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#スイーツ男子のお相手は色彩鮮やかで繊細なマカロンのような彼

  予備校まであと10歩。電信柱の影に隠れて学校入っていく生徒達を見ている。全身黒づくめでフードを深く被りマスクして、いかにも怪しい姿は承知だがどうにか家からここまで問題なく来れたのは奇跡だ。  『いない……よね、、うん大丈夫!よしっ』  「何が大丈夫なん!?」  『わぁぁぁぁぁ!ごめんなさいぃぃ!』  いきなりズンッと目の前に現れた顔に悲鳴のような大声で叫んだ。一気に通行人の視線を集めて目立ってしまった。  「ちょ、びっくりするやん!暖何やねん」  『明希っ、いきなり現れるのやめてよー死ぬかと思ったじゃん』  「そっちこそ何でそんなコソ泥みたいな格好して隠れて見とんの?俺やなかったら通報されてるで」  『だって……誰かに狙われてるかもしれないし』  「は!?何か悪い事でもしたんか!?」  『だから……あの投稿見て、、僕ってバレちゃってたりしてたら』  「んな訳ないやろ!顔も名前も出してへんのに何でバレんねん。ええからはよ入るで」  明希はそう言うとフードをスッと捲って肩を組んで"おはよう"と周りの生徒に言いながら教室へ連れて行った。過剰に心配してしまったけど、とりあえず何事なく日常が送れそうだとホッと胸を撫で下ろした。  「はい始めるぞー!まずはみんなお待ちかねのテストからだ」  浪人生にとって休息の日なんてない。月曜日の朝イチからテストで実力を測られる。授業のない土日にどれだけ復習とプラスα出来たか。 だけど僕は完全にこの土日は動画視聴に捧げていた。家にこもってほぼ全てを見尽くした。それは英語でも現代文でもなくもちろんTiger channelに決まっている。  案の定テストはボロボロできっと次の面談で先生にキツいお灸を据えられるだろうな、、と机に突っ伏した。  「あ〜疲れた。暖!お昼どうする?」  『うーん、節約しなきゃだしコンビニでいっかな』  午前の授業が終わって昼ご飯を買いに外へ出た。さすがに暖にももう警戒心はなくなって学校からすぐのコンビニへ入る。  『ねぇ明希は見た?……相手の配信の動画』  「あー暖に言われて見たけど、あれ以降更新してへんし本人達から特に何も言ってへんしな。このまま黙っとって頃合いみてまたそのうち始めるんとちゃう?」  『……ならいいけど、、何も音沙汰なのがまた逆にこわいなって』  「それより動画内容やで。まさかああゆう内容の動画とはな」  『僕も正直びっくりしたけど……』  「まっ、愛の形は人それぞれやしな」  『えっ!?意外なんだけど!明希がそんな風に言うなんて。てっきり、見てられへんかったわーアウトやわー!とか言うかと』  明希の言い方でモノマネして見せるとおでこをペチッと叩れた。明希はSNSやこの手の配信は俗っぽいと絶対嫌うと思っていたけど。  「何やそれ!全然似てへん。まー…せやかて俺も人前で見せるもんとちゃうと思ってんで。やから配信すんのは理解は出来へん!」  『けど230万人の人が見てるんだよ。みんな関心あるって事じゃない?』  「別にあの配信が終わった所で悲しむ奴おらんやろ。知らんやつが別れようがどうでもええねん、ネットの世界って所詮そんなもんやろ」  その言葉が何だか胸にグサッと刺さった。実際炎上したあの投稿も結局はその時だけの盛り上がりでパッタリとSNSで話題は消えていた。  「暖、買うもん決まったか?」  『うん。このパン、二つでいい』  「あれっ?スイーツは買わんでええんか?投稿せなあかんやろ〜?」  『もう意地悪言わないでよっ!』    しばらくはSNSも忘れて勉強に専念する。甘いモノの誘惑に騙されない。そう誓って食べたクロワッサンは少し塩っぱく感じた。

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