまま彼の顔を見つめた。  こいつの名前は久我(くが)(とおる)。スクールカースト上位のサッカー王子だ。 「手、離せよ」 「あっ、ああ。悪い……」  久我は気まずげな顔で後退った。でも俺の机の傍を離れない。 「久我ー、そんなやつに構うなよ」 「練習試合用の編成、するんだろ」  俺は心を閉ざし、ずっと自分の机で俯いたまま、長い時間をやり過ごした──。

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