113 / 113
14-11
「達樹さんって三男? 一番年が近いお兄さん?」
「そう。おれの四つ上の兄で、今は結婚して都内に住んでる」
「へー、面白そうな人だな。俺も会ってみたい」
「じゃあ、連絡しとく。達樹とは都内で会うことになるかも」
「わかった。祐樹のにーちゃんか……」
何を考えたのか、孝弘はにまにまと笑っている。
「やっぱここは、よくも弟に手を出したなとか殴られるパターン?」
「んな訳ないでしょ」
一体どんな兄を想像しているんだか。殴り合いのケンカも日常だったと話したせいか?
「あ、実家は親がいるんだろ? 会っても大丈夫?」
「平気だよ。でもカミングアウトしてるのは達樹にだけだから、そのつもりで来てくれる?」
「もちろん。同僚ってことでいいんだよな?」
「うん。ごめんね、本当のこと言ったら、両親はびっくりするだろうから」
「当たり前だろ。謝らなくていいし、うかつに言えることじゃないし、そんなの急がなくていいよ」
急がなくていいよってことは、いつかカミングアウトする気があるってこと? 予告というか仮というか、もうプロポーズの言葉はもらっているし、そういうことだよな。
「うわー、祐樹の両親か。すげー楽しみ」
孝弘は特に気負ったふうもなく、無邪気に喜んでいる。
もしためらうそぶりを見せたら、いつも通り孝弘には都内のウィークリーマンションか彼の実家で過ごしてもらって、東京近郊デートをしようと思っていたのだが、孝弘は本当に楽しげに屈託なく笑った。
「あ、やべ。もう出なきゃ」
いつの間にか家を出る時間になっていた。
「これ、ありがと。ホントに嬉しかった」
慌ただしく触れるだけのキスをして、孝弘が先に立ち上がる。
一緒には出勤しない。孝弘が出てから洗い物をして、だいたい十分くらいあとに家を出る。
そこまで心配する必要はないのかもしれないが、二人で話し合ってそうしていた。
どこか弾むような背中を見送って、祐樹はほっと肩から力を抜いた。達樹に会うことも両親に会うことも、孝弘はまったく躊躇しなかった。
すげー楽しみ。そう言ってくれた。
それがとても嬉しい。
コーヒーを飲み終えて、祐樹は洗い物をしようと立ち上がる。
完
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご感想などお待ちしておりますm(__)m
ちょっと宣伝させて下さい。
新刊、配信開始しました!
『誘わせ上司は目が離せない』
https//www.amazon.co.jp/dp/B0BNXMQ5SY
こちらは10月までSweetMIX様から販売されていた『上司に萌えるアンソロジー』に載せた短編の改稿版です。
誘い受けビッチの水野と転職してきた部下、髙城の駆け引きを楽しんでください(^^)!
アンリミ会員は無料で読めます。
会員じゃない方は、12月中は感謝価格100円なので、この機会にぜひご覧下さい!
誘い受けビッチ好きに届け~w
ともだちにシェアしよう!