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第4話
学校について、まっすぐ部室棟へと向かう。
「「はよーございまーっす」」
バレー部の部室にはすでに他のレギュラー陣は全員揃っていた。別に強豪校じゃないから、部員の数はそこまで多くない。去年、中学でもエースだった昂平が入ってから、徐々に強豪になりつつあるが。ちなみに俺はずーっと補欠だ。
俺と昂平が部室に入ると、数人が俺に近寄ってきた。
「理音!見たぞー今月号!やばくね、エロくね!?ほんとにお前がRION(リオン)なのかよ?やばくね?」
「猫田先輩、あとでサインください!クラスの女子に頼まれたんですよー!」
なんかこのやりとり、毎月やってないか?よく飽きないな、こいつら。
「佐倉先輩、ほんともなにもリオンて本名ですからね。それから進藤、女子にサインはしてやんねぇ、欲しけりゃ直接俺に貰いに来いって伝えろ!」
”日本一忙しい高校生”
今朝母にそう言ったが、あながち間違いでもないと思う。
「すっかりゲーノージンだな、理音」
後ろから昂平にからかうように投げ掛けられた。
「別に、ただの三流モデルだっつーの」
俺、猫田理音ことRIONは、現役高校生の超・人気モデルだ。自分で言うのもなんだけどな!
三流ってのも事実だ。まだ二年目だし。
きっかけは街を歩いてたら、俺の現マネージャーである斎藤さんにスカウトされた。結構迷ったけど、面白そうだったからオーディションを受けることにした。そしたらアッサリ合格して、それからモデルを名乗るようになった。
ありがたいことに、ここまで人気者になるとは俺も斎藤さんも予想外だった。
始めた時は社会勉強というかお小遣い稼ぎというか、そんな程度の意識しかなかった。
「ナニナニ?なんて書いてあんの!?えー、今夜は俺の腕に抱かれて眠りな、仔猫ちゃんって、仔猫ちゃんはオマエだろ!」
「はぁ!?誰が仔猫ちゃんですかっ!」
正セッターの3年、佐倉先輩はすぐ俺に構ってくる。ちょっとウザイけど、セッターとしての実力は本当にすごいと昂平が言っていた。
「だってオマエ猫田じゃん」
「猫は猫でも仔猫じゃなくて雄猫ですよ、俺は」
「盛りのついた?」
「そう。だからサインが欲しいなら直接雑誌持ってこいってクラスの女子には伝えとけよ、進藤!」
「うわー、ファン食う気満々だよコイツ、わるー!」
「猫田先輩カンベンしてくたさいよー、クラスの女子食うとか生々しいッスからァ……」
進藤は1年だけどレギュラーでリベロ。レギュラーでもない俺になついてくる奇特な奴だ。
俺のファンだと公言したことはないけど、ビシバシ伝わってくるから多分そうなんだろう。
しょんぼりしてるところを見るかぎり、俺のサインを欲しかったのはクラスの女子じゃなくてコイツ自身に違いない。正直に言やいいのに。
男のファン、嬉しいし。
「しかし理音お前さー、ファッションモデルじゃなかったのか?なんか最近ハダカとかキワドいカッコしてる写真多くね?」
「……………」
そうなのだ。それが最近少し悩みどころでもある。
俺は一応ファッションモデルとしてこの世界に飛び込んだというのに、最近の仕事はなんというか、セクシー系?女性誌のエッチな特集なんかに呼ばれることが多い。編集長や斉藤さんいわく、俺にはなんか下品じゃない不思議な色気があるそうなのだ。
別に顔が女っぽいわけでもないんだけど。身長あるし。筋肉付いてるし。
俺が脱いでる号は売れ行きも凄いらしい。女性誌なので購買層はもっぱら女性だが、最近は男性にもウケがいいとか……なんで男にウケるんだよ。
仕事を貰えるのは有難いことだけど、俺はまだ未成年な上に童貞なんですけど。
「ホント色気やべぇよなァRIONって。て、RIONはオマエか。なんか今朝もけだるげだな…まさか昨日も誰かとヤってたとか!?ちくしょーイケメン羨ましい!!」
「全員俺にベタ惚れだから、一人も佐倉先輩に紹介できなくてすんまっせん~」
「チンコ破裂しろ!このヤリチン!」
な、わけねーだろ。
朝早くから部活、学校、放課後は仕事もしくは部活、夜は勉強しないと授業についていけない。女の子と遊ぶ余裕と暇がどこにあるんだっつーの。
モデルの女の子から声を掛けられることはあるけど、肉食系というか、ギラギラしてて正直苦手だ。
小さい頃から周囲に可愛い可愛いと言われまくっていた子達が集まってるんだから、ギラギラするのは当たり前だろうけど。
男はそうでもないんだけどな。
「なあ理音、やっぱモデルのコも食ったことあんの?」
「たりめーでしょー、俺を誰だと思ってんスか」
「俺が大好きなマナミちゃんは食わないで!!お願い!!」
「別に俺が食わなくても、既に誰かに食われてますよ……」
マナミ、業界じゃ有名な枕ビッチだよ。美人だけど俺は全然興味ない。
超人気モデルのRIONが、まさか幼なじみの男に恋慕してるなんて、絶対の絶対に世間に知られるわけにはいかない。
もちろん、本人に知られるわけにもいかないから、俺はヤリチンのフリをしている。エロい企画にもよく呼ばれてるし、まさかRIONが童貞だなんて思う奴はいないだろう。昂平はどう思ってるか、わからないけど。
大体昂平とは、下ネタ自体話したことがない。兄弟みたいに育ったから、俺相手に下ネタを話すのは恥ずかしいんじゃないかと勝手に思っている。俺もだし。
昂平にも俺がヤリチンだと思われてるとしたら、それは正直かなり嫌だけど、この気持ちがバレるよりはマシだと思っていた。
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