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#スイーツ男子のお悩み事は甘くてほろ苦いティラミスの味②

 甘い苺のタルトに紅茶のカップをいい具合に配置して少し斜め横から撮る。少しだけテラスの緑なんかも背景に入れば映えた写真の完成だ。  「なぁ、、まだ??」  『待ってもう一枚!よしOK!』  「暖と食いにくると女子と来てる気分やわ。食うまでに時間がめっちゃかかる」  『ごめんって、、奢るから許して』  「今週3回目やで。ほんまよう飽きへんよな」  正面に座ってブツブツいいながら渋い顔している明希はなんだかんだ言いながらも気がつけばいつも暖の隣にいる。 ほぼ満席状態の店内は女子ばかり、みんなスマホでパシャパシャと撮影してはきっと数分後にはSNSに上がっているはず。  「そうや!この間の共通模試の結果どうやった?」  『えっ、、スイーツ食べてる時にそうゆう話は無しにしようよ』  「あーって事はつまり結果悪かったんやろ?ほんま大丈夫か?俺らこんな事しとってえんかな?」    『違うよ!ほらっ勉強には糖分は必要だからさ。じゃなきゃ暗記だって出来なんだからね』  「上手く逃げたなー」  タルトを3口でペロリと食べて口の中の甘い余韻を楽しむ。いつもより少し値段の高い紅茶はこの季節限定のメニューだ。食べ終わるとすぐに専用のノートに記し始める。  「また書いてるん?」  『うん。味を忘れちゃダメだから』  「マメやなー、それくらい勉強も本気にやってくれたらええんやけどな」  真剣にノートに向かって聞いてるか聞いてないか分からない暖の頬をつねった明希に"もー"といいながらも書く手を止めない。 まずは一旦紙に書いてからSNSに打ち直す。変に几帳面な性格がこんなところで出ているが多くの人が見る、しかも誰が見てるか分からないからこそ慎重になる。  僕にとって今このカフェレビューアカは無くてはならないもの。参考書を開く時間よりSNS開く時間の方が長いのも分かってるけどこればかりは止められない。  『だってフォロワーが300人まであと1人なんだよ』  「はいはい。ほな俺そろそろバイト行くわ。ごちそーさん、また明日な」  ファストフード店で働く明希は週3日はバイトに出勤し予備校も休んだ事がない。合間に僕の勉強を見てくれたり、興味の無いカフェ巡りに付き合ってくれる。こんな地味で取り柄えのない陰キャな僕と仲良くしても明希には何の得もないのに。  綺麗に食べきったお皿とグラスが二個ずつ並ぶテーブルに残った伝票を持ってレジへ。女子高生の真後ろに後ろに並ぶと、何とも言えない顔をされ思わず距離を取った。  〈お会計が2880円です〉  『はい。じゃこれで、、」  5千円札を出すと財布の中はすぐに物寂しくなった。さすがに今週は行き過ぎたなと少し反省したけど期間限定メニューは待ってくれない。 今これだけが僕の精神安定なんだ。

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