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Dead Ending(1)

その日のリハは、それでお開きとなった。 課題だった2曲は、良い感じに仕上がったし。 お約束の…ご本人契りも無事済んだ事だし… 「たまには飲みに行くか」 カイが言い出した。 「いいねー行こ行こ」 サエゾウも乗り気だった。 「俺もたまには外で飲みたい」 「そうですねー」 というわけで、僕らはカイの店を出た。 そして、すぐ近くの居酒屋に入った。 「ハイボール」 「あ、俺もー」 「僕も…」 「ハイボール4つで…」 結局みんなハイボールなんだな… どこで飲んでも一緒じゃん なんて、ちょっと思いながらも 「何食べるー?」 「刺し盛りいく?」 「唐揚げー」 「串盛り」 やっぱ居酒屋メニューの数々は、 宅飲みにはない魅力に溢れているのだー 「乾杯ー」 「おつかれー」 「にゃー」 大好きな人達と一緒に、 こうしてワイワイ飲めるっていう… そんな幸せも、僕は噛み締めていた。 「そーいえば、こないだショウヤが、PV作りたいって言ってたなー」 カイが言った。 「何、あいつ…動画にも手出してんの?」 「口実作ってカオルとヤリたいだけなんじゃないの」 「まーそれもあるかもしらんが、でも…やってみてもいいと思うんだよねー」 「うん…めっちゃ楽しそう」 「でも、そしたら…ちゃんと音源もレコーディングしないといかんね」 「あー結構めんどくさいかも…」 なるほど…PVってことは、 そのバックに流す、ちゃんとした音源が必要なんだな LIVE動画みたいに、 音も映像も一緒にってわけにはいかないから… 「…大変そうですけど…やりたいですね…」 「…」 うっかり言ってしまった。 みんな黙ってしまった… …と、3人様は、パァっと目を輝かせた。 「カオルがやるならやるー」 「うん、俺も頑張る」 「どの曲がいいかな」 ええー?何であなた達は、 そんなに僕のひと言に振り回されるんですか… 「とりあえず次のLIVEは、それを見越して選曲しての…ガッツリ練習しとくか」 「そうだねーショウヤの意見も聞かないといかんし」 「…俺の曲もやってみていい?」 シルクがポソっと言った。 「えーなに…シルクも隠し持ってたのー?」 「書き下ろしじゃないんだけどね…」 「聴きたいー」 「うん…送って」 シルクは、僕の方を見て言った。 「歌詞…つけてくれる?」 「…」 「…雨の曲…じゃあないんだけどさ…」 「…そうなの」 僕は少し残念そうに答えた。 「なにー雨の曲ってー…イミシンー」 そのやり取りを見て、 サエゾウが冷やかすように言った。 「宵待ちには負けるわ…」 「そーだよね、アレめっちゃ名曲だよねー」 「自分で言うな」 「あはははっ…」 そっか… シルクの曲…ちょっと楽しみだなー 僕はこっそり…そう思った。 「いっそ今から聞きに行っちゃう?」 「せっかく飲みに来たのに?」 「…別にいいけど」 そこそこ居酒屋メニューも堪能したことだし 二次会がてら丁度良いよねってことになり… 結局僕らはまた…いつものように、酒を買い込んで、シルク宅にお邪魔する流れとなった。 「乾杯ー」 「本日2度めー」 「にゃー」 そしてまた、ハイボール缶で乾杯だった。 「酔っ払う前に聞きたい」 「もう酔っ払ってるけどなー」 「…だいぶ前に作って、お蔵入りになってた曲なんだけどね…」 シルクは早速PCを操作した。 「もしかしてカオルなら、良いように仕上げてくれるかもしれないと思って…」 「…」 そして、スピーカーから曲が流れてきた。 それは、ミディアムテンポの… 割とシンプルな曲だった。 シンプルな故に… どうにでもメロディーが乗りそうな感じがした。 「…」 それは…スッと聞こえてきた。 「何か、書くものありますか?」 シルクは白い紙と、ボールペンを僕に渡した。 「…合ってるかな…」 呟きながら僕は、 聞こえたままに歌詞をメモしていった。 「…すげーな」 「…そんな風に出来ちゃうもんなんだ…」 「…」 数回流してもらううちに、 細かい歌い回し部分を調整して… その曲の歌詞とメロディーは、 あっという間に出来上がってしまった。 「…ちょっとまた可愛そうな感じになっちゃった…」 「もう出来たの?!」 「え、歌ってー」 「…」 シルクが改めて、曲を最初から流した。 僕は、それに合わせて歌った。 タイトルは、バッドエンド… いや、デッドエンド… いっそ、デッドエンディングだな。 ありえない単語だけど。

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