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前魔王城 コウジンvsリンネル 4

「リン!勝負だっ!!」 十戦ともそのセリフから始まったな。ブレないコウにちょっと感心する。 よしっ!俺も気合いを入れた。 「ネル、完全憑依!」 「了解!」 ユキヒョウの血が滾る。絶対に勝ってやる! 最終戦はあまり考え込まず、本能のまま戦う事にした。身体強化をかけ、爪を出してコウジンに飛びかかるも、剣で防がれる。すかさず蹴りも繰り出すが、なかなか入らない。しばらく攻防が続く。 爪だけでは埒が明かないので氷の剣を作って再び打ち合う。その剣が折れたところで一度後ろに飛び退き、再度飛びかかる際に氷の短剣を数本なげた。剣ですべて弾くコウジン。 僕はお構いなしにその胸元に飛び込んで、顎に向かってアッパーを打ち込む。 のけぞりギリギリでかわすコウジン。体勢を立て直す前に足元を凍らせて動けなくする。そのまま後ろに倒れると思いきや、コウジンは蔦を出して僕に巻き付けた。一緒に倒れ込む俺。ここに来て植物魔法かよっ?! ヤバい、ヘッドロックされた。顎を引いて気道を確保し、肘に体重を乗せなんとか腕を外そうともがくも、僕が足元を凍らせてるからコウジンの体が動かないんだよ!! しかも蔦が俺の体を拘束する。前に練習した氷の刃で切ろうとこころみるが、頭が酸素不足で集中出来ない。お互いに拘束されてるし、このまま一分経てば引き分けか?・・・けど・・・肘で首を更に絞められ・・僕の意識は落ちた。  気がつくと心配そうに僕の顔を覗き込むみんなの顔があった。 「リン!!大丈夫か?前魔王が回復魔法 をかけてくださったけど・・・」 コウ?・・・僕ってもしかしてコウに抱きかかえられてるっ??! 一緒で飛び起きた。 落ちてたのはほんの数分らしい。そうか、僕負けたんだな。みんなにあいさつとお礼を言わなきゃ。 「前魔王様、回復魔法ありがとうごさまいました。それと、あれだけお世話になったのに負けてしまいました・・・」 「んなことはどうでもいいわ。いい試合だったな。楽しませてくれてありがとよ。」 「そうだよ!リンくんもコウくんもすごかったよ。お疲れ様!」 「あぁ、なかなかの娯楽だった。」 「アスラ様も魔王様もありがとうございました。」 「ねぇ、せっかくだから時間がある人は残ってお疲れ様パーティーしようよ。俺、料理長になんか出せるか聞いて来る。いいよね?ジュンさん。」 「おう!もちろんだ。天気も良いし、このままここで飲もうぜ!」 レンさんの提案で、このままここでお疲れ様パーティーに突入するらしい。みんな残ってるけど、仕事大丈夫なの?特に魔王様とシグ様!!? パーティー真っ只中。みんなビールやワインを飲みまくっている。 あっ、カグヤ様にもあいさつしとかなきゃな。 「カグヤ様、この度はコウがお世話になりました。」 「あらぁ!リン、どう?コウはいい男になったでしょ?」 「はい。正直ここまで強くなるとは思ってませんでした。」 「で、どうするの?付き合うの?」 「うっ!い、いや、まだコウに何も言われてませんし・・・けど、約束なのでちゃんと考えますよ。」 「ならいいわ。コウ、めちゃくちゃがんばったのよ?『絶対リンと恋人になるんだっ!』って。あたしとココの本気モードにも怯まなかったし。」 そ、それはかなりすごいんじゃないかな?だってカグヤコ様になると死ぬほどの威圧感で超怖いんだよ??動物の本能で尻尾を丸めたくなる感じ。 「そうよねぇ。あたしもジンがあそこまで耐えると思わなかったわ。ジンもたいがいネルに惚れてるわね。」 ココ様からの情報にネルが固まってる。うん、分かる。どうしたらいいか分からないよね?! 「リンっ!!」 あっ、元凶が来た。お前あっちで肉食いまくってたんじゃないのかよ?? 「お、オレ、約束通り勝ち越したよっ?!オレと付き合ってくれる?」 今言うんだ。こんな公衆の面前で?!って今更だな。うん、本当にすげぇ今更だったわ。 「・・・すぐには無理。けど前向きに考えるよ。」 「ほんとに?!今まで即否定だったのに・・・やっぱり強くなったから?嬉しい!オレもっともっとがんばる!!」 ・・・ちょっとこいつが可愛く見えて来た。今、憑依してたら尻尾振りまくってんだろうな。 「おっし!お前らがんばったから飲め!」 前魔王様がビールのジョッキを持って来た。もう十五歳になったから酒を飲んでもいいんだけど、僕はまだそこまで酒好きじゃないんだよな。けど流石にこれは断れない。 「はい。いただきます。」 「かんぱ~い!!」 カグヤ様のかけ声でみんなグラスをかかげ、各々酒を飲み干す。ん、苦いけど美味いな。喉乾いてたし、グビグビいける・・・ ・・・僕がはっきりと覚えてるのはここまでだ。

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