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最南の島 エナ5
人型のエリン様??!何で普通にお肉食べてんの??
「あっ!良かったみんな居た。ここで歓迎会してると思ったのに誰もいないからどうしようかと思ったよ。けどご飯はあったから食べてた。」
・・・何というかすごく自由だな。
「エリン、お帰りなさい。」
「ローゼ!今日、ワタシが診療所をやったんだよ!色んな魔族が来て面白かった。」
「えっ?エリン様、早速診療所を開けてくださったんですか?今日から五日間は休診日って張り紙しておいたのに。僕と一緒に一日やってみてからお願いしようと思ってたんですが。」
「エナ!アキが今日休みだって言うから一緒に開けたんだ。ワタシ、魔族の病気とかよく分からないから助かった。治し過ぎだってアキに言われたけど、患者さんは喜んでたよ?」
うわぁ・・・どんだけ上位の魔法をかけたんだろう。考えるのがちょっと怖いな。けど、父さんと仲良くしてくれてるみたいで良かった。
「ありがとうございます。五日後には僕も出勤しますので、その時に分からない事など聞いてくださいね。それまでは休みでもかまいませんよ。」
「アキが居るならやるよ?」
「エリン様、俺、明日も休みなので付き合います!」
・・・父さんの顔がデレてる。まぁ、今のところは順調そうで良かった。
ボビー様が近くに来て僕に言う。
「エナちゃん、父君がエリンに一目惚れしたって本当だったんだな。しかもあの男嫌いのエリンがずいぶん懐いているじゃないか!」
「え、えぇ。僕もびっくりしました。」
「最初はオレもあのエリン相手に大丈夫かと心配したけど、父君は面倒見がいいタイプだろ?エリンはあのまんま子どもみたいなヤツだから、案外上手くいくかもな?」
ティムの意見に僕もうなずく。そうあって欲しいよね。
父さんはそのままエリン様とローゼ様、ボビー様と話し始めたので、僕とティムはその場を離れ、コウ兄とリン兄の所に行く。
二人はジャックくんと話していた。ベズくんとレニちゃんも近くにいる。
「エナちゃんはコウよりリンの弟ってかんじだよね。二人とも美人だし可愛い。」
ジャックくんがリン兄に言う。
「それはどうも。」
サラッと流すリン兄とイラついた顔のコウ兄。
レニちゃんが「ジンちゃんに触っていい?」って聞いてきて、コウ兄がそれに答えている間に事件?は起きた。
「どんな酒が好みかな?このカクテルは甘くて美味しいよ?」
「あっ、本当だ。飲みやすい。喉乾いてたんです。ありがとうございます。」
ゴクゴク飲み干すリン兄・・・ちょっと待って?お酒に弱いはずだよね??
それに気付いたコウ兄が慌てて止めに入るが、グラスは空いていた。
「・・・リン、帰るぞ。エナ、せっかくの歓迎会なのに申し訳ないが、数分後のリンを誰にも見せたくないから帰るよ。」
そう言ってコウ兄はキョトンとしてるリン兄を抱き上げ、父さんの所まで行って言う。
「親父、リンが酒を一気飲みしたから連れて帰る。悪いが一人で帰って来てくれ。あっ、明日休みならエリン様とこっちに泊まらせてもらったらどうだ?」
「はぁ?お前何言ってんのっ?!」
コウ兄は挙動不審な父さんを残し、ボビー様たちにもあいさつをしている。そして、我に帰り「まだ帰りたくない」と暴れるリン兄をしっかりと抱きしめてワープポイントのある部屋へと走って行った・・・うん、何かごめんね。コウ兄にしてみたら、いきなり連れて来られてドラゴン王族に囲まれ、その王族がリン兄にお酒を飲ませたんだもんね。
心の中でコウ兄に謝っていると、こっちではティムがジャックくんに説教をしていた。
「いきなり飲ませるなよ。酒に弱い魔族もいるんだ。ドラゴンみたいに全員ザルなわけじゃない。それにリンとコウは夫婦だぞ?あからさまにリンに色目を使うな。」
「え~だってリンも好みだったし?ああいうクールビューティーを組み伏せて泣かせたいよなぁ!」
「・・・だからお前にエナを会わせたくなかったんだ。エナ、こいつと二人では会うなよ。ジャックは本能に忠実すぎるんだ。突然襲いかかったりしかねんヤツだから充分に注意してくれ。」
「心外だなぁ。従兄弟の番にまでは手を出さないよ。その兄弟までには約束出来ないけど。リンはかなり好みだったんだよね~」
やめてください。コウ兄がマジギレしちゃう!
ジャックくん怖い・・・僕も近づかないようにしよう・・・
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