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第5話 魔法学園入学試験

 あの日から10年が経過した。 アリアナとロベルタは、相変わらずラブラブで仲睦まじい。 前世で作者だったアルトは知っていたが、アルトとアリアナには6つ違いの弟が出来る。 容姿は母親のエミリア似で、美しいアクアマリンの瞳をした優しく可愛い弟のエリオット。 前世の小説では、エリオットがフィルナート家を立派に引き継いでいた。 アリアナが破滅しても、フィルナート家が取り潰しにならかったのは、エリオットの人柄と領主としての手腕の片鱗が見て取れたからだ。 実際、フィルナート家が治める領地は、非常に豊かな暮らしをしていた。 それは父親のアルファスの手腕が見事で、決して贅を尽くす生活をせず、領民達と共に豊かに暮らせる政策をしていたからだ。 幼い頃から、エリオットはそんなアルファスを尊敬し敬愛していた。 見た目は母親似ではあるが、性格も手腕もアルファスの遺伝子を引き継いだのはエリオットだった。 だからアルトは生き延びてしまったけれど、エリオットに公爵位を引き継がせるつもりでいた。 それは幾度となく父親のアルファスに話しており、自分は父親の領地の一つ。 小さな村を頂いて、アリアナとエリオットの行く末を見守ると決めていた。 両親は、そんなアルトを欲の無い優し過ぎる子と心配していた。 そしてこの国で15歳になると、王立の魔法学園に貴族は通うことになる。 貴族の人は、大なり小なり魔法の加護を受けて育つ。 アリアナは3歳から火の魔法を操り、ロベルタも5歳になると風の魔法を操っていた。 弟のエリオットでさえ、4歳になると水の魔法を使えるようになっている。 しかし、アルトだけが何の魔力も持っていない。 何処かの有名な悪役令嬢のように、せめて土ボコ位でも良いから魔力があれば良いのに……と思っていた。 この国、オルフェルト王国は魔力の無い者に、爵位は与えられ無い。 言わば、魔力の強さが爵位を決めていると言っても過言では無いのだ。 火、水、風、土の魔力を持つ貴族が、自分の魔力を駆使して何の力も持たない平民に助力する世界。 本来なら死んでいるアルトに、魔力など備わる筈が無い。 そうなると、やはりエリオットが爵位を継ぐ事になるのは間違いない。 だからアルトは早いうちから、貴族にはなれないけど領地を治める領主としての勉強をしていた。 おそらく魔法学園にもいけないだろうと、家庭教師を着けてもらう段取りまでしていた。 そしてその年に15歳になる国民は、王立魔法学園への入学試験を受けるべく、教会へと足を運ぶのだ。 多分、平民出身のこの物語のヒロイン。 マリアンヌも来ている筈だと、アルトは試験の列に目を向けた。 貴族と平民では、試験を受ける場所が違う。 貴族はほとんど、早いうちに魔法を使って生活をしているので、自分の魔力の属性を知っている。 後は能力の程度や実力。どのくらい扱えているのかを審査するだけなので、平民のように魔力を測る泉に行く必要が無い。 しかしアルトは異例で、泉に魔力の有無を測って貰わなければならなかった。 その為、平民より先に来て1番にその審査を受ける事になっていたのだ。 教会の聖なる泉に向かい、教会の神官達と挨拶を交わして泉に足を入れる。 アルトは (どうせ何も起こらないから、形式の為に試験を受けるなんて面倒臭い) と考えていた。 泉に入る前に、身を聖水で清めて神官と同じ白い教会の衣服を身に付けてから入るのだ。 アルトは身を清め、そっと足を泉に入れた。 その瞬間、泉が黄金に輝き出したのだ。

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