60 / 398
カオルは何処に(1)
「カオルと連絡が取れない」
リハから数日後…
カイの店の、カイの営業中に、
シルクがやってきて、言った。
「あーそういえば…」
カイは自分のスマホを取り出してみた。
「グループLINEも、サエの音源の先の、既読の数が足りないな…」
「サエも知らないって」
「そうか…」
「家にも行ってみたんだけど…何も応答がなかった」
「まだ具合悪くて寝てるとかじゃないのか?」
「…それならいいんだけど…」
先日の僕の様相を見て、
シルクは確信していた。
体調の不良なんかじゃない。
そうでない何かが、
間違いなく僕の身に起こったんだろうと。
カイが差し出したハイボールを飲みながら…
シルクは煙草に火をつけた。
そしてまた、続けた。
「…死んでたらどうしよう」
「そーれは考え過ぎなんじゃないの?」
「あいつの家族の連絡先なんて、知らないよね」
「うーん、全然分かんないな…」
「勝手に侵入するわけにもな…家族じゃないと、鍵開けてもらえないだろうし」
カイも煙草を咥えながら言った。
「バイト先は?」
「あーそれも聞いたことないんだよね…」
「まあ、もう2〜3日、様子見てみよう…」
家族もバイト先も分からない…
その時の彼らには、
どうすることもできなかった…
しかし、それから1週間以上経っても…
状況は変わらなかった。
その日、リハを予定していた3人は、
カイの店に集まっていた。
「絶対おかしいって」
「うーん…そうだな」
尋常でない事態であることは明白だった。
「いやでも、死んでたらさすがに騒ぎになるだろ?」
「…てことは、やっぱり部屋には居ないって事か」
サエゾウは、スマホのSNSを開いて、
指でスクロールさせながら言った。
「前のバンドのメンバーとかにあたってみる?カオルの友だちから見つけられると思う…」
「そうだな…」
「ダメ元で、ハルトとショウヤにも聞いてみよう」
そんな訳で…
ようなくショウヤの所にも、連絡がいった。
カオルが居なくなった。
何か心当たりない?
(えっ…)
ショウヤはそれを見て、驚いた。
すぐに返信した。
いつからですか?
先々週のリハのあと
(…)
今、どこですか?
店。リハ中。やってないけど
確信は無かったが…
それはとにかく、彼らに伝えなければならない。
そう思ったショウヤは、
急いでカイの店に向かった。
10分も経たないうちに、
ショウヤが店に入ってきた。
「どういう事なんですか?」
「おーショウヤ…」
「いや、実はね…」
彼らはショウヤに、前回のリハでの僕の様子と、
それからプッツリ…
僕と連絡が取れなくなった事を説明した。
「…そうなんですね…」
そしてショウヤは、話し始めた。
「実は…どうやらカオルさん、シキさんと接触したみたいなんです」
「なんだって?!」
「僕の知り合いが、たまたま居合わせたらしく、僕に教えてくれたんです」
3人は、ショウヤに詰め寄った。
ショウヤは続けた。
「シキさんのLIVEに、カオルさんが現れて…その後2人でどっか行ってしまったらしいんですよね…」
「それ、いつの話?」
「ちょうど、そのリハの日に僕が聞いたから…それよりちょっと前だと思います」
「…」
3人は、顔を見合わせた。
「…確信は、ないです…でも…」
ショウヤは、とても真剣な表情で言った。
「あのシキさんなら…カオルさんに、何か良からぬ事をしたとしても、不思議じゃない…ですよね」
「…」
確信はない。
…でも、そう考えると、辻褄が合ってしまう。
シルクは思った。
あいつのことだ。
万一シキに犯られてたりでもしてたら…
俺らを裏切ったっていう罪悪感に、
囚われてしまったとしてもおかしくない。
しかも、あんな状態で、
もし、シキに捕まっているとしたら…
逃げ出す気力も…おそらく無いだろう。
「シキに連絡してみるか…」
「いや、もしあいつが郁を監禁してるとしたら、下手に連絡するのは逆効果だろう…」
「そーだね、しらばっくれるだろうね」
「…」
しばらくそれぞれが考えを巡らせた。
そして…カイが言った。
「…襲撃…してみるか?」
「…うん、それが手っ取り早いな」
「俺、シキんち知ってる」
「行きましょう!」
皆が同意した。
ほどなくハルトからもLINEが入った。
カオルどーしたの?
「…ハルトにも応戦してもらうか」
それを見たカイが言った。
「そうだね、こっちの人数が多い方がいい」
カイは早速、ハルトに返信した。
今から店これる?
詳細は後で話す。
了解ー
「ハルトが来たら出掛けよう」
「作戦考えなきゃね」
「カオル奪還大作戦ー」
「カオルさん…待っててくださいね!」
なんかちょっと楽しそうになってきてますけど…
ちゃんと助けてもらえるんですかねー
ともだちにシェアしよう!