92 / 118
契約 第十三話
それから車で大学まで移動した
アルファが高級車に乗るのはわかるんだけど、オメガが高級車から出てきたら騒ぎになるかもしれないから、大学の手前で降ろしてもらった
「いいんですか?ここで」と高瀬さんが言う
「うん。ありがとうございました」とお礼を言って、出ようとした瞬間腕を掴まれた
パッと掴まれた方を振り返る
案の定、掴んだのは怜央さんなわけで、「なんですか?怜央さん」と言う
「いや、なんでもない。頑張れよ」と言われた
が、頑張れよ…。だって
染みる。心に染みるよ
僕が内心喜んでいるのを隠しつつ「ありがとうございます!」と最高の笑顔で言った
怜央の「ウグッ」という声はゆきの耳に届くことはなかった
これなら、講義も頑張れる!
そして、怜央さんと高瀬さんのお陰で5分前には講義室に入室できた
その数分後ぐらいに悠羽が来た
僕の元にやってきて「おはよぉー」と眠たそうに言う
僕も「おはよう」と返す
悠羽も座って講義が始まった。
悠羽はうとうとしながら必死に耐えていたが寝てしまった
僕はそのまま授業を受ける
そして、講義が終わり、次の講義、また次の講義と進んでいった
最終講義も終わり、やっと帰り
「ん~疲れた!」
「そうだね。ファ~」とまた欠伸をする
悠羽はどんだけ寝るんだよ
あっ、そういえば高瀬さんが待ってるんだった
待たせちゃいけない!そう思い急いで準備をして、悠羽に「先に帰るね!バイバイ!」と告げて講義室を出た
コケないように急いで早歩きをしていると、門の前に人だかりがある
ん?なんだろ…
急いで門に近づく
何故か嫌な予感がする。嫌な予感しかしない…。
人混みをかき分けて、やっと抜け出せた
僕だけ目の前に出ちゃって、みんなワァーワァー言ってたのが一気に静まり返る
誰あの子みたいな感じ
もう一度戻ろうかな
そう思い、後ろに立ち去ろうとした瞬間。「ゆき」と聞き覚えのある声がした
その聞き覚えのある声は怜央さんだった
ともだちにシェアしよう!